旅行3 王女とボクっ娘王女と……

「さて、着いたな」
「ここが港街フォルセカンか!」
「確かに、海の匂いがするね」

現在10時。
カリンと合流してから数日後、私達は目的地である港街、フォルセカンの門へと辿り着いた。まだ街の外だというのに、潮の香りが風に乗ってここまで漂ってきていた。

「いよっすおっちゃん! ブランカさんの妹一行連れてきたで!」
「ああ、あんたか。確かにリリムの女の子だな」
「初めまして! アメリだよ!」
「初めまして。連れてきたら通すように聞いてるし、軽く荷物検査受けたら通っていいぞ」
「おおきに!」

大きな街なだけあって審査も厳重らしく、入り口の門の前では小さな列ができていた……が、私達はその列を無視し、門の横に設置された小窓の前へと向かった。
どうやらあらかじめ話を通じておいたみたいで、カリンがそこに居た警備員さんに声を掛け、アメリちゃんの姿を確認し、ちょっと手荷物検査を受けただけであっさり通り抜ける事ができた。

「おお、賑わってるね!」
「港なだけあって海鮮売り場が多いな」
「お魚いっぱーい!」

門をくぐると、正面には奥へと続く大きな道と、その両端にズラッと並ぶ商店が広がっていた。大変賑わっており、あちこちから笑い声や怒号が飛んできて、少し離れた門の前ですらがやがやとしていた。

「ま、買い物は後にして、ブランカさんのところに行くで」
「うん。アメリ、ブランカお姉ちゃんに会うの楽しみ!」

食材も買っておきたいし、ちょっと覗いていきたい気持ちもあるが、カリンの言う通りブランカなるアメリちゃんのお姉さんと会う約束があるし、買い物は後にした方が良いだろう。

「ブランカさんってどういう人なの?」
「それは会ってからのお楽しみって事で。まあでも、今までのリリムとはちと違う感じやな」
「そうは言っても今までも結構個性豊かだった気がするんだけど……」
「まあせやけど、ブランカさんはまたその中でもちと違う感じや」
「どんなお姉ちゃんだろ……楽しみだなぁ!」

という事で、私達は商店街から外れ、カリンの案内で居住区の方へと足を進めた。
私達より先に会ってるカリンに、そのブランカさんはどんなリリムなのかを聞いてみたが、お楽しみにとの事。たしかに、今から会いに行くのだから聞かなくても良いだろう。

「ほら着いたで。ここがブランカさんの家や」
「えっここ? 本当に?」
「ここや。嘘ついてもしゃあないやろ」

街の景色を見ながら歩く事20分、目的地であるブランカさんの家へと着いたようだ。その家はいわば普通の民家、いたってシンプルな家だった。
今まで会ったリリムの中で、その住処に訪れた時は大体大きな屋敷とかお城とかに住んでいたので、まさか普通の民家が出てくるとは思っていなかった。思わず合っているのか聞いてしまったほどだ。

「ほなノックするで。おーいブランカさん、アメリちゃん達連れてきたでー!」

兎に角、ここがブランカさんの家との事なので、カリンは大きく戸を叩きながらそう叫んで中のブランカさんを呼び出した。

「はいはい。やあカリンさん。待ってたよ」

家の中から少し低めの女性の声が聞こえてきた。少し低めとはいえ、その声質はアメリちゃんを含め今まで出会ったリリム達と似ているので、おそらく彼女がブランカさんなのだろう。そんなことを考えているうちに扉が開き、その先に居たのは……

「初めまして。カリンさんから話を聞いているかと思うけど、ボクはブランカ。君がボクの妹だね」
「うん! 初めましてブランカお姉ちゃん! アメリだよ!」
「そして、貴女方がアメリと一緒に旅をしてくれている人達だね」
「はい、俺はユウロです。で、こっちがサマリ」
「初めまして、サマリです」
「初めまして。どうぞよろしく」

白い髪と透き通る肌、それに紅く光る瞳を持ち、白く大きな翼としなる尻尾、対照的に漆黒の捻じ曲がった角を生やした、少し小柄な女性がいた。
女性、とはいうものの、着ているのは男物のTシャツで、穿いているのもズボンだ。一人称も僕だし、短髪だし、何よりも胸に膨らみがない。私よりもない。驚くほど平坦だ。それでも女性だとわかったのは、相手がリリムだとわかったからだ。今まで出会ったリリムはもれなく巨乳だったのに、ブランカさんは私未満の貧乳だった。

「……あんた、失礼な事考えてへんよな?」
「ふぇ!? ま、まっさかー」
「視線が胸に行っとったで」
「えっ!? いやーそれは無意識だよ」

ジーっとブランカさんの胸元を見ていたらぼそっとカリンにツッコまれてしまった。

「はは、確かにボクは他の姉妹と比べたら胸の膨らみはないね」
「え、あ、その……すみません……」
「いやいや、全然構わないよ。知っている中では大体大きかったし、もの珍しいのもわかるからね」

どうやら聞こえていたみたいで
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