1話 越えた時間と変わった宿敵

「うわっ!!」
「きゃああっ!!」

全身が光に包まれたのと同時に眼が覚めた。
まるで空間そのものが崩壊する夢を見ていたようだ……なんと恐ろしい夢だろうか……

「い、今の夢はいったい……グニャッとなって気持ち悪かったな……」
「え……ホーラもか?」
「え……お兄ちゃんも?」

いや、本当に今のは……夢だったのか?
どうやら妹も同じものを見ていたみたいだし……そもそもどうして俺達はこんな道端で寝ていたというのか。
今この状態からして不可思議な現象に身体が付いていけずに気絶していたというほうがしっくりくる。
だが……夢でないとしたらいったい何が起きたというのだろうか。
周りの景色そのものが歪み波打ち捻じれる……そんな事が現実に起きるものなのだろうか。

「さっきのはいったい何だったんだ?」
「わからない……けど、転移魔法に近いものは感じたよ」
「転移魔法?でも俺達は別に移動してなんか……」

何かがあったとしてもおそらく魔術の類だろうから、何かわからないか魔術に詳し妹に聞いてみた。
どうやら転移魔法に近いものを感じたらしい……いつも転移魔法で逃げられているのを見ているわけだし、その点は信用出来るだろう。
だが……パッと周りを見渡しても、先程までと同じ場所だろう……と思ったが、ふと違和感を感じた。

「なあ……この木、さっきまでこんなに大きかったか?」
「え……言われてみれば……それに他の木もどこか違うような……というか草や花もこんなに生えてたっけ?それにこのピンクの果実……こんなの見た事ないよ」
「……どうなっているんだ?」

場所は気絶する前と全く変わらないとは思う……近くの崖から見える景色や遠くに見える山などは歪む前と同じようにそこに存在している。
だが、自分達の周りをよく見ると、木の幹が二回りぐらい太くなっている物もあるし、足下も小石が転がっている地面だったはずなのに草花がびっしりと生えている。
しかも雑草に至ってはもう何十年も人の手が入れられていないかのように沢山生えており、ものによっては首辺りまで伸びている。
それどころか見た事のない果実を付けている物まである……ハート形のこれはいったいなんだろうか?

「やっぱりどこかに飛ばされたのか?」
「うーん……それにしては元々居た場所とそっくりすぎるし……植物だけが急成長したとか?」

俺達が居た場所から移動したとは考えにくい……だが、その場から移動してないにしても不自然な点が多い。
これはいったいどういう事だろうか……妹の言う通り植物だけ急成長したとでもいうのだろうか。

「どのみちわからないものはわからないんだ。一旦家に引き返すぞ」
「あ、そっか。家に帰れたら場所までは移動してないって事になるもんね」
「そういう事だ。ただ道中何が出るかわからん。これがあのバフォメット達の仕業だって事も充分あり得る。だとしたら奴等は今も俺達を狙って隠れているかもしれん。気を引き締めていくぞ」

いずれにせよここで立ち止まっていても何も解決しない。
もし転移されていないとすれば、俺達が来た道を戻れば自分達の家に辿り着けるはず……そう考えた俺達は来た道らしきものを戻り始めようとした。

「それじゃあ戻ろ……」

「……空間の歪みはここら辺で感知したはずです。どうですか?」
「ああ……たしかに何か感じるな……それに何者かの気配もする……ウェーラ、気を引き締めるんだ」
「はい……!」

「……ん?」

一歩踏み出したところで……生い茂る草むらの向こう側から、小さな女の子の二人組の声が聞こえてきた。
なにやら歪みがどうのと言っている気がするが……何か今の状況に関係しているのだろうか。

「誰か来るよお兄ちゃん……」
「ああ……」

なんであれ魔物が出る山道にただの幼い女の子が二人でいるとは思えない。
声だけが幼い女の子みたいなだけかもしれない……それこそ、女の子の声を出して人をだまし喰らう魔物の可能性だってないわけじゃない。
緊張感を保ったまま、掻き分けられている草むらをジッと見る……

「貴様らいったい何も……え?」
「あ……え、うそ……!?」

そして、草むらから出てきた二人組は……声の通り幼い女の子であった。

「……ん?」
「えっと……魔物?」

ただ、その姿は二人で異なっており、片方に至っては人間ではなかった。

片方は黒いローブと黒い三角帽子を深々と被った赤茶色の髪と紫の瞳を持った女の子で、その手には山羊の頭蓋をあしらった杖を手にしている……そう、まるで魔女のように。
そしてもう片方は……恥部以外隠れていないような装飾しか身に付けていないという点を除いても、頭から生える太い角や獣の耳、またこげ茶色の毛皮と鋭い爪に覆われた手や腰から生えた同じ色の尻尾などが人外であると主張していた。

「魔
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