旅行1 幼き王女との新たなる旅立ち

「はいおまたせ。今日の夜ご飯はジパングで教わったかき揚げ丼だよ!」
「わー美味しそー!」
「いい匂いだ……」

現在20時半。
今日は昼頃に色々あったのと、ちょっと慣れない料理で時間が掛かったので、今から遅めの夜ご飯だ。
今日の夜ご飯は小エビやシラス、貝柱などの魚介をネギやニンジン、玉ねぎと一緒に食用油でカラッと揚げたジパング料理、天ぷらの一種であるかき揚げだ。それをどんぶりに盛ったご飯の上に置き、特製の天つゆを掛けて出した。
作ったのは勿論私だが、材料のカットはアメリちゃんが率先してやってくれた。かなり上達したもので、指を切るなどの怪我もしていないし、切り方も綺麗である。

「それじゃあ……」
「いただきます!」

何時もの様にジパング式食前の祈りを済ませ、かき揚げに齧り付く。噛んだ瞬間、サクッとした触感が口の中で弾け、魚介の旨味が広がる。絡んだ天つゆの香りが鼻腔から抜け、更なる食欲を誘う。
自分で言うのも何だが、かなり美味しくできあがっていた。とはいえ、本場で食べた時はもう少し中はふわっとしていた気がするので、満足とまでは言えない。精進せねば。

「おいしー!」
「うん、美味い! 流石サマリだな!」
「えへへ、ありがとう!」

それでも、好きな人達から美味しいと言われたら素直に嬉しい。ユウロは一口一口味わうように食べ、美味いとストレートの感想をくれた。その笑顔と言葉に、思わずきゅんとしてしまう。
アメリちゃんは美味しいと叫びながらも、ユウロとは逆にどんぶりを傾けてかっ込んでいた。アメリちゃんのはつゆだく仕様なので、さらさらと掻っ込めるのだ。そんな食べ方をしているからか、茶色に染まった白米が頬に付いていた。

「ふう……お腹いっぱい♪」
「ごちそうさまっと。それじゃあ皿は洗っておくからシンクまで運んでくれ」
「はーい!」

夜ご飯を綺麗に平らげ、お腹は満足だ。何時もならば、この後は私とアメリちゃんがお風呂に入り、その間にユウロが皿洗いを済ませる。
そう、何時もならば、だ。

「さてと、お腹もいっぱいになった事だし……アメリちゃん?」
「う……」

しかし、今日は事情が違った。
とりあえず食器をどかした後、私は少し声のトーンを落としてアメリちゃんを呼び、正面に座らせた。
アメリちゃんも私の声で察したのか、とても気まずそうにおどおどしながらも大人しく椅子に座る。私の横にユウロも座り直したので、話を……いや、お説教を始める事にした。

「それじゃあ、お昼は色々あって有耶無耶になっちゃったから改めて聞くけど……アメリちゃんはなんで私達を置いて先に行っちゃったのかな?」
「えーっと……その……二人の邪魔しちゃ駄目だからと思って……ね?」
「はぁぁ……」

その内容は、前の街で宿の別の部屋に泊まっていた私達を置き去りにして、たった一人で先に行ってしまった件についてだ。理由は私とユウロが恋仲になったからというのは先程
#25620;い摘んで聞いているし、それがアメリちゃんの親切心というか優しさの結果だという事はわかっている。
だが、そのせいで教団の兵士に襲われ、私達が追い付けたから助かったもののその命を散らす寸前にまで陥っていたのだ。流石にはいそうですかで終わらせる事はできない。

「さっきも言ったけど、アメリちゃんの事を邪魔だなんて思うわけないからね。それとも、私がそんな事思ってそうだって考えてたの?」
「そ、そんな事はないよ! でも、ラブラブな二人を邪魔しちゃ悪いかなって……」
「それを言ったら、勝手に居なくなって心配させる事でラブラブな空気を邪魔しちゃってるからね?」
「そういう言い方もどうかと思うが……まあ、余計な気を使い黙って行くんじゃなくて、アメリちゃんの考えをきちんと俺たちに伝えてほしかったかな。一緒に旅をしてきた仲間なんだし、相談くらいしてほしかった」
「うぅ……ごめんなさい……」

事が事だけに、今回は怒っている事を隠さずアメリちゃんに強い口調で説教を行う。アメリちゃんも説教を受け、泣きこそはしないが力なく項垂れて謝罪の言葉を呟いている。

「一応言っておくけど、私達の事をアメリちゃんなりに考えてくれていた事自体は嬉しいよ。でも、心配させるのは駄目だからね」
「そうだ。俺にとってサマリは確かに大切な存在だけど、それはアメリちゃんもだ。勝手に居なくなるのは悲しいし心配になる。これからは止めてくれよ?」
「うん……わかった」

さらっとユウロが嬉しい事を言ってくれたが、それは一先ず置いといて……そう、私達にとってアメリちゃんはとても大切な、妹のような存在だ。だからこそ、これからも黙っていなくなるような事はやめて欲しいのだ。

「まあ、わかっているならよし。この話はおしまい!」
「そうだね。じゃあアメリちゃん、お風呂に行こうか
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