拾ってくれたあの日から

「……」

「くぅ〜……」

「拾って下さい……か。酷い事する奴も居るもんだな……」

「きゅ〜ん……」

「まあ、そんな誰かも知らない奴の事なんかどうでもいいか……」














「なあお前、俺と一緒に来るか?」













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「そーれ、取ってこい!!」
「わんっ!」

ご主人様が投げたボールを、ボクは1回だけ短く鳴いてから、風で揺れる草原を掻き分けて追いかけていった。
草原と言っても視界は良好。ボクがボールに追いつき取るなんて造作も無い事。
あっという間にボクはボールに追いつき、そのボールを咥えながらご主人様の下へ駆け足で戻る。

「よーしよし。ちゃんと取ってきたな」
「くぅ〜ん♪」

ボールをご主人様に返すと、ボクの頭を優しく撫でてくれる。
ご主人様の大きく温かい手がボクの身体を撫でると、とても嬉しい。

「もう一度だ! それー!!」
「ぅわんっ!!」

そんなご主人様が撫でるのをやめた後、さっきのボールを今度はもっと遠くに投げた。
もう一度撫でてほしいボクは、一心不乱にそのボールを追いかけていった。
どんなに遠くにご主人様が投げようとも、ボクは見失う事なくボールに向かって足を動かした。

「はっ、はっ、わうっ!」

難なくボールを見つけ咥えたボクは、早く撫でてほしくて自分が出せる一番速い走りでご主人様の下に戻った。

「おいトリバー、こんなところで犬と遊んでいていいのか?」
「すみませんフォード教官……明日の作戦が作戦なので、クーと思いっきり遊んでおきたくて……」
「まったく……わからんでもないが、明日疲れた状態でいたら元も子もないぞ?」
「そうですね……」

「くぅ〜ん……」

でも、ボクがご主人様の下に向かうと……いつの間にか何度か見た事があるご主人様の上司さんがご主人様とお話をしていた。
これじゃあ撫でてもらえそうにない……少し寂しいけど、なにやら真剣な話をしているようなので大人しくご主人様の隣で座ってる事にした。

「明日はここから嫌な程近くにある魔界都市へ、領土奪還の為に乗り込む……レスカティエのような大都市では無いが、それでも魔界だ。事の重大さはお前もわかっているな?」
「ええ……」

何のお話をしているのかはサッパリわからないけど、ご主人様が何時になく怖い顔してるからとっても大事なお話なんだろう。

「でも……魔界に攻め込む……魔物の巣窟に突入するという事は……」
「おそらくお前はもう帰ってこれなくなってしまうといけないからと愛犬と遊んでいた、そうだろう?」
「……はい……」
「それはいらぬ心配だ。たしかに我々は言う程精鋭揃いでもない。だが、俺はお前達が簡単に殺されるような弱い者とは思って無いし、もちろんわざわざ魔物の餌にするつもりもない」
「……」
「しかし、混戦の中でトリバー個人が自らの体調不全で魔物にやられたら……俺がお前を護りきれるかはわからんぞ? だから各自万全でいられるよう、今日は軽いトレーニングしてしっかり休むように言ったんだ。お前達の事だ。たかが一日歩を進めれば到着してしまう場所にある魔界都市なんて簡単に浄化できるだなんて余裕を扱く者はいないとは思うが、今のトリバーみたいに自身の当日の体調を考えずいらぬ心配をしているものが居るかもしれないと思っていたが……見に来て正解だったようだ」
「そうですね……すみません教官……」
「わかればいい……これが愛犬との最後の遊びになるかどうかはお前次第だ。これからも愛犬と一緒に居たいのであれば明日死なないようしっかりと準備を整える事だな」
「はい!」

お話の内容は全然理解できなかったけど……ご主人様が危ない事をしに行くっていうのはなんとなくわかった。

「それじゃあ俺はリアンの様子を見てくる。あいつが一番繊細だからな……緊張で夜も眠れないなんて事になってそうだ」
「ですね。俺はもう少しだけクーと遊んで、明日に備えしっかりと休みます」
「ん。ではまた明日」

そんな危ない事、正直してほしくない……
ずっとここでボクと一緒にいてほしい……
ご主人様にそう言って、何が何でも行くのをやめてほしかった。

「くぅ〜ん……」
「……ん? あ、悪いなクー。待たせてごめんな」
「くぅ〜ん……」

でも……ボクは言葉を伝えられる人間じゃない。鳴く事しかできない犬だ。

「なんだ? 俺の事が心配なのか?」
「わぅ」
「ははっありがとなクー」

ボク自身ご主人様が言ってる事が少ししかわからないように、ボクが言いたい事はご主人様には少ししか伝わらない。
なんてもどかしいんだろう。

「くぅ〜」
「心配するな。俺はお前を一人ぼっちにはしないさ。ちゃんと帰って来てやるよ……」

何かをボクに言いながら撫でて
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