2話 村の変化と新たな仕事

「おーっす。昨日はぐっすり眠れたか?」
「まあ一応はな。家だけはいつも通りだったからな」
「ティマさんが女の子って事はやっぱ夢じゃなかったんだ……」
「おう、夢じゃねえぞ。まあオレもこの時代にお前達と会えた事は夢みたいだって思うしわからんでもないが現実だぞ」

ティマに言われたように俺達は朝7時半には起き、朝食と身支度を済ませティマを待っていた。
そして9時丁度になったところで玄関をノックする音が聞こえ、昨日見た幼女姿とまったく変わらないティマが約束通りやってきた。

「なあ、お前が持ってきた朝食はどうなってるんだ? さっき食ったのに温かかったんだが……」
「ああ。ありゃあ箱に保温魔術を掛けておいたんだよ。おかげでホカホカのスープを堪能できただろ?」
「なるほど。温かかったからかスープは特に美味かったよ。作ったやつに伝えておいてくれ」
「おう! そうかそうか美味しかったか……へへ……」

今日の朝は昨日の夜にティマが持ってきた朝食を食べた。
そういえば昨日何が入っているかを確認してなかったなと思いながら箱の蓋を開けたら、二人分の食パンと温かい野菜スープが入っていた。
昨日持ってきてずっと棚の上に置きっぱなしだったのにどうして温かいのかと疑問に思いながらも、俺達はその朝ご飯を食した。
ちなみに味は今言った通りかなり美味しかった。あれだけ大きな屋敷に住んでいるのだし、専用のコックでもいるのだろうか。

「それで今日は村の案内をしてくれるんだよね?」
「ああそうだ。それである程度回った後はそれぞれの職場に行って簡単な仕事内容の説明を受けてもらうつもりだ。ちなみにその間に業者に頼んでこの家の水道を使えるようにしてもらうからな。それとキッチンには薪を使わなくても熱を掛けれるようにルーンが掘ってあるプレートを埋め込むつもりだ。おそらくホーラなら使えるだろうからタイトはそれを見て覚える事。一応緊急用に薪は置いておくが、流石に自分達で割ってくれ」
「やった! 私昨日シャワー浴びれなくて悲しかったんだよね。それに料理もこれですぐ出来るようになるね」

今日は五百年も経って変わってしまった村を案内してもらい、そのまま俺達が就く職場まで連れて行ってくれるようだ。

「わりいなそこまで気が回らなくて。女の子だし身だしなみは綺麗にしたいわな」
「そうそう。ティマさんも女の子になったからわかるんだね!」
「ん? まあ……わからなくもないってとこだな。この通りオレはオスだった頃の感覚がまだ抜け切れてねえもんだからな」
「たしかに口調は柔らかくなったし声も可愛らしくなったけど言い方はほぼそのままだな」
「それ以外にも色々あるけどな。まあ立ちションする癖は200年前ぐらいに完璧に無くなったけどな」

ちょっとした会話を挟みながら、俺達は村を回り始めたのだった。



……………………



「そうだな……まずは商店とか生活に便利な所……と言いたいところだが、それよりもまずは最初にご近所回りだな。最低限両隣りの家の住民ぐらいは知らないと」
「それもそうだな」

ティマと共に玄関を出てまず向かったのは、俺達の家の隣にある家だった。
昔は隣と言えばもうちょっと距離があったのだが、今は人3人分の幅の向こうに家が建っていた。
つまりこの家の主は俺達が知らない人が住んでいるのだろう……というか、五百年も経っていて知っている人が住んでいたらそれはそれで驚きだが。

「おーい。誰かいないかー」
「はーい! いまでまーす!」

家の中から可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。

「そんちょーさんどうしましたかー?」
「やあイース。昨日隣の家に新しい……まあ正確には違うが……この家の隣に新たに住む事になった二人の紹介をしようと思ってな。オレの顔見知りだから案内がてらってとこだ」
「そーですか! はじめまして、わたしはイースです!!」
「私は隣に住んでいるホーラ。こっちはお兄ちゃんのタイト。よろしくねイースちゃん!」

家から出てきた女の子……イースちゃんは、声の通り幼い子で、人間ではなかった。
頭から可愛らしい角、腰から可愛らしい蝙蝠のような翼と尻尾を生やした、サキュバスの女の子だった。

「あらあら、何事かと思えばお隣に越してきた人ですか」
「そういえば昨日お隣から物音が聞こえたね。ティマさんのとこの魔女かと思ってたけど新たな住民か」
「へぇ……人間の兄妹か……」
「あ、どうもです」
「あ、おとーさん、おかーさん、それにおねーちゃん」

イースちゃんに挨拶をしたところで家の奥からぞろぞろと3人のサキュバスが出てきた。
角の形が違ったり身体に毛が生えていたりと若干姿が違うものの、3人ともイースちゃんと顔が似ているので親や姉妹だろう……サキュバスなだけあって全員若い見た目をしている為
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..9]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33