「な、何よこれは……」
息子の部屋で一冊の本を手にし、わなわなと震える私。
まさか過ぎる展開に、私の頭はパニックだ。
……………………
…………
……
…
「ゴミ箱ゴミ箱っと」
始まりは、燃えるゴミを出す為に息子の部屋のゴミ箱を回収した事だった。
まだ家に帰ってきていない息子の部屋に入り、いつものようにゴミ箱の中身を指定のごみ袋に入れるだけ。それで終わるはずだった。
「ふんふふ〜ん……あらら?」
だがしかし、いつもよりも息子の部屋のゴミ箱の中身が多かった事もあり、いくつかのゴミを溢してしまった。
「いけないいけない……ん?」
床に散らばったいくつかの丸められたティッシュを取ろうとして手を伸ばして……瞬間、鼻に異臭を感じた。
変な臭いと言うか何と言うか、例えるならばイカ臭さがそのティッシュから放たれていた。
「これはもしや……」
イカが苦手な息子が自分の部屋でこっそりと新鮮なイカを食しているとは考えにくい。
そもそも、このティッシュには何か固形物が包まれている形跡はない。むしろ、何かの液体を拭いてそれが渇いてカピカピになっている感じだ。
これらを踏まえると、このティッシュはおそらく……
「ま、まあとっくの昔にそういうお年頃だしね。そ、それぐらいやっててもおかしくはないわね」
私の頭に導き出された結論……このティッシュは、息子が自慰の処理で使ったものだという事だ。
唐突に息子の性生活に触れたのでちょっと動揺してしまったが……女の子ならともかく、健全な男児ならば3大欲求の一つである性欲ぐらい湧くし、それを鎮めるために自慰ぐらいするだろう。というか、息子だってもうすぐ大学生。流石に自慰行為の一つや二つ行っていても何もおかしくはない。
そう、何もおかしくはないのだ。
「まったく、親に気付かれないようにしなさいよ……それにしても多いわね」
よく見ると同じようなティッシュがいくつもあった。それこそざっと見て10個以上もだ。
燃えるゴミの日は週に2回。つまり、たった3日でこんなに自慰をしたという事だ。自分が女なので正確な判断はできないが、いくらなんでも性欲強すぎではないか。我が息子として少し心配になる。まあでも、強姦とか犯罪に走っていないから良しとしよう。
「……そういえば……」
粗方ゴミの処理が終わったところで、またもや息子の性生活について考え始める。
ここまで自慰行為を行っている息子だが、いったい何を見てそこまで興奮をしているのだろうか。
PCは私と共有なので自室にはない。そしてスマホはフィルタリング設定をしてあるのでエッチな画像や動画を検索して……という事は無いだろう。同じ理由でエロゲーもない。3○Sでできると言うのであれば話は別だが、それもフィルタリング設定してあるからきっと大丈夫だろう。18歳になったから解除しても問題はないが、本人からそう言ってこないのですっかり忘れていたのもある。
漫画はバトル系の少年漫画なら何種類かあるが、性的欲求を満たせるようなものではない。中身はよく知らないのでもしかしたらヒロインの裸シーンとかあるのかもしれないが、それだけでこうも毎日何回も自慰なんてできるのだろうか。
好きな女の子の裸姿を妄想し……という可能性もあるが、そもそも息子の口から誰々が好きだの可愛いだのという話が出た事が無いので何とも言えない。あまり反抗期っぽいところが無い息子なので一般家庭より親子の会話は多いと思うのだが、色恋沙汰の話はあまりでない。数日前にこちらから好きな子とか居ないのかと聞いた時も、女子は苦手だから恋愛感情を抱きにくいという回答が返ってきて安心したと同時に将来結婚できるのか少し心配になった程だ。
じゃあ父親の持つエロ本をこっそりと……というのはあり得ない。何故なら我が家はシングルマザーの家庭だからだ。まだ息子が1歳にも満たない頃にあの結婚して子供もいるのにもかかわらず他の女性に鼻の下や股間を伸ばすろくでなし屑野郎とは離婚している。なのでその線は無しだ。
ならば自分でエロ本を買ってこっそりと隠し持っている……うん、これが一番あり得そうだ。18歳は過ぎ、高校は卒業したから買おうと思えば買えるはずだ。
「そうと決まれば……」
18歳を過ぎた男子なので別にエロ本の一つや二つ持っていてもおかしくはないが……どんな本を隠し持っているか気になり探してみようと思ってしまうのが母親というものだ。
現在午後6時過ぎ。OBとして大会前の部活の様子を見に行っている息子が帰って来るまではまだ時間もあるので部屋を物色してみよう。
「さて、どこから……」
「ただいまー」
「えっ!? お、おかえりー!」
なんて思っていたら、その息子が帰ってきてしまった。
「あれ? 母さん俺の部屋で何して
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