8話 平和なおつかいと大きな損失

「ただ今戻りました。いつものように香恋とモックが小競り合いをしていた事以外は特に問題無しです」
「了解。お疲れ。プリルとノルヴェが帰ってきたら一緒に訓練に励んでくれ」
「わかりましたジェニアさん。それじゃあ先に行って準備しようか」
「そうだな」

ホーラが出張に行ってから3日が経過した。
俺はいつも通り自警団としての仕事をこなしている。今日はミーナと昼番で、先程まで見回りをしていた。

「そういえばミーナは肉弾戦主体なんだよな?」
「そうよ。一応自分の糸を使った縄も使うけどね。でも、そもそもどちらかというと直接戦闘は苦手なのよね」
「あー……というか俺ミーナが戦ってるところまともに見た事ないな」
「まあ、アルサの時はタイトご指名だったし、ヨルムの時は避難誘導の方をしていたからね」

そして今からは訓練の時間。
いつもの自主訓練ではなく、ジェニアさんから直々に言われた模擬戦での訓練だ。まずはミーナと手合わせし、プリルやノルヴェが戻ってきたら総当たりやチーム戦もやる予定だ。

「私はディッセと同じくトラップ中心よ。ディッセと違って小道具じゃなくて自分の糸や魔力がメインのね」
「そうなのか。今すぐ仕掛けたりはできるのか?」
「ええ。でも今から模擬戦をするのに目の前で作ってもトラップの意味無いしね。まあ簡単なものだと、単純に蜘蛛の巣を想像してもらえばいいわ」
「なるほど。さすがアラクネ」

そういえばミーナが実際に戦闘しているところを見た事ないなと思い、なんとなく戦い方を尋ねてみた。
どうやらアラクネらしい戦法を取っているようだ。身一つと言っても、魔物は人間以上に使える武器が多いのでいろんな戦い方ができるので面白い。

「ふふん! 感心したなら結婚してあげても良いわよ」
「何故そうなる。ジュリーも同じ事をよく言うが、俺は魔物と結婚する気はない」
「冗談よ冗談。タイトには村長さんが居るものね。自警団の人間は皆とっくに諦めてるわよ」
「だから何故そうなる。あいつは宿敵……まあ今となってはライバルってところか……とにかく一切そういう仲ではない!」
「あらそう? 私はお似合いだと思うけどね。結婚式のドレスなんかも家で作ってあげるわよ?」
「そういうのはホーラの方に言ってくれ。ヴェンとなんかいい感じだったらしいし、将来的には結婚もするだろうからな」
「あら。この前おしゃれな服を買って行ったと思ったらそういう事だったのね」

しかしまあ今の魔物は隙あらば求婚してきたり、恋の話をしてきたりするので、旧時代とはまた別の意味で困る存在だなとも思う。
特にここ最近はやたらと俺とティマを恋仲にしたい魔物が多い。こいつらといいティマの所の魔女といい……いい迷惑だ。
でもまあ、俺はともかくティマのほうはもう500歳を超えているので魔女達も早く伴侶を見つけてほしいと考えての行動だろう。それは良いが人を巻き込まないでほしいものだ。

「お待たせー」
「おっ、ようやく来たか」

と、ここでプリルとノルヴェが見回りから帰ってきた。

「んじゃ早速やろうぜ! ウチら女対お前ら男のチーム戦ね!」
「なんでそうなるのよ……別に反対はしないけどいきなり過ぎるわね」
「いやまあ、見回りしていた時に俺とプリルで話をしていてな。タイトってこの時代に来てからまだ2ヶ月半ぐらいで、あまり俺達と組んで戦ってないだろ?」
「ああ、まあ……訓練もメイとばかりしていたし、言われてみればノルヴェの戦い方も詳しくは知らないな」
「ま、という事で今回はタイトが他の奴と組んだ時もチームワークを発揮して戦えるようにしようと思ったんだ。それでまずは同性で性格は近いけど戦い方が全く違うノルヴェと組ませて訓練しようと思ったんだよ」
「なるほどねぇ……それは良いかもね」

帰ってきて早々プリルの案で、俺はノルヴェとタッグを組んでプリル&ミーナとの模擬戦を行う事になった。
確かノルヴェは弓と魔術をメインに扱う遠距離型の戦法を取っていたはずだ。確かにそう考えると近距離主体の俺とは戦い方は正反対だろう。

「それじゃあ早速始めましょうか」
「そうだな。それにしても早く村外れのコロシアム完成されねえかな……確かあそこってイベントがない時はウチら自警団の人間が訓練に使っても良いんだろ?」
「確かそのはず。企画に団長が関わってるから優先的に使わせてもらえるみたいだしね。ここより数倍も広いし動きやすいんだろうな……いつ完成するかタイトは村長さんから聞いてない?」
「いや聞いてない。だけど本格的に工事を始めたみたいだし、少ししたら完成するんじゃないのか? あれだけ大きいと年単位な気がするが、ジャイアントアント達の建設業は仕事がもの凄く速いとは聞くし……」
「確かに実際速いぞ。レノアとフェイブの家も頼んでからわずか2週間かからな
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