旅57 膨らんでいく想い

「う〜ん……結局お姉さんの情報は無かったね……」
「ああ……何件かあったはあったけど、ロレンさんやトリーさん、それにユーリムさんの事とかもう会った人のものばかりだったな」
「ざんねん……」

現在20時。
あのセレンちゃん達と別れた小屋を出発して大体1週間、私達はロレンさんに教えてもらった親魔物領に今朝には到着していた。

「まあ、とりあえずどこかの親魔物領をまた巡っていればいいか」
「そうだね。いろんな場所を旅していればまたどこかで出会えると思うよ。ミリアさんやレミィナさんなんかは本当に偶然会ったわけだし、可能性はあるよ」
「だね〜。ちょっと前に3人もお姉ちゃんに会ったから忘れそうだったけど、お姉ちゃんっていろんな場所にいるけどそんなにいっぱいいるわけじゃないから簡単には見つからないんだよね」

そこから食料を買ったり面白そうなお店を回ったりしながらアメリちゃんのお姉さんの情報を聞いて回っていたのだが……知らないと言われたり、教えてもらっても既に知っているお姉さんの情報だったりなどして有力な情報は一切得られなかった。
まあここらで知っている人が居ればまずユーリムさんが知ってそうだし、元からそう簡単に手に入るとは思っていなかったのでそう落ち込んではいないけどね。

「さて、とりあえずキャンプ場とかいうところに向かおうか」
「そうだな。しっかしまさかどこの宿も満員だとはな〜」
「仕方ないよ。今ちょうど国全体のおまつりで他の土地からいっぱいお客さんがきてるらしいもん」

まあそんな感じでいろんな場所を回っているうちにすっかり遅くなってしまったので、私達はこの街にある大きなキャンプ場を目指して歩いていた。
何故街にいるのに宿ではなくキャンプ場なんか目指しているのかというと……アメリちゃんが言う通り、今この街が所属している国では大規模な祭りが開催されており、各地から人が押し寄せておりどこも宿が空いていなかったからだ。
いくつも宿を回った後、最後に訪れた宿の宿主さんにキャンプ場の場所を教えてもらったので、今現在向かっているところなのである。
そのキャンプ場には共用キッチンやらトイレ、更にはシャワールームなどがあるそうだが……使うテントがアメリちゃんの『テント』なのでこれらのメリットは一切無い。
でも、他にも遊具や大きな川などがあり、更には街中で一番星が綺麗に見える場所でついでにそう遠くない場所に祭りの屋台なども今の時期は並んでいるらしいので、行って損はないという事で今日はそこで寝る事にしたのだった。
それにしても、この3人だけでの旅というのは久しぶりだ……今までもずっと私とアメリちゃん、そしてユウロの3人はずっと一緒に旅していたけど、プロメやツバキと一緒になってからは誰かしら他にも一緒に旅していた人がいたからだ。
だからこそ、余計にユウロの事を意識してしまう……アメリちゃんがいるからこそ、まだ私はユウロを襲っていないと言っても過言ではないかもしれない。

「えっと……地図からすると……お、ここか」
「ここも既に結構テントが張ってあるね。とりあえず空いてるところに『テント』を立てて、あそこにみえる屋台で何か買おうか」

しばらく歩いているうちに目的の場所に辿り着いた。
たしかに近くには大きくて流れが緩やかな川が流れているし、空を見上げてみると満天の星空が広がっている。
ちょっと離れた場所には灯りの下にいくつかの屋台が並んでいるのが見える……夕飯がまだな私達は、『テント』を立てた後にその屋台で適当に各々が食べたい物を買った。

「お星さまきれいだね〜」
「そうだな。そういえばあと数分したら花火も打ち上がるみたいだぜ?」
「花火?」
「あーっと……ジパング地方の伝統芸みたいなもんだ。夜空に煌めく火の花ってところかな……説明難しいや。時期的にジパングにいる間じゃ見れなかったけど、まさかここで見れるとはな」

『テント』の中に入ってしまうと折角の夜空がほとんど見れなくなってしまうので、私達は『テント』の前にシートを敷いて外で食べる事にした。
私はジパングからはるばる来ていると言った刑部狸(当たり前ではあるがカリンの親戚ではないらしい)が経営していた屋台で購入したお好み焼きなるものを食べながら、満天の夜空を堪能していた。

「……」
「ん?どうしたサマリ?俺の食べてる贅沢バーガーが気になるのか?」
「え、あ、いや、そうでもないけど……ってよく見ると本当に贅沢ねそれ……」
「ああ。肉もパンもトマトもレタスもチーズもいっぱい挟まっててボリューム満点だよ。ポテトフライとフライドチキンも買ったけど正直食べきれねえ気がする……」
「じゃあユウロお兄ちゃん、ポテトちょっとちょうだい!」
「いいけど、アメリちゃんも結構あるよな……食べきれるのか?」
「うん!おい
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