サボテン組の日常!

「ふぁ……今日も良い天気じゃの……」
「おはよーございますセルクス先生!!」
「おはようサマラちゃん。今日も早起きじゃのう」
「えへへー♪」

大欠伸をしながらベッドから起き上がると、目の前には褐色の幼女がいて笑顔で朝の挨拶をしてくれた。

「毎朝寝坊助なわしを起こしてくれてありがとう」
「ありがとーございますセルクス先生♪」

この元気いっぱいな幼女はサマラちゃん。ひび割れのような赤い刻印が入った褐色肌を持つ彼女は、わしと同じファラオの女の子だ。遠い地に住むわしの友人の娘で、今は留学という名目で我が遺跡にて預かっている。
3歳ながらも立派に王の器を持っており、幼稚園では同じクラスの友人だけでなく誰とでも仲良くなっている。

「さて、わしは朝食を取り先に園へ行くが……サマラちゃんはもう食事を済ませたかの?」
「今からです。先生と一緒に食べようと思ってました」
「そうか。ならわしと一緒に食べようか」
「はいっ!」

そんなわしは、サマラちゃんが所属しているクラス、サボテン組の担任をしている。準備やお迎えなどがあるため、先生の朝は園児達よりも少し早いのだ。
サマラちゃんは遺跡内に住む他の子達と一緒に後から園に来るが、こうして朝食は一緒に取る事が多い。

「おはようございますセルクス先生! サマラちゃん!」
「おはようアルちゃん。アルちゃんも早起きして立派じゃの」
「いえ、ファラオに仕える身としては当然です!」
「おはよーアルちゃん!」

食堂に向かうと、同じく褐色の肌を持ち、また黒い手足の体毛と同じ色の尻尾と狼の耳、そしてぷにぷに肉球を備えている女の子が元気にシャキッと挨拶してくれた。
彼女はアヌビスのアルちゃん。スケジュール管理を行っているわしの部下の娘で、サマラちゃんと同じくサボテン組に所属する園児でもある。時間に厳しく、皆を引っ張る委員長のような存在だ。

「ウルムちゃんとチャグちゃんもおはよー!」
「おはよ……ござます……」
「ぐぅー……すぴぃー……」
「こらお前達、たるんでるぞ!」
「よいよい。朝も早いしまだおねむの時間じゃよ」

そのアルちゃんを挟むような形で全身に包帯を巻いた少女達がこっくりと船をこぎながら立っていた。
なんとか眠たい目を擦りながらたどたどしく挨拶をしたのは、5歳のウルムちゃん。包帯を巻くのが上手なのでうちのクラスの保健係だ。アルちゃんより年上だが、種族的な問題かアルちゃんに頭が上がらない。
そして完全に立ちながら寝てしまっているのが3歳のチャグちゃん。彼女はウルムちゃんと違い包帯を巻くのが苦手で、敏感な乾燥肌がチラチラ見えている。それなのに寝ているのは、よっぽど眠たいのだろう。
どちらもわしの部下の子供であり、同じくわしのクラスに所属している。ここに来る前にわしの着替えを補助したのがウルムちゃんの母親で、今しがた朝食を用意している者の中にチャグちゃんの両親がいる。

「おねむと言えば、あのバカ猫はまだ寝てます。朝は先生達と食べるとあれほど言ったのに……」
「これ、友達の事を馬鹿だなんて言ってはならぬぞ。それにラッテちゃんは母親と一緒で朝に弱いし、また幼稚園に向かう前に起こしてあげるのじゃよ」
「はい先生!」

アルちゃんの言うバカ猫もといラッテちゃんというのは、またまたわしのクラスに所属しているスフィンクスの女の子だ。例に漏れず、わしの門番をしている部下の娘だ。
親子揃って朝は弱いため、今頃耳や尻尾をぴくぴくと刻みながらぐっすり寝ているだろう。幼稚園の開始時間にさえ遅刻しなければいいので、もう少し寝かせてあげよう。

「では朝ご飯にしようかのう」
「はいっ!」

朝食の準備も終わったので、皆と一緒に食事を済ませる。
サマラちゃん以外は居たり居なかったりするが、毎日子供達と朝食を取るこの時間は、先生としての仕事を頑張るための最強のエネルギー剤てあった。



……………………



『おはようございます!!』
「うむ、おはよう。今日も皆元気じゃのう」

そして迎えた朝の9時過ぎ。幼稚園の開始時間。
このサボテン組はわし自身がそうであるように、砂漠や乾燥地帯に生息する魔物が中心に成り立っている。それに合わせ、教室も乾燥した砂地に小さなオアシス、そして教卓周りはピラミッドの物と同じ材質の石が敷いてあるという光景だ。

「おはようございますセルクス先生!」
「おおラッテちゃん、きちんと遅刻せずに来れたようじゃな」
「はい! 後であたしの考えた謎解き聞いてくださいね!」

朝はぐっすり寝ていたラッテちゃんも、今は元気に教室内で座っている。
茶色い尻尾を揺らしながら、自慢の謎解きを考えていたようだ。アルちゃんはバカ猫だなんて言っていたが、頭の回転はスフィンクスらしく早いので、結構謎解きも難しいものが多い。


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