11話 頑固な意地と密かな企み

「おいおい、本気かよ村長」
「ああ、本気だ」

タイトと決闘する事を決めた数日後。

「またなんでタイトと闘うのかねぇ……喧嘩したからってそんな事までする必要はないだろ?」
「五月蠅い。テメェにゴチャゴチャ言われる筋合いはない」

決闘に向け自室で魔力を集中させていたら、決闘の話を耳にしたらしいロロアが何故かは知らないが止めに入ってきた。

「宿敵関係が良いって……殺し合ってた頃のほうが良いって言うんならお望み通り殺してやる。それだけだ」
「それだけって……お前そんな事できると……」
「まあ無理だろうな。自分で言っててなんだが、本当に殺す気はない。だが、二度と動けないようにするぐらいならできるだろうな」
「おいおい……マジかよ」
「マジだ。と言うかさっきから何なんだお前は。ゴチャゴチャ五月蠅いって言ってるだろ?」

もちろんいらぬお世話だ。
あいつのお望み通り、昔みたいに殺し合いをしてやるだけ。他人にとやかく言われる筋合いはない。

「用がねえならさっさと帰れ……邪魔だ」
「ん、あ、ああ……」

殺気を籠めながら邪魔だと言い放つ。オレに気押されたのか、それとも止めても無駄だと悟ったのか、ロロアは思い通りに行かず微妙な表情を浮かべながら部屋を去っていった。

「さて……」

また一人になったところで、奴への殺意と自身の魔力を練り上げる。
やるからには全力を出す。その為には、普段無意識のうちに抑えている強大な魔力をも引き出す必要がある。あまり使いたくはないが、もしも切り札を使う事態になればそのためにも魔力を高めておかなければいけない。
自分で言うのも何だが、オレは膨大な魔力を持つバフォメット。その分魔力を全部引き出すにも時間が掛かる。サバトのほうはともかく、流石に村長の仕事をサボるわけにはいかないのでこればかりに集中できないが、タイトとの決闘までには間に合うだろう。

「覚悟しろよ、タイト!」

声に出し、決意を固めながら、一旦切れていた集中を取り戻すのであった。



====================



「……それで、本気で闘うのですね」
「何度言ったらわかる。俺は本気だ」

仕事を終え、帰宅しようとしたところで、自警団サポートのミラが話しかけてきた。
今日はサポートの世話になるような事をしていないよなと思っていたが、どうやら俺とティマとの決闘の噂を聞きつけてその真偽を確かめに来たらしい。

「過去に帰りたいってのも、今の魔物である私からしたらよくわからないですが……それにしたって村長さんと喧嘩しなくてもいいじゃないですか。失礼ながら言わせてもらいますが、いくらタイトさんでも一方的にやられるだけですよ」
「誰と喧嘩しようが、そして過去に帰りたいと思おうが俺の勝手だろ。お前にとやかく言われる筋合いはない」

勿論本当だ、そして俺は奴に勝ちこの村を出ていくと告げたら、こうしてやめるよう説得されているというわけだ。
別れるのが寂しかったり、昔はほぼ対等だったとしても500年のブランクがある中で今のティマと戦うのは無茶だと言うのはわかる。だからといって、俺の意思は変わらない。

「そうですけど……やっぱり、同じ職場で働く者としてはですね……」
「村から出ていくってだけならともかく、過去に帰ったらもう二度と会えなくなるんだから寂しいだろ?」
「それに、昔は殺し合っていた仲だと言われても、私達はタイトと村長さんが仲良くやっているところしか知らないからね。そりゃ喧嘩したら心配もするさ」
「フェイブ、それにレノアか……」

ミラと話しているうちにフェイブやレノアも気になっていたのか二人してこちらへ来たが、やはりその内容は俺を止めるものであった。

「寂しいと言うのはわからんでもないが……それでも、俺は帰りたい。もしフェイブ達が過去や未来に飛ばされたら、例えそこが平和だったとしてもきっと同じ事を考えるのではないか?」
「……そうか。それもそうかもしれないな」

だが、誰に何を言われようが俺の意思は変わらない。過去に帰る方法を探すべく、俺はこの村を出ていく事を決意したのだ。
それに……

「それにだ。帰る帰らない以前に、奴とは決着を着けねばなるまい。最初こそ違うが、いつからかあの宿敵と戦い勝つために強さを求め、自身の力を磨き上げていたのだからな。今は立場が違うし危険性もないみたいだから殺しこそしないが……それでも勝たなければならない相手だというのは違わない」
「そう……」

過去に帰る帰らない関係なく、ティマとは決着を着けなければいけない。
過去の奴ともだが、この時代のティマとだってそうだ。それが俺の強さを求める理由でもあり、己を懸けた信念でもあるのだから。

「まあ、用がそれだけなら俺は帰るぞ。勿論、奴との決戦の日まではきちんと仕事は
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33