「貴様……その堕天使について行ったらどうなるかわかっているだろうな?」
「セニック……ワタシと一緒にいて下さい!もうあなたがいないだなんて考えたくありません!!」
現在……時間なんて見てる余裕が無い。
私達は今、絶体絶命のピンチに追い込まれていた。
「堕天使の手を掴んでみろ……その瞬間から貴様は裏切り者の犯罪者。その腕を斬り落として、魔術でチリも残らず消し去ってやるぞ?」
「ワタシはセニックの事が好きなのです!!ワタシのわがままだってわかってますが……あなた無しでは生きていけないのです!!」
今、私達は大勢の教団兵に囲まれている。
その数は少なくとも100人以上はいるだろう……下手すれば200人はいる。たった4人の私達にいったい何が出来ると言うのだろうか。
そもそも私はたいした戦力にもならないし、アメリちゃんでもこれだけの人数は例のペンダントがあっても苦しいものがある。
「さあ、どうするのだ勇者よ?」
「セニック……ワタシと来てくれますよね?」
ただ、今この中で一番苦しみ、どうすればいいかわからないでいるのは私達でも、ましてや教団の人達でもないだろう。
「さあさあっ!!何を悩んでいる!?貴様の掲げている聖剣はなまくらなのか?」
「セニック……」
「……くそ……オレはどうすれば……」
私達……というかセレンちゃんと教団兵の隊長らしき人物に挟まれ、一人苦しく悩んでいる人物……勇者セニックだ。
セレンちゃんへの個人的な想いと、勇者としての立場が板挟みになり、どうしたらいいのかわからずずっと立ちすくんでいる。
おそらくセニックが答えを出した瞬間、今の睨み合いの状態から場は動き始めるだろう……ただ、どう転んでも私達が無事に済む確率は低そうだが。
そもそも、どうしてこんな状況になっているのかと言うと……話は数時間前まで遡る事になる。
「この先がいよいよペンタティアか……人化の術やローブの準備は出来てるか?」
「アメリは完璧だよ!」
「私も大丈夫……だけど、セレンちゃんの時みたいにバレないか心配だなぁ……」
「そういえばそんな事もありましたね。あのときのサマリは顔に大火傷を負ってるとか咄嗟の嘘を流れるように付いてましたね。今思えばよくあそこまで嘘を言えましたね」
「いやあ……あの時はバレないように必死だったからね」
ロキリアから出発した私達は、いよいよペンタティアに向かい始めていた。
ペンタティアは反魔物領……そのままの格好で私達が近付いたらマズいなんてものでは済まない……最悪捕まって殺されるだろう。
なので、何時ぞやに反魔物領の近くを通った時にした対策……アメリちゃんは人化の術を使うのと、使えない私はローブを被って角や尻尾など全身を隠しながら突き進む事になった。
「セレンちゃんも人化の術使えるんだね」
「一応ですね。ワタシは教会に勤めていたので問題は無いのですが、エンジェルによっては正体を隠して人に近付き、祝福を与えるに相応しい人か調査するなんて事もありますからね」
「へぇ〜……やっぱり私も覚えたほうがいいのかな……でも魔術なんてサッパリわからないんだよね……」
それにしても、アメリちゃんもセレンちゃんも人化の術を使っており、ユウロは正真正銘人間なので、私だけがローブを被っているので逆に目立つ気はしないでもない。
でも魔術の基礎すらわからない私ではすぐに出来るようになる気がしない……なのでこうするしかないのだ。
「しっかし二人とも人間には無い余分なパーツが付いてないと逆に違和感があるな……特に今回は念には念を入れてるのかアメリちゃんは髪や瞳の色も変えてるしさ」
「だってそのままだとセレンお姉ちゃんの時みたいに簡単にリリムってばれちゃうかもしれないもん……アメリも鏡見てん〜って思うけどね」
「まあ確かに角と翼と尻尾を隠しただけのあの姿は一目見ただけで怪しいと思いましたからね。あまり白髪で紅い瞳の人間はいませんし。まあ今回は魔力もきちんと押さえてあるので、最初からアメリが魔物だってわかってる相手さえいなければ大丈夫でしょう」
ユウロの言う通り、白い翼と光の輪が無いセレンちゃんや翼も無く白い髪も茶色になってるアメリちゃんなど人外パーツが無い二人は見慣れない。
特にアメリちゃんは顔は全く変わってないはずなのに特徴的な部分がまるまる変わっているから別人に見える程だ。
「さてと、無駄口はそれぐらいにして……そろそろ向かうか」
「そうですね……セニックがすぐに見つかるといいのですが……」
そんな感じにきちんと魔物の姿を誤魔化せているか確認した後、私達は魔界との境目から出て、ペンタティアへ近付き始めたのだった。
「ところでさ、ペンタティアって何か名物とかあるの?」
「まあ色々とありますけど……あまり観光はお勧め
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