クロスボール邸にて振る舞われた晩餐は、とっても美味しかった。
ふわふわの白パンやサーモンのマリネも絶品だったけど、シチューが格別だった。
僕はシチューが大好きだ。でも、クリームシチューというのは初めて食べたよ。シェーペール産の羊肉や旬のお野菜が柔らかく煮込まれ舌触りも良かったけれど、味も香りも今まで食べた物と一線を画していた。なんでも〈ホルスタウロス〉という魔物のお乳から作られたクリームが入っていたみたい。とにかく風味豊かで、とりわけ味が濃厚だったんだ! ほっぺたが落っこちそうになったよ。
それから、食後にコーヒーという飲み物も頂いた。大陸の南方にしか育たない、特別な木の実から抽出するんだって。甘い香りに誘われて一口飲んだら、とっても苦くてビックリだった。クロシュさんは笑いながらミルクと蜂蜜を入れてくれて……。そうしたら僕でも飲めたよ。
サーラとアシュリーはストレートで飲んでいたけれど。凄いなぁ。
食後、アシュリーは前もっての言葉通り、二品の件で管理人さんとなった二人の元へ行った。
僕とサーラは、クロシュさんの『我が家自慢の風呂をお楽しみ下さい』という言葉に従い、胸を弾ませ入浴場へと向かったのだった。
「わぁ……!」
いつかのような、満天の星空の下。
館の屋上に広がるのは、壁も天井もなく、眼下に夜の森を臨む、泳げそうなくらい大きなお風呂だった。
露天風呂、って言うんだって。
湯気が風に流れ、素肌を撫でていく。
その温かなヴェールを透かし見れば、月も木々も、霧の中にあるみたいで。
なんだか夢の世界だ。ふわふわする。
奇妙な興奮が胸にある。
こういった露天風呂というのも大きな原因の一つだけど、そもそも、一人でお風呂に入ること自体が生まれて初めてのことだったんだ。
王宮にいた頃は、側仕えの侍女達が身の回りの世話をしてくれた。お風呂の介添えもその一つ。
王宮を出てからは……その……サーラやアシュリーが常に一緒で、何くれとなく助けてくれるから。それはとっても嬉しくて、贅沢なほどありがたいことなんだけれど。
実は、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、不満だったんだ。
けれど、今はこうして僕一人。
脱衣所の前で、サーラとは別れた。
今は、唯一視界を遮る塀の向こう側。女湯の方に――。
キィ……。
背後で微かな音がした。
振り向けば、僕が通ってきた回転扉――とっても珍しいよね。室内の暖気が外に漏れにくいんだって――の前に、バスタオル一枚のサーラが立っていた。
「え……?」
一瞬頭が働かなかったけど、慌てて後ろを向く。
女性の素肌を見るなんて良くないことだし、それに……今は、僕も見せられないから。
「サーラ、こっちは男湯だよ? 女湯はあっち」
指をさして教えてあげる。
「うん、知ってる」
サーラはおかしな返事をして――長い足で僕との距離を縮めた。
「ひゃあ?」
後ろから抱きしめられてしまう。
「リーフィ、体を洗うね? いつもみたいに」
耳元で告げられた言葉には、湯気のような熱気がこもっていて。
「き、今日は僕一人で――」
「だめ」
有無を言わさず洗い場へ運ばれてしまった……。
「痛くない?」
「うん」
サーラは自分の手が『硬い』って言うけれど、そんなことはないと思う。むしろ、繊細で、張り付いてくるみたいで、気持ちいい。こうして頭を洗って貰うと、なんだか撫でられてるみたいで、眠くなる……いつもだったら。
「流すね?」
「うん」
お湯が注がれ、白い泡が洗い流される。けれど、茉莉花(ジャスミン)の香りは髪に残り、その芳香を留めてくれる。
「次は体ね」
「えと、お願い」
もう、こうなったサーラを止めるのは無理だ。無駄な抵抗をするよりも、厚意に甘えることにした。
けれど。
「ふわぁ、なにっ?」
梔子(クチナシ)の甘い香りが漂ったかと思ったら、泡まみれの腕が背後から伸び、しなやかな腕の中にすっぽりと包まれてしまう。
むにゅう♪
背に、柔らかく温かな感触。二つの大きなふくらみは、その中心にコロコロした粒を備えていて。
「さ、サーラっ、ここじゃダメ!」
ジェドゥーナチャッハ城にいる時も、そのぅ、こういうことはされたことがある。だから、この先に起こることも分かる。
「だめじゃないの。お風呂では体を洗うものなの。リーフィの体で汚いところなんて一つもないけど、一応、洗って入浴するのが礼儀だから」
「そ、そうだけど。洗い方が!」
ぬるり。
「ひぃんっ?」
サーラの指が僕の股間に伸びて、思わず腰が跳ねた。
「ふふ、やっぱり。おちんちん大きくなってる」
耳元に、熱い吐息。
「今朝、初めてここを訪れた時くらいから、ずぅっとエッチな匂いがしてたもん。ここ、おっきし
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