聖なる夜のエトセトラ

今日はクリスマス。
この日はどこぞの偉い神様の誕生日を祝う日だけど、この街の人達にはそんな事はあまり関係無く、ただ単にお祭り行事の一つである、そんな楽しい日。
今にも雪が降り始めそうな寒空の下、光り輝くイルミネーションが飾られた街路からひっそりとした路地裏まで、街の中では多くの人や人ならざる者達……魔物娘達で賑わっていた。
愛を育む者や一人寂しくその人達を羨ましそうに見ている者、また家族で楽しそうに食事している者にここぞとばかりに商売してる者など、本当に様々な者達が色とりどりな様子を見せている。
そんな彼ら彼女らが今日という日をどのように過ごしているか、少し覗いてみましょう……



=======[Case.1]=======



「うぅ……身体が冷えて思うように動かない……」
「おいおい……大丈夫なのか?」

まず目に入ったのは、居住区をゆっくりと歩く学ランを着た男子と、一見毛玉と間違えそうな程セーターやニット帽など毛糸で作られた衣服を着込んでいる下半身が蛇の女子……つまりラミアの二人組。
仲睦まじく歩く様子から、おそらくカップルでしょう。
クリスマスだというのに補講があってデートはできなかったみたいですが……こうして二人で仲良く歩いていますし、さほど問題はなさそうです。

「まあなんか雪でも降ってきそうな天気だからな……身体は本当に大丈夫なのか?」
「なんか眠い……」
「それ本気でマズくないか? 冬眠しかかってるんじゃないよな?」
「流石にそれは……ないとは言い切れないけど……」
「言い切れないんだ……」

ラミアは蛇の特徴を持つので、冬は、特に今日みたいに気温がもの凄く低い日は身体が冷えて動きも鈍くなってしまうみたい。
かなり厚着をしているのにも関わらず、身体を震わせ眠気を堪えながら道を這っていますね。

「ほら、もう少しで家に着くからさ、それまで頑張ろう」
「うん……」

彼氏も隣で彼女を応援しているようですが、それだけで暖かくなるほど単純なものではありません。
亀の方が速いんじゃないかというほどゆっくりとした速度で進むラミアは、今にも目を瞑ってしまいそうです。

「ほら、いざとなったら引っ張ってやるからさ」
「えー、できればおぶって……あったかい……」
「流石にラミアを持ち上げられるほどの力はないからこれで我慢してくれ」
「仕方ないなぁ……」

見兼ねた彼氏は、彼女の手を握ってあげました。
おぶってほしいと言った彼女は少し不満そうだけど、握られた手のひらから感じる温もりに笑顔が浮かんでいます。
微笑ましくもあり、羨ましくもありますね。

「ねえ、いっそ巻きついても……」
「歩けなくなるから家に着いてからな」
「ぶぅ……じゃあ早く帰ろう!」
「そうだな!」

彼の手の温もりで少し元気が出たようで、尻尾の先を少し彼氏に巻きつけてましたが、拒否されて普通に戻りました。
まさかのロールミー拒否で不貞腐れているようですが、家に着いたらしてもいいと彼氏の言葉を受け取り、さっきまでの遅さが嘘のように早々と移動を始めたようです。
どうやら彼氏の作戦が成功したみたいですね。

「今日は家に着いたら……じっくりねっとりとシてあげるから……ね
#10084;」
「まったく仕方ないな……でもまずは飯食って体力つけたうえに身体を温めてからな。折角ケーキも買ってあるし、ずっとシ続けるんじゃなくてさ」
「勿論よ。私がケーキ食べさせてあげるからね
#10084;」
「お、おう……恥ずかしいな……」

……なんだか2人の周りにピンク色のオーラが出ているような気がします。
路上にも関わらず自分達の世界に入り、アツアツのラブラブなのは別に本人達にとってはいいと思いますが、そんな様子を見ていると嫌な気分になる人がいるのもまた事実。
私も凄く羨ましいので爆発でもしてほしいと思いますが、そんな気持ちを抑えて、他の人の様子を見てみることにしましょう……



=======[Case.2]=======



「けっ……高校生のガキがイチャイチャしやがって……」

こちらは先程のラミアのカップルとは対照的に、どす黒いオーラを放ちながら居住区を歩く男性。
カップルとは反対方向へ進んでいましたが、すれ違う時に鋭く睨みつけてました。
そんな様子を見るに、どうやら彼は今日という日を一人で過ごしているようです。

「あーくそ! 俺だって彼女欲しいよー!!」

彼の悲痛な叫びは、周りの民家に響いていきます。
しかし……その声は誰にも聞こえていないみたい。
元々人通りが少ないうえ、家の中では子供達の元気な声で溢れていたり夫婦の営みが行われていたりと、外の声は耳に入らないようです。
まあ、聞こえてしまってもこの男性が困るだけでしょうけど。

「あーあ、サンタが彼女をくれたり
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