「うーむ……」
「あれノフィ君。こんな時間にお散歩とは珍しいですね」
「ん? ああネム……か?」
それは、何気ない一日に起きた小さな変化だった。
「こう言うのも悪いが……お前、本当にネムか?」
「……何故そう思うのですか?」
「だって……ちょっと前まではそう言ったら「淫らな考えを持つなんて神への冒涜です!」とか言って怒ってたじゃねえか。今日はやたらリムとはいえ魔物と一緒になる事を勧めてくるし……なんかおかしいと思うさ」
「……そうですか……ふふふふ……」
「!?」
本当に小さな変化で、ほとんど誰も気づいていない程だ。
もちろん、私もまったく気づいていなかった。
「お前……いったい何者だ!」
「何者って……嫌ですわ。昔からノフィ君とずっと一緒にいたネムですよ。ただ、ここ数日の間にちょっと考え方が変わっただけですよ」
「考え方……?」
しかし、見えないところで確実に変わっていた。
少しずつ、ゆっくりと変化が起こっていたのだ。
「いえ、実はノフィ君に用事がありましてね。もう寝ているでしょうし明日にしようと考えていたのですが、こうして会ったのでぜひ聞いてもらおうかと」
「俺に用事? なんだ?」
「まあ、正確にはわたしではなく、更に言うとノフィ君に直接用事があるわけではないですけどね。夕方頃村にいらっしゃったお客様がリムちゃんに渡したいものがあるという事で来たのですが……」
「ですが……なんだ?」
「いえ、物も物ですし、それに直接行ったらあの方々はルネ先生に怒られてしまうかもと仰られていましたので、ノフィ君の手で渡した方がよろしいかと思いましてね」
「まあいいや。会えばわかると思うし、今から会うよ。教会に居るのか?」
「ええそうです。それではお願いします」
そして、その変化は、もっと大きな変化を呼ぶのであった。
もちろん、私自身も、大きな変化に巻き込まれていったのであった……
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「……」
「リム、そこのイヌサフラン取ってくれない?」
「……」
「リム? おーいリムー?」
「……はっ! な、何スノア兄ちゃん?」
「いや、だからそこのイヌサフラン取ってって」
「あ、うん。はい」
お婆ちゃんが倒れてから数日後。
お婆ちゃんやスノア兄ちゃんが言った通り、あれから特に心配になることは起こらなかった。
ということで今日もいつも通り診療所でスノア兄ちゃんと一緒に薬を調合していたのだが……
「どうしたの? 今日はなんだか気付いたらぼーっとしてるけど……もしかして体調悪い?」
「ううん……そうじゃないけど……」
「そう? それならいいけど……ぼーっとし過ぎて薬の調合は間違えないようにね。失敗したら只じゃ済まない事になるかもしれないからね」
「う、うん……わかってる」
なんだか今日は少し気を抜いた瞬間にぽけーっとしてしまう。
別に体調が悪いわけではない。原因もおおよそわかっているが……自分のお仕事はきちんとしなければならない。
何故なら、私のやっている事は人の命を預かるお仕事なのだから。
「今日は頑張る……けど、明日からしばらくの間お休みするね」
「え? ああっ! そうかそろそろそんな時期だったね。だから今日はぼーっとしてる事が多いのか……」
「うん。まだ大した事ないけど、たぶん明日から本格的になるから……」
だから、今日は頑張ってお仕事をこなす。だが、明日からはとてもじゃないが無理だろう。
何故かというと、今私がぼーっとしている原因は……おそらく発情期の前兆だからだ。
時期的にも今週中に来る事は予想できていたし、今もちょっと身体が火照っている感じはあるので、きっと明日辺りには本格的に来るだろう。
そうなると仕事どころじゃない。数日間ずーっとベッドの上で獣じみた自慰を続ける事となるのだ。
「なんならもう休んでいてもいいよ。集中できないとこっちとしても困るし……」
「ううん。今日は……せめて午前中だけは頑張る。一応まだ思考はちゃんとしているからね。ほら、ちゃんとお薬も作れてるでしょ?」
「んー……まあそうだね。でも無茶は駄目だよ。僕達は人の命を預かる仕事をしているんだからね」
「うん、わかってる!」
だからこそ、まだまともに考えて動ける今日は頑張ってお仕事をしたいのだ。
たしかに、薬の調合も診察も結構集中力が必要な事なので、このままぼーっとする様ならばやめたほうがいいだろう。
しかし、医者になるためになるべくいろんな事を覚えたい私は、今日一日、せめて午前中だけでも頑張りたい。
「んーよし。できたから渡してくるね!」
「うん。あ、明日から発情期だって事、ノフィ君に伝えておいたほうがいい?」
「んー……よろしく! なんだか今ノフィに会うと最初の時のように一気に発情して襲っち
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