遺跡のケプリ達全員による、歓迎の儀。
僕を王として歓迎し、僕に王の力を宿す為でもあるその儀式は、王の間では無く大広間で行われる事になった。
王の間で襤褸を脱がされ、上質ではあるがほとんど身体を隠さないような薄衣一枚に着替えさせられた僕は、そのままろくに心の準備も出来ないまま大広間まで案内された。
そして、その大広間のあまりに現実離れした光景に、僕は儀式が始まる前から圧倒され切ってしまった。
天井から吊り下げられている、玻璃と黄金で煌びやかに輝く無数のシャンデリア。
桃色の火を灯したそれが、屋敷の敷地くらいはありそうな大広間を照らし出していた。壁際に灯った篝火の紫色の炎も相まって、広間全体が高貴に、少し淫靡に浮かび上がっている。
床には毛足の長い、肌触りのいい黒色の絨毯が敷かれている。
闇夜の水面のように艶のある絨毯は、その上に立つ者達の色を妖しく浮かび上がらせていた。
広間のどこを見回しても褐色のなまめかしい素肌が目に入ってくる。
柔らかな曲線を描く女の身体。金色の昆虫の四肢と相まって、その肌はより生々しく映える。そして異形の四肢は、少し動くたびに妖しくぬめるように桃色の灯りを照り返し、倒錯的な美しさで僕の目を引いてくる。
二十を超えるケプリ達は、皆誰一人として衣服を纏っては居なかった。ふくよかな者、引き締まった者、成熟している者、まだ幼い体つきの者。ケプリごとに個性も様々なようだったが、どのケプリも可愛らしく、また美しかった。
広間中から向けられるケプリ達の視線。それぞれ、期待に満ちていたり、不安に揺れていたり、嗜虐心を抑えていたり、好奇心で溢れていたりと様々だったが、どの視線もある種の熱を帯びているのだけは共通していた。
彼女達が傍らに侍らせている、抱えようも無い程に膨れ上がった魔力球は、彼女達の期待の大きさそのもののようにさえ思える。
僕は裸に薄衣一枚というほとんど裸同然の格好で豪奢な金の椅子に座らされ、そんなこの世のものとも思えぬ楽園のような光景に目を奪われ続けていた。
見ているだけでも下半身が反応してしまいそうだった。肌に感じる熱気や絡み付いてくる視線に体がざわついて、欲情だけが先走って理性が飛んでしまいそうだった。
僕は大きく深呼吸しながら、歓迎の儀が始まってしまう前に自分の中で確認する。
上手くすれば彼女達の力によって僕はファラオと同じくらいの力を持つような王になれる。そうなれば血を流す事も無く、圧倒的な力で街を取り返せる。
そうなれば一番だ。どういう手段でかは分からないが、とにかく教団の暴力からみんなを守れる。
ただ、王になれなかったとしたら。
アフマルはその可能性は口にしなかったが、もし間に合わなかったら。……その時は潔く身を捧げようと思う。
そうすれば奴隷達の処分は少なくとも今すぐには行われないだろうし、ケプリ達の事もばれずに済む。彼女達には酷な事をしてしまうが、戦って多くの血が流れるよりはましなはずだ。
……もし彼女達の誰かが僕の子を宿したら。欲深い考えではあるが、その子に王になって欲しいと願う。
「さぁ、アミル様」
ケプリ達の先頭に立ち、長姉であるアフマルが僕に手を差し延ばしてくる。一糸まとわぬアフマルの肉体はどこをとっても均整が取れていて美しく、女神像と見間違えたのも仕方が無い事に思えた。
「準備が整いました。お召し物を脱いで、こちらへ」
王の間での勝気さは消え、その表情と佇まいに妖艶さを滲ませたアフマルが僕を誘う。
僕は椅子から立ち上がると、衣を脱いで椅子に掛け、彼女達に向かって歩き始める。
部屋の中は快適な温度で、裸でも寒くは無かった。しかし熱くも無いはずなのに、なぜか身体が汗ばんでしまう。
歩くごとに視界が狭まってきて、ケプリ達の姿が何重にも霞んでくる。
歩いているような実感も遠ざかり、身体が重たいような感覚と、ふわふわと浮き上がるような感覚が混ざり合って、ちゃんと歩けている心地がしない。
「これより私達ケプリは、この遺跡に新たなる王であるアミル様を迎えます。皆、心してアミル様を悦ばせ、楽しませるように。
アミル様も心置きなく私達の歓待をお楽しみください」
「その、あ、ありがとう。……いや、ありがたく君たちのもてなしを楽しませてもらいます」
アフマルが近づいてきて、耳元に口を寄せてくる。
「そんなに緊張して硬くならないでよアミル様。硬くするのはまたぐらだけでいい。あとは楽にして、アミル様の好きにしていいんだ」
「で、でも、こんなの初めてで、儀式なんてのも」
小さな笑いが耳たぶをくすぐる。
「歓迎の儀なんて言っても、形だけのものさ。遠慮しなくていいんだ。みんなあんたに楽しんでもらうためにここに居るんだから」
しかしそうは言っても緊
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