変化のお話

「で、結局今のは……」
「そ、そうだよ! 私はノフィの事が好きだよ! もちろん男女の仲としてね! 私の番になってほしいと思ってるよ! 悪い? 文句ある!?」
「えっも、文句はねえけど……」

それは、勢い任せに告白し、ノフィと恋人の関係になった日。

「いやその……俺も……」
「何?」
「俺も……実を言うとリムの事が好きだ。もちろん女としてな……だからその……うわっ!?」

この日の事は今思い出しても恥ずかしく、毎度悶えてしまうが、同時に一生忘れられない思い出だ。

「ちょっ何を……んんっ!?」

勢い任せに強引に与えた、私のファーストキス。
あれから何度も、私達はキスをしてきては、時々からかわれたりもした。

「ぷは……今日はキスだけで勘弁してあげる! とっとと元気になって今度はデートに連れてってよね!」
「あ、ああ……」
「それじゃあ家族の人達呼んでくるから! 恋人になった事もその時に言ってもらうからね!!」
「え、ああ、うん……」

約束通り、次の休みの日には一緒にデートをした。
いつもの山だったけど、そこにあった花を束にしてプレゼントしてくれた。私は嬉しくてまたキスをした。
その後も何度もデートをした。いろんなところへ、時には遠くまで一緒にお出掛けした。



ただ、その先へは未だに踏み込んではいなかった……



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「いやったあっ!!」
「よっと! まだまだ余裕に避けられるよ!」
「むっ……ならこれはどうだ!」

いつも通りの朝、診療所が開くよりも前の、太陽が昇り始めたぐらいの時間。

「はああっ!!」
「うわっ! ちょっと掠った……」
「まだまだ!」
「おっと! ならこっちも!」

私は現在、休暇で村に帰ってきていたアルモちゃんの稽古に付き合い、村の中にある空き地で手合わせをしていた。
実践訓練という事で、私はアルモちゃんが振う木刀をワーウルフの運動能力をフルに使って紙一重でかわしていたが、調子が良くなってきたのかだんだんと掠めるようになってきた。
このままだと直撃する可能性もある……という事で、私は自分の手足を使い剣を弾き、反撃を試みる。

「えいっとおっ!」
「くっ、一発一発が重い……!」
「ほらほら、もっと腰を入れないとふっ飛ばされちゃうよ! 私なんてワーウルフの中でもまだそこまで力が無いほうなんだから!」
「ぐっ、このおっ!」

フェイントを混ぜつつ、アルモちゃんに反撃の隙を与えないよう果敢に攻めていく。
教団の騎士になるという事は、魔物を相手する事もあるだろう。私自身が魔物なので魔物が人間を殺すことはまずない事はよくわかっているが、それでも人間を同じ魔物にしようと襲う事はあると断言できる。
その時、アルモちゃん自身がそれを防ぐ事ができるように、私が実践に近い形で襲ってみている。戦った事など無いのでほとんど本能に合わせて身体を動かしているだけだが、わりといい訓練にはなっているらしい。

「はああっ!!」
「よっと。それっ!」
「うわっ!」

苦し紛れに大きく振りかぶったアルモちゃんの隙をついて、私は足払いをして転ばせる。
不意を突かれたアルモちゃんはそのまま仰向けに倒れたので、私はその上に乗っかり爪を顔に押し当てる。

「はい、これでアルモちゃんはワーウルフになっちゃいました。ちょっと追い詰められたら力んで大ぶりになっちゃうのは良くないよ。隙だらけで簡単にひっくり返せるもん」
「むぅ……教官にも言われるからわかってるけど、癖になってて中々直らないのよね……」
「他にもあるよ。2,3か所を素早く狙われると慌てちゃって対応が追いつかなくなってるとかね。フェイントには強くても、慌てたら普通の攻撃にも対応できなくなっちゃうんじゃ意味無いよ」
「あぐぅ……返す言葉もない……」

私の爪は相変わらず鑢で丸めてあるので問題無いが、これがもし他のワーウルフならアルモちゃんはめでたく私の仲間入りだ。まあ本気でそうするつもりはないし、もしするのであればこの体勢から噛めば一発だ。

「よいしょっと。でも動きは結構様になってきたんじゃないかな? まだ身体能力が高い獣人型やヴァルキリーとか戦士タイプの魔物には敵わないだろうけど、ただの悪い人には負けないと思うよ」
「負かされた相手に言われても虚しいだけだよ……まだまだ課題が多い事もわかったし、訓練に付き合ってくれてありがとうねリムちゃん」
「どういたしまして。私でよければいつでも付き合うよ。もちろん開業時間までだけどね」

一通り気になったところを告げ、私はアルモちゃんの上から飛び降りる。
この訓練は太陽がまだなく、うっすらと明るくなった時間から始めていたが、今や5分の4は丸い太陽が山から出てきていた。
開業時間まではまだ時間があるが、朝
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