両親が居なくなったとしても、学校は普段通りに行われる。けれど、両親を見送ったその日は流石に一切授業に集中することが出来なかった。
これから先の不安というものももちろんあったが、しかしそれ以上に差し迫った問題として、今日の夕飯をどうしたらいいのかという問題があった。
自慢ではないが、僕は料理など調理実習くらいでしかやったことがない。いきなり料理をしろと言われても、どうしていいのか分からないのだ。
一人ならばコンビニ弁当で済ませてもいいのだが、留学に来ているエンナにそんなものを食べさせるのも申し訳ない。
「……今晩は、チャーハンか焼きそばでも作るかなぁ」
「え? 何の話?」
独り言が、隣の犬飼にまで聞こえてしまっていた。
怪訝な顔をされる前に、僕は慌てて取り繕う。
「いや、エンナにこっちの世界の代表的な中華料理を教えてほしいって言われてさ」
「焼きそばは中華じゃないと思うけど。あと、チャーハンも代表的とは言えないんじゃないかな」
「そうだね。もうちょっと調べてみるよ」
「それはともかく、もうすぐ当てられそうだよ。ここ、見ておいた方がいいよ」
犬飼の言った通り、僕はそのあとすぐに指名された。当てられた場所も犬飼の予想通りだった。
僕は犬飼に礼を言いながら、今晩は焼きそばにしようと心に決めた。
焼きそば自体は肉と野菜を炒めておいて、麺を入れて粉末ソースと混ぜ合わせればそれで完成だ。
けれど夕食が一品だけというのも少し寂しい。せめてサラダと汁物を加えよう。とメニューを増やしてゆくと、夕食の用意も結構大変だった。
「お風呂沸いたから、先もらっちゃうね」
「あぁ、わかった」
僕は野菜を切ったり鍋の火加減を見ながら、風呂場に向かうエンナに生返事を返す。
正直、料理にいっぱいいっぱいで他の事を気にしている余裕が無かった。
そしてしばらくの格闘の末、何とか二人分の夕食は完成した。
「ふぅ……」
台所の椅子に座ってぼーっと放心していると、浴室の扉が開く音が聞こえた。
エンナも風呂から上がって、夕食にちょうどいいだろう。
パタパタとスリッパで歩く音がして、風呂場からエンナが出てきた。僕は何の気なしにその姿を見て、掛けようとしていた言葉を思わず飲み込んだ。
エンナはバスタオルしかその身に纏っていなかった。そのバスタオルも所々はだけて、胸元や太ももなどがこぼれ落ちそうになっていた。
眩しいくらいに白い肌が目に焼き付く。柔らかそうなおっぱいが。肉付きのいい太ももが、嫌でも視界に入ってくる。そして一度視界に入ると、どうしても目を離せなくなってしまう。
「えん、な? その、格好は?」
「え、えへへ。着替え持って入るの忘れちゃって」
エンナは顔を真っ赤にしてはにかむ。そして僕に背を向けて、慌てたように自室へと戻って行った。
形のいいお尻が揺れて、思わず追いかけたくなってしまった。
立ち上がりかけている自分に気が付き、僕は頭を振った。追いかけてどうするつもりなのだ、僕は。
頭を冷やすべく、コップに水を汲んで一気に飲み干した。
「……けど」
あの時のエンナの顔。恥ずかしがっていたというよりは、なんだか……。
「マサルー。着替えたから、ご飯にしよう!」
「あ、ああ。すぐ準備する」
あの時のエンナの顔、まさに企みが成功したかのようないやらしい物に見えた気がしたのだが、……きっと考え過ぎだろう。
僕はそう結論づけると、コップを片付けて料理を運ぶ準備に戻った。
僕の作った料理は、正直言ってあまり美味しいと呼べるものでは無かったと思う。焼きそばの味付けは少し濃すぎたし、野菜も炒める時間が少なかったのか、ちょっと芯が残っているようだった。
汁物は逆に味が薄すぎたし、サラダの盛り付けも切った野菜を並べただけのような粗末なものだった。
それでも、エンナは笑顔で美味しいと言ってくれた。
お世辞なんていいよと言ったけれど、エンナは僕が作ったものが不味いわけがないなどと、なんだかこっちが恥ずかしくなってしまうようなことを言ってくれた。
宿題を広げた勉強机の前で、僕はぼぅっとエンナの事を考える。
エンナは可愛い。テレビのアイドルやモデルとはまた違った魅力がある。彼女の魅力は、綺麗な外国人に感じるものに近い。通りを歩いているときに極たまに見かける、すごい美人の外国人。顔つきは日本人離れしているのだけど、思わず振り返ってしまう魅力的な顔立ちの女性。そんな感じだ。
肉体的な発育も、クラスの女子達とは比べ物にならないくらいにスタイル抜群だ。洋服や下着で誤魔化しているわけではないという事は、さっきの事故でも確認済みだ。
けど、エンナが可愛いのは外見ばかりではない。素直に僕の事を受け入れてくれるし、褒めてくれる。あんな女の子、初
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