まだ日が昇ったばかりの朝、荒削りな岩石があちこちに転がっている道で、オイラはある人間を待ち伏せしていた。
待ち伏せしている理由?……あのいけすかない人間のオスを今度こそ殺すためだ。
毎度毎度挑んでいるのだが一向に殺せない……もう回数なんか忘れた。
そもそもたかが人間のくせにオイラよりも強く、頭も良いのが気に食わない。しかも絶対にオイラにとどめを刺さないのも腹が立つ。オイラには殺す価値もないってか!?
イライラしながらも手に持つ棍棒を構えじっと待っていると…
カツッ、カツッ、カツッ……
道の向こうから規則正しい足音が聞こえてきた。
足音がする方を睨んでいると…銀の鎧を身につけ、腰には大剣をぶら下げている人間のオスが歩いてきた。
顔もはっきりと見える距離まで近づいてきた……間違いない、あのいけすかない奴だ。
「死ねえええええええっ!!」
「……」
奴だと確認したオイラは、一気に岩陰から飛び出し、奴の頭に棍棒を振り下ろした!
だが…………
がしぃぃん……
「……はっ!勝てなさ過ぎてとうとう不意打ちかよ!」
「……チッ!」
奴はいつの間にか腰にぶら下げていたはずの大剣を鞘から抜いて右手に持ち、そのまま奴自身の頭上に振り上げ、オイラの渾身の一撃をあっさりと防ぎやがった。
「そもそもお前殺気出過ぎなんだよ。隠れていたってわかるっつーの」
「う、うるせー!!オイラはテメエを殺すつもりでやってんだ!殺気ぐらい出るわ!!」
不意打ちが失敗してしまったので、距離をとるために奴の大剣を踏み台にして後ろに跳んだ。
やはり一筋縄ではいかないか。剣をオイラに向ける奴は完全に隙が無くなっていた。
「そもそも何でお前は俺を殺そうとしているんだ?」
「オイラ達魔物が下等種族である人間を襲い喰らうのは当たり前だろ?テメエはそんなことも知らない馬鹿か!?」
上位種である魔物が下等種の人間を殺し喰らう、これはこの世界の常識である。
人間だってそこいらの魚や動物を殺して喰らっている…生きる為の行動だ。別に普通の事である。
そんな常識すら知らないとは…もしかして奴は本当はオイラ以上に馬鹿なのか?
「いや、そうじゃなくて…何でお前個人は俺個人を殺そうと躍起になっているんだと聞いているんだよ馬鹿」
「馬鹿って言うんじゃねえー!!素直にオイラに殺されないテメエが気に食わないからだ!!」
「……素直にお前を殺さない俺が気に食わないのね」
「だ・ま・れ!!今日こそ殺す!!」
これ以上無駄に会話をしていても腹が立つだけなのでオイラは一気に奴の懐に踏み込み棍棒を腹に向けて振りかぶった。
だが奴は軽く後ろに下がりオイラの攻撃をかわし、大剣をオイラの頭に向けて振りかざしてきた。
だがオイラは空いている方の手で剣を弾き返し、また大きく後ろに跳び距離をとる事にした。
「威勢の割には大した事ないな」
「うるせー!!余裕ぶってんのも今のうちだ!!」
オイラは近くにあったオイラの背の高さと同じ位大きな岩石を持ちあげ、奴にめがけてぶん投げた。
しかし奴はその岩石が当たる前にとても普通の人間では不可能なほど高く真上に跳びあがりかわした。
過去にも同じ事をしていたが、どうやら履いている靴に細工がしてあるようで、その為あそこまで高く跳べるらしい。
だが、ここまではオイラの予想通りだ。
「かかったなあ!!」
そのままオイラは上空にいる奴に向かって跳びあがる。翼など持っていない人間の奴では空中では上手く動けないはずだ。
オイラはありったけの力を込めて奴の顔面めがけて棍棒を振り抜いた。跳ぶ際に奴は重りになる剣を地上に残しているのでさっきのように防がれる事もなく奴の顔面を粉砕出来るはずだった。
パシィィィン!!
「はい、残念!狙うところが悪かったな!」
「なっ!?クソッ!!」
だが、顔面に当たる前に奴の両手がオイラの棍棒を挟み込むように受け止め、力を別の方向に流した。そのせいでオイラのバランスは一気に崩れ、逆に身動きが取れなくなり……
「それじゃあおやすみゴブリンさん!」
「クッソォォ……グガッ!!」
奴は両手で握り拳を作ってオイラの背中を力強く殴り、オイラは地面に向けてたたき落とされた。
地面に叩き付けられた衝撃で丈夫な魔物…ゴブリンであるオイラも流石に大きなダメージを負い、意識が朦朧としてきた。
「チ………ク…………ショ………」
「ふう…これに懲りたら二度と俺のところに来るなよ…って言っても来るんだろ?」
「あ…たり……まえ………だ!」
オイラと違い綺麗に着地した奴は余裕な顔をし、大剣を鞘に戻しながらオイラに話しかけてきた。
その余裕がムカつくし殺してやりたいが…ダメージのせいで身体が思うように動かない。
「まあ勤務前の肩慣らし
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