第三章:壊れ始める日常……!

 凄く淫らな夢を見た。何度も何度も、同棲している可愛い女の子とゴムも付けずにセックスして、射精しまくる夢だった。
 僕は夢見心地のまま、まさか夢精しているのではないかと怖くなる。そんなことになったら、それこそ同棲している女の子に引かれてしまう。しかも今は両親もおらず、二人暮らしなのだ。関係が壊れたらもうどうしようもない。
 そんな事を考えている間に目が覚めた。
 夢精どころか、ベッドの上は精液と愛液でぐしょぐしょだった。
「あー」
 体が少し重い。身を起こそうと手を突くと、柔らかい感触を掴んだ。同棲している魔物の女の子、エンナのおっぱいだった。
 何が起きているのか。いや、何が起きたのか、ようやくはっきりと思い出す。
 昨日学校から帰った後に、自室で自慰にふけるエンナを見つけてしまったのだった。
 そして盛りのついたエンナに迫られるまま、僕はエンナと交わってしまった。いや、交わったなんて生易しいものではない。あれはもう、孕ませる事だけを目的にした獣同士の交尾と言った方が正しい。
 昨夜の自分の感情を思い出し、身体が震え出す。あの時の自分は、まるで自分じゃないみたいだった。
 確かに僕はエンナに惹かれていた。エンナとそういう事をしてみたいとは思っていた。けれど、いくら好きだからってあんなに何度も休む間も無く女の子を犯し抜くなんて普通じゃない。あの時、僕は笑っていた。ただ快楽を求めて、エンナの身体を貪って。笑いながら、本気でエンナを孕ませようとしていた。……もしそうなってしまったら、留学の事も含めてとんでもないことになってしまうというのに。
 あの時の口づけ。甘くて濃いエンナの、あの唾液が原因だろうか。
「ぅん。……」
 エンナの瞼がゆっくりと開いてゆく。僕の姿を認めると、色っぽく歪んだ。
「おはよう。マサル」
「ご、ごめん」
 手をのけようとすると、逆に手首を掴まれて強く押し付けられた。
「いいの。触りたかったんでしょ。おはようのセックス、しよっか」
「ちょ、ちょっと待ってよ。そういうつもりじゃないよ」
「もう。昨日はあんなにしつこいくらいしてくれたのに」
 途端にエンナの身体の感触が蘇ってくる。身体が、熱くなってくる。
「立てなくなっても休ませてくれなくて、四つん這いで犯されて、四つん這いも辛くなってきたら今度はうつぶせのままひたすら腰振ってくるんだもん。初めての交わりであんなに激しくされたら、魔物娘の私だってどうしたらいいか分かんなくなっちゃうよ……」
 やっぱり、昨日の自分はどうかしていたのだと思う。けれど、それをそのまま言うわけにもいかなかった。
 どうかしていたからと言ってあんな行為が許されるはずも無いのだ。それに、エンナとしたいと思っていたのは紛れも無い事実でもある。
 きっと僕は自分の気持ちを上手く制御出来なかったのだ。……多分。
「ご、ごめん。悪かったよ。けど今は、ほら、朝だし、学校の準備もあるし」
「むー。じゃあせめておはようのキス」
 エンナは目を閉じ、顎を少し上げる。
 僕は躊躇ったものの、これで放置するのはあまりにも失礼だと思って、そっと触れる程度のキスをした。
 その瞬間両手と尻尾が伸びてくる。僕は慌てて身を引いた。
 エンナの両腕が空を切り、男をねだる舌がエロティックに伸ばされたまま宙をさまよった。咄嗟に身を引かなかったら、舌を入れて再びアレを飲まされていたかもしれない。
 そうしたらまたあんな風になってしまうのだろうか……。あんな風に、また、エンナと。
 ……いいや、そんなの駄目だ。
「もう。マサルの朴念仁」
「わ、悪いけど先にシャワー浴びるね」
 膨れるエンナに背を向けて、僕は慌てて着替えをひっつかんでシャワールームへ飛び込んだ。


 裸でいるとまた狙われてしまいそうで、僕ははらはらしながら急いでシャワーを浴びた。
 冷たい水に打たれていると、少しずつ頭も体も冴えて来た。
 不思議な事に、シャワーを浴びているうちに体の倦怠感もすぐに消えてしまった。頭の方もしゃっきりとしてくる。
 あれだけ射精したら普通は翌日ぐったりして何も出来なくなりそうなのに、体はすこぶる快調だった。
 まぁ、そんな事はどうでもいい。ちょっと体調が良かろうが悪かろうが、少し経てば元に戻るのだから。
 問題なのはエンナがいつまであんな調子なのかという事と、避妊もせずにたっぷり中出ししてしまったという事だ。
 女の子とセックスしたのなんてもちろん初めてだった。確かに、初めての喜びも気持ち良さも、思っていたよりもずっと良かった。けれど、その対価もまた思っていた以上に大きなものになってしまった。
 魔物娘と人間との間には、それこそ種族の違いもあるので子供は出来にくいとは聞いてはいる。だが、出来にくいだけで出来ないわけでは無いのだ。

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