「みゃあみゃあ……」
ボクは、気付いたら独りだった。
「みゃあ……」
別に親が居なかったわけではないし、一緒に乳を飲んでいる兄弟だっていた。
でも、ある日目が覚めたら、ボクは全く見覚えのない場所にいて、親も兄弟も居なくなっていた。
「みゃおぉ……」
汚い物や臭い物が山積みになっているこんな場所を、当てもなく彷徨う。
親や兄弟を呼んでいるが、やはり反応はない。誰かが現れる気配もない。
「みゃぅ……」
起きてから何も食べず、ずっと歩き続けていたボクの体力が限界を迎えたようだ。
力なく地面に倒れ、ぼーっと空を見上げた。
「……」
このまま親が助けに来てくれなかったら、ボクは死んでしまうのだろうか。
そんな事を思いながらも、どうしようもできないボクは、体力を消費しないようになるべく身体を動かさずにいた。
親が助けに来てくれる、そんな可能性の低い奇跡を信じて。
「……」
『おい、そこの白いチビ助』
『え?』
しばらくの間その状態で居たら、突然、知らない人の声が聞こえてきた。
『お前だ、お前。生きてるか?』
『だ、だれ?』
どうやらボクの事を呼んでるみたいだ。
誰かは知らないが、呼ばれたので目を開けてそっちを見た。
『おお、生きてたか。大丈夫かチビ助。お腹空いてるのか?』
『う、うん……』
そこには、茶色い毛並の、ボクより1,2回り大きい人がいた。
『じゃあおねーたんがチビ助のためにご飯を持ってきてやろう。ありがたく思え!』
『うん……ありがとう』
そう言って、ボクの前から立ち去っていき……
『ほらチビ助、ご飯だぞ。食べられるか?』
『う、うん……おいしい』
ボクのために、何かのお肉とか食べ物を持ってきてくれた。
おかげでボクは、死なずに生きていく事ができた。
これが、ボクとおねーたんの出会いだった。
……………………
『チビ助はどうしてあそこにいたのかわからないのか』
『うん。おねーたんはどうしてここにいるの?』
『私は好きでここにいる。ここならご飯もベッドもなんだってあるからな!』
おねーたんに案内されながら、ボクはこのごみ溜め場を歩いていた。
どうやらここは人間という生物達が不法投棄っていうごみを捨てる場所らしい。
『今日からチビ助もここで暮らすんだ。どこに何があるかは覚えておくんだぞ』
『うん……』
『あー、チビ助はちょっと前まで乳飲み子だったみたいだからお母ちゃんと別れて寂しいかもしれないけど……ここではそんな泣き言漏らしてたら生きていけないぞ』
『うん。わかってるよ』
もちろん、ボクが居た場所の近くにそんなものはなかった。つまり、親もこの近くにはいないという事だ。
自分がどうしてこんなところにいるのかは全くわからないし、どこから来たかもわからないから、ボクはここで一人で生きていくしかないのだ。
『まあ、ちょっとはおねーたんが助けてあげるよ。チビ助の事、なんとなく気に入ったし』
『ありがとおねーたん!』
『ふふんっもっと頼っていいぞ!』
いや、一人ではない。
どうやら、おねーたんがボクを助けてくれるらしい。とても心強い。
『ご飯はあそこにいっぱいあるからな。ちょっと臭いけど、美味いものは美味い……』
『おい小娘、そこの白いチビはどうしたんだ?』
『ん? ああ、おっちゃん』
比較的食べられる物が多く捨てられてる場所を説明してもらっている時に、後ろから野太い声が聞こえてきた。
振り向くと、灰色の毛並の大人が、ボク達のほうを見ていた。
『いやあ、本人もよくわかってないらしくてさ、気付いたらここにいたんだって』
『そうか……おいチビ』
『は、はい……』
左の目が傷付いているし、声も低いせいで、見た目はかなり怖いおじさん。
『何か困ったらワシやそこの小娘を頼るんだな。他にもここに住み着いているのは沢山居るが、他人を助けるようなお人好しはワシとそこの小娘だけだからな』
『あ……ありがとう……』
『ふふん。おっちゃんは強面のくせに優しいもんな』
『強面は余計だ。こうなりたくてなったわけではない』
でも、中身は優しいおじさんだった。
『昔ワシを飼ってた人間に裏切られただけじゃ! あー腹立たしい。人間なんて屑、信用したワシが馬鹿だった!』
『こらおっちゃん! チビ助の前で変な印象与えるな!』
『変とは何だ変とは! 真実を言っているだけだ!』
『それはまあそうかもしれないけど、おっちゃんの言い方じゃ人間全部が悪い人みたいじゃん!』
『ぐぬぬ……ワシは全員嫌いじゃ! 美味いもん食わしてくれたからちと気を許したら玉潰した挙句瓶で目を傷付けるような奴らなど好いてたまるか!』
『うぬぬ……おっちゃんの頑固!』
『……ぷ、あはははははっ!』
そんなおじさんとおねーたんの口喧嘩を見て
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