「これ、やる!」
「……へ?」
初めて友達ができた、忘れられないあの日。
「私と仲良く?」
「お、おう。えっと……前たまたま見掛けた時、可愛いし友達になりたいと思って……その時先生と一緒だったし診療所の裏にある家に住んでるかと思って……その……それで居たから外から話し掛けてみようと思ったけど……えっと……」
一輪の綺麗なお花を持って、私と友達になりたいと言ってくれたノフィ。
「友達? 私と?」
「う、うん……駄目かな?」
「私、魔物だよ? 化け狼だよ?」
「うん知ってる。でも関係ねえよ! 魔物でも怖くねえし、俺はお前と友達になりたいだけだ!」
魔物だろうが関係無く、友達になりたいと真っ直ぐ言ってくれたノフィ。
「……いいよ」
「え?」
「友達に、なろう」
「お……おおう! 俺達は友達だ!」
そんなノフィと、私は友達になった。
そのおかげで私は世界が広がったような気がして、周りの環境や人間に対する思いは、急速に変わったのであった……
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「えっと……こっちのギザギザの薬草は火傷によく効いて、こっちのちょっと匂いがキツイのはお腹壊したのを治す薬のもとになる植物だっけ?」
「その通り、正解!」
「えへへ……やった!」
診療所がお休みの日の、いつもと変わりのない朝。
「結構覚えるの速いなぁ……これは将来本当に医者になれるかもよ?」
「スノア兄ちゃんの教え方が上手だからだよ! それに私は本当にお医者さんになるつもりだもの! そしてスノア兄ちゃんやお婆ちゃんのお手伝いするの!」
「はは。それは頼もしいよ」
私は、スノア兄ちゃんの教えで薬草のお勉強をしていた。
それもこれも、私は大きくなったらお医者さんになりたいからだ。お婆ちゃんやスノア兄ちゃんの助けになりたいから、お医者さんになる事を目指している。
だからこうしてお休みの日や一日の診察が終わった後など、余裕がある日にスノア兄ちゃんに教えてもらっているのだ。
「次は?」
「次は……と言いたいところだけど、リムはこれからノフィ君達と遊ぶ約束していたんじゃなかったっけ?」
「え……あ、もう約束の時間だ!」
「やっぱりそうだよね。じゃあ今日のお勉強はここまで。お昼ご飯までには帰ってくるんだよ」
「はーい!」
次はどんな事を教えてくれるのかと聞いてみたら、遊びに行く時間じゃないのかと言われた。
約束の時間は10時だ。言われてから今の時間を確認してみたら……10時だった。
お勉強をしているとあっという間に時間が過ぎてしまう。それだけお勉強が楽しいってのもあるけど、夢中になり過ぎて友達との約束を破るのは良くない。
「よいしょっと。急がなきゃ!」
「おやリムちゃん。今からお出かけかい?」
「あ、おばあちゃん!」
「おっとっと。朝から元気だねぇ」
「うん! 今からノフィ達と遊びに行くの!」
「そうかいそうかい。気を付けて行くんじゃよ」
「うん! 行ってきますお婆ちゃん!!」
という事で、急いで準備を済ませて家を飛び出した。
その途中、居間からお婆ちゃんが出てきたので、抱きついて行ってきますの挨拶を済ませた。
「さーて、急がなくっちゃ!」
玄関を出て、集合場所である村の広場まで駆け出したのだった。
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「……ほっほ。今日もリムちゃんは元気だねぇ」
「そうだね。本当に元気だよ」
目にも止まらぬ速さで玄関から飛び出したリムを見送る僕とお婆ちゃん。
「本当に、明るくなったなぁ……」
「そうだねぇ……ノフィちゃん達のおかげかねぇ……」
ここ2、3年の間に、随分と明るくなったリム。
いつ頃からか笑顔を浮かべるようになったし、元気にはしゃぎ回る事も多くなった。
それに、僕を始め多くの人間を信頼し、元気に接するようにもなった。同じように、村の人たちもリムを受け入れられるようになった気がする。
それもこれも、ノフィ君を始めとした同世代の子達と遊ぶようになってからだ。子供達と一緒に遊ぶうちに本来の明るさと元気を取り戻したのだと思う。
「さてと、勉強道具を片付けるか。パンさんもそろそろ来るんでしょ?」
「おや、そういえばそんな時間だねぇ。それにしても医者になるための勉強か……リムちゃんがお医者さんになる日が待ち遠しいねえ」
「そうだね。物覚えはかなりいいし、本人がずっとその気ならばきっとなれるよ」
一旦勉強道具を仕舞いながら、リムの将来について考える。
去年あたりから医者になりたいと言い始めたリム。その前からも仕事中に診療所の方まで来て覗く事もあったし、僕達の仕事に興味を抱いたのだろう。
それならばとこうして時間がある時に医療について教える事にしたのだが、元々知恵が働く方なのか、そ
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