「うーん…気持ちの良い朝だ…」
現在10時。
もう朝とは言えない時間だけど私はついさっき起きたばかりだから朝だ。
「青い空、白い雲、輝く太陽…うん、良い旅立ち日和だ」
今日から私は17歳になった。
だからというわけではないけど、今日の昼過ぎから私は家を出て旅にでる。
小さい頃から世界中を旅してみたいと思っていたから旅立つ。だから旅の目的は特に無い。しいて言うならいろんな場所を見てまわるのが目的かな。
もちろん両親の許しは得ている。
両親は私が旅の途中で魔物に襲われないか心配はしているが、魔物は何故か男を襲う確率のほうが高く、女は無視する事も多々あるらしい。
私は女だから男よりは魔物に対してはずっと安全だろうということで両親は私が旅にでる事を許してくれた。
今私は旅にでる前の最後の散歩をしている。一度旅にでたら帰ってくるのは何年後かわからないし、もしかしたら帰らない可能性だってある。
だから自分の家の周りの景色を覚えておこうと思って、私は出発する予定の道がある方向とは逆にある小さな森の中を散歩していた。
「旅先にはここより凄い森もあるかな…」
苔がそこらに生えている少し湿った地面、そよ風に吹かれて葉が擦れ合い奏でる音楽、隙間から降り注ぐ綺麗な木漏れ日、自分の背丈ほど高く成長している青々とした草…
私はこれら森の様子を思い出として記憶しているのと同時に、まだ見ぬ旅先の景色を思い浮かべていた。
…やっぱり旅が楽しみだ。今すぐにでも出発したくなってきた。
まあ最後にお昼ご飯を両親に作ってから行く約束をしたからまだ出発はしないけどね。
…とまああれこれと考えながら散歩していたら……
うわあああああああん……
「ん?」
木の葉の擦れる音が聞こえるほど静かな森には似合わない、小さな女の子の泣き声みたいなものが聞こえてきた。
「迷子でもいるのかな?」
私は産まれた時からここに住んでいるのでこの森で迷子になる事はないけど、小さな女の子なら迷子になる事も十分にあり得るだろう。
たしかこの近所に森で迷子になるほどの小さな女の子はいなかったはずだから、遠くからきた子が親とはぐれてしまったかもしれない。
一応保護しておいたほうが良いかなと思い、泣き声がするほうに向かってみる。
どうやら高い草むらの向こう側から泣き声が聞こえるっぽい。
なので草を掻き分けて見てみると…
カサカサ…
「わああああん……ひっ!?だ、だれ!?」
「……えっ!?」
草の向こう側には、確かに泣いている女の子がいた。
その女の子は、深紅の瞳にセミロングの白い髪で、ピンクのハートマークが小さく描かれている黄色のTシャツにフリルがついている青いスカートを履いていた。
ここまでなら何の問題も無かったのだけど…
「魔物…」
その女の子の頭には髪とは対称的な黒い角があり、背中には髪と同じ白い蝙蝠の様な翼、そして同じく白く細長い尻尾が腰から生えていた。
誰がどう見たって明らかに人間じゃない。魔物…あまり魔物に詳しくないから確信は無いけど、多分サキュバスの子供だ。
でも…
「もしかして…アメリをやっつけるために来た勇者さん?」
「私が?ううん違うよ!」
私を警戒しながら見ている魔物の女の子は怯えていた。
その姿は、とても恐ろしい魔物とは思えなかった。
「じゃあ…お姉ちゃんだれ?何でアメリのところに来たの?」
「私はサマリ。たまたまこの森を散歩してたらアメリちゃん…だよね?アメリちゃんの泣いている声が聞こえたから気になって見に来たんだよ」
「ホント?」
「うん、ホントに」
この魔物の女の子…アメリちゃんは、人間の女の子と何も違わないように思えた。
だから私は、自分でも驚くほど普通に話しかけていた。
そのためなのか、怯えていたアメリちゃんはいつの間にか私に警戒しなくなっていた。
「ところで、何でアメリちゃんはこんな場所に居るの?お母さんとかは?」
ここは反魔物領だから魔物が居ること自体おかしいし、何よりもこんな小さな女の子が一人で森の中に居るのが不思議でしょうがない。
「アメリ?アメリは今一人で旅してるの!」
「……へっ!?」
こんなに小さい女の子が一人旅をしているって…嘘でしょ!?
魔物にとっては当たり前なのだろうか?
それとも見た目が幼いだけで実年齢は私より上なのかな?幼い子供の姿をした成体の魔物も居るって聞いた事あるし…
「アメリちゃん今いくつ?」
「8さいだよ!!」
「……」
私の年齢の半分以下でした。
「それでね、アメリはお姉ちゃんたちに会うために旅してたんだけどね、今日の朝ごはんを食べようとしてた時に勇者のお兄ちゃんがアメリをやっつけに来て…むちゅうで走ってにげてるうちにまいごになっちゃったの…」
「へ、へぇーそう
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