3話 新たな仕事と勇者襲撃

「皆注目してくれ。今日から入る新人の紹介をしたい」
「はじめまして、タイトといいます。よろしくお願いします」

自警団本部に入り、団長である人虎のジェニアに連れられて入った大きな扉の先には、人間と魔物が入り混じって十数人ほどいた。

「あ、さっきのお隣さん!」
「お、ジュリーか。また会ったな」
「なんだお前達は既に知り合いか。では当分はジュリーが面倒見るってことで良いか?」
「良いですよジェニアさん。お隣なので都合もいいですしね」

その中には先程会った、隣に住んでるジュリーの姿があった。
まあ同じ職場だと言っていたし居てもおかしくはないだろう……少しではあるが、知っている人がいると緊張がほぐれる。

「ところで、タイトだっけ? こいつの実力ってどんなもんなんですか?」
「まだ実戦を交えてないから実際はわからんが、少なくとも旧魔王時代にあの村長さんと互角に戦っていたらしい。ああ、事前に説明していたと思うが、タイトは五百年前からタイムトラベルしてきた人間だ」
「あ、それ結局本当なんですか?」
「本当だ。いまだに自分ではこれが現実だと受け入れきれてない。なにせ魔物が全員女性で人間に近くなるなんて夢にも思っていなかったからな」

様子を見た感じだとどうやら事前に俺の事は自警団員全員に伝わっていたらしい。
だから先程ジュリーに会った時も俺が同じ職場とわかったら「あー」と納得したような顔をしていたみたいだ。

「他に質問がある奴は自己紹介と共にどんどん言え。これから共に働くし、お互いの事は知っておくべきだからな」
「じゃあアタシから。おいお前、剣を持っているという事は剣士か?」

一通り自己紹介が終わったところで質問タイムがやってきた。
その瞬間いきなり手を上げてそう聞いてきたのは……尻尾から炎が出ているトカゲの魔物だった。
炎とトカゲという点からしておそらくサラマンダーだろう。

「いや、そうでもない。剣は好きだから使っているが、ティマ曰く下手の横好きらしい……俺はそこそこ使えてるつもりだけどな」
「なんだ残念。剣士なら是非手合わせしたかったが……いや、見た感じ身体は出来ているようだし、下手ならアタシが鍛えてやるって事も可能か……あ、アタシはサラマンダーのメイ。よろしくな」

何か不穏な事を言ったサラマンダーのメイは、大剣を掲げているのできっと剣士なのだろう。
パッと見た感じ他にも剣士は何人かいるが、彼女ほどの使い手はいないのだろう。サラマンダーというのは熱い戦いが好きな種族だが、そんな彼女が相手を欲しているのでそう考えられる。

「じゃあ次は俺、オストが。タイトは今何歳なんだ? それとティマさんとの関係は?」
「俺は今22歳だ。まあ、時を越えたからよくわからなくなっているが、一応誕生日はちょっと過ぎた。それと、ティマとの関係だが……昔は宿敵同士、今は……どうなんだろうか。自分でもわかってない」

次に聞いてきたのはパッとしない長身の男性、オスト。
年齢は別に身体が急成長したり逆に若返ったりした様子はないため変わらないと思うが、それと同時にそういえば今日が何日かわからない事に気付いた。
自分達がこの時代に飛ばされた日と全く同じなら問題無いが、1日でもずれていたら変わってくる気がする。
それと何故かティマとの関係を聞かれたので、それにも素直に答えた。
この時代のティマにはいろいろと世話をしてもらっているし、かつてのように殺し合う必要はないので普通に仲良くやっていたので、もはや宿敵とは呼べない……ならば今の奴と俺の関係はいったい何だろうか。自分では全くわからない。

「じゃあ恋人関係という事ではないんだね」
「は? いやいやそれはない。ティマの身体は少女でも中身は男だぞ?」
「元は男でも今は女性だろ? まあ恋人関係がないって事はわかったよ」

まあ少なくともオストが言ったように恋人関係という事だけはありえない。
たしかに元は男でも今は女性と言えるだろうし、魔物と人間の間に恋愛が産まれるのもこの時代では普通の事だとは理解しているが、俺自身がそうであるかはまた別の話だ。
ティマは元々オス、それに女に変わったと言っても魔物、しかも実年齢はともかくその姿は異形の少女のものだ……恋人なんかになるわけがない。

「へぇ……という事は今はフリーか……」
「なーるほど……」
「それっぽい事言ってたもんね……」
「ふーん……」

ただ、恋人関係ではないと言った瞬間、一部からねっとりとした視線が飛んできた気がした。
一部というか……ジュリーとメイ、それに蜘蛛の下半身を持つ女性と牛の獣人と言うべきか。

「えっと……そこの4人、何か用か?」
「あ、いや別に……」
「なんでもないよ……強いて言うなら後で模擬戦でも頼もうかなとか思ってただけだ」
「私も別に……あ、
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