「さて……諸君らはこれから忌まわしき魔界の一つ『ロキリア』に、俺様の指揮の下で攻め込んでもらう事になる。弱音を吐く者や俺様の言う事を聞けない奴は即座に見捨てるが、俺様に絶対服従する奴はきっちりと生還させてやる。いいな?」
偉そうにオレ達部隊の人間にそう語りかける隊長のニトロ。
いや……実際隊長なのだからそれなりに偉い事に間違いは無いのだが……こう自分の言う事を少しでも聞かない奴は言葉通りすぐ見捨てるところが皆から嫌われている。
自分が一番な野郎なうえその他の人間は皆自分の駒としか思っちゃいないので好いてるやつはほぼいないだろう……事実オレも嫌いだ。
できれば一生関わり合いたくなかった人物なのだが……今回はそうは言えない。
「ちなみに今回はこのパートナーを魔物化させたという前科持ちの勇者様が俺様の部隊に入って下さるそうだ。しかもなんと囮役をしてくれるそうだ。囮役の奴らよ喜べ、勇者様が居れば生きながらえる確率が増えるぞ」
「な……!?」
「おや?文句があるんですかな前科持ちの勇者様?」
「……いえ、ありません……」
俺はパートナーのセレンを魔物化させてしまった罰で、こいつの部隊に入って囮役として動く事になってしまった。
囮と言えば、本隊が魔界中枢部に攻め入る為に多くの魔物を引き付けておく役割だ……無事に帰って来られる確率はかなり低い。
もちろん全く帰って来られないわけではない……悔しいが、事実こいつの言う通りに動いていれば帰還できる確率も高いという実績があるのだ。
どう考えてもオレを見下しているうえ馬鹿にしてるし、さらには気にいってはいない感じが満載なのでそのまま見捨てられる可能性もあるが……今のオレにはこいつが言う通り文句を言う資格が無く囮を引き受けるしかないのだ。
「さて、この勇者様と他数名が囮として働いてくれている間、俺様達は更に3部隊に分かれて3方から魔界に乗り込む。事前情報ではさほど強力な魔物はいないという情報を得ているが、どうやら数がこの部隊の人数の何倍も居るらしい。相手がワーシープだのマンドラゴラだの雑魚しか居ないからと気を抜く奴はあっという間に手篭めにされるから注意しろ。場合によっては強力な魔物も居る場合があるが……油断して捕えられた奴は容赦なく切り捨てるが文句は無いな?」
『はっ!』
「それと、俺様は第1部隊を率いるが……場合によっては貴様らを盾に使う事もあるだろう。だがそれは貴様らよりも優秀な俺様を生きて帰還させるためだ。その事についても異論は無いよな雑魚共?」
『イエッサー!!』
逆らっても百害あって一利なし……それがわかっているため、全員が理不尽な事を言われようが従うしかない。
まあ……今から向かう魔界、ロキリアに凶悪な種族は居ないと聞く……明緑魔界である事から獣人系や植物系ばかりだと思われるし、獣人系でもワーウルフ程度ならばたいした事は無い。
なのでそう簡単に盾にされる事も無いだろう……まあ囮のオレには関係のない話だが。
「では行くぞ貴様ら!!俺様の後に続け!!」
『はっ!!』
「合図をしたら部隊ごとに別れてもらう!それまでは団体行動を一切乱すな!!」
『イエッサー!!』
そうこうしているうちに、オレ達は侵攻を始めた。
目指すは明緑魔界ロキリア。作戦の成功を祈りながら、オレ達は黙々と行進を始めた。
「……」
そんな中でも、オレは無事かもしれないセレンの事で頭がいっぱいだった。
生きているのであれば今頃一体どこにいて、何をしているのだろうか……元気に毎日を過ごしているのだろうか……
間違ってもオレに会いに来る事は無いようにも祈りながら、オレはどこか重たい足を動かしたのだった……
=======[サマリ視点]=======
「この街を出ればいよいよペンタティアか……」
「はい……いよいよセニックがいる街になります……」
現在13時。
私達はセニックに会いたいセレンちゃんの願いで、巨大な反魔物国家であるペンタティアを目指して旅をしていた。
そして、とうとうその近くにある親魔物領『ロキリア』に辿り着いたのであった。
「どうする?すぐ向かう?」
「う〜ん……そうしたい気持ちもありますが……急ぐ必要も無いと思うのでとりあえずいろいろ準備しながらこの街を観光しようと思います」
「うんうん!折角来たんだからアメリいろいろ観たい!!」
「そういう事です。隣にこの街があったのは知ってましたが、魔界なので憎む事はあっても観光なんてした事無いですからね。魔物になった今なら関係無いですし、この機会に色々と回りたいのです」
早速ペンタティアまで向かうのかと思いきや、どうやらこの街を観光していくつもりらしい。
たしかにこの街は緑豊かで、至るところに広い草原があって凄くのどかな街だ……
「……ん?こ
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