何も無い部屋に、少女が一人佇んでいた。
むき出しの地面の床に脚を投げ出し、昏い瞳で小さな天窓を見上げながら、何をするでもなく朽ちかけた土壁にその背を預けていた。
四方は壁に囲われ、唯一外と繋がっている鉄扉は固く重かった。鍵は付いていなかったが、非力な少女の細腕では僅かに動かすことも叶わないだろう。それも、少女が動くことが出来ればの話だった。
少女の脚は地面に繋がれていた。そして繋がれているのは、何も目に見えているものだけでは無かった。
少女は裸だった。人間らしい衣服を着ることを許されず、身体のあちこちが土や老廃物で汚れていた。
その身にただ一つ、頭に添え物のように生花が飾られていたが、長い間そのままにされていたのか既に萎れかけている。肌も土気色をしており、人間というよりもむしろ植物という言葉が似合うようだった。
部屋に満ちる淀んだ空気は揺らぐこともなく、細い呼吸音に合わせて少女の僅かに膨らみかけた胸が上下する以外、全てのものが静止していた。
そんな部屋の空気が僅かに震えるのを感じて、少女はびくりと身をすくませる。
遠くから錠が外れる音が響いてくる。続いて、錆びた鉄が軋みを上げる音。
耐えることも逃げることもままならない、ただ諦めて受け入れるしかない、快楽に満ちた陵辱の始まりを告げる音が。
近づいてくる足音から、少女は彼の機嫌を察っしてほっとする。これならば、今日はまだ酷いことにはならないかもしれない、と。
扉の前で立ち止まる。
少女は、いつの間にか自分の息が上がっていたことに気が付く。心臓も壊れかけたおもちゃのようになっていた。
少女は深呼吸し、気持ちを落ち着ける。これから何をされるかは分かっている。分かっているのならば、何だって受け入れられる。
これまで、いつだってそうしてきたように。
ドアノブが回り、ゆっくりと重たい鉄の扉が開いていく。
のっそりと大柄な男が顔を覗かせた。髪は金色に染められ短く刈り込まれ、目つきは鋭く、欲望の光でギラギラと輝いていた。
咥えた煙草から煙が揺れる。その匂いは、明らかに普通のそれでは無かった。
「おとなしくしていたのか。いい子だ」
少女は怯えるような視線を男に向ける。
男の身体は全身が鍛え上げられており、誰の目から見ても筋肉質なのが見て取れた。褐色の肌には、入れ墨が幾つも彫られていた。
肉体を誇示しようとするかのように上着は纏っておらず、下半身も衣服が筋肉に押し上げられて今にも裂けてしまいそうな程だった。
唯一、外の世界からこの部屋の中に入ってくる男。あらゆる手練手管を用いて少女を縛り、弄ぶ彼女の主人。少女の所有者と言ってはばからない程、男は少女の全てを支配していた。
森の奥で不用意に出会ってしまったときから二人の関係は始まった。
その美しく可憐な姿を目にし、声を聞くなり、男は獣のように襲いかかり、少女を自分のものにした。
人気のない森深く、少女の叫び声は誰にも届かず、ただ男を喜ばせるだけだった。
男は気の済むまで少女を貪り、そしてそれだけでは飽き足らずこの部屋に連れ帰って少女を飼育し始めたのだった。
担いでいた荷物を下ろし、男は少女の前に仁王立ちになる。
「待ちきれず一人で始めているかと思ったが、何だ、ずっと俺のことを待っていたのか」
少女はかぁっと顔を紅潮させ、顔を背ける。
「馬鹿にしないで。一人でなんて、するわけ無いでしょう。……あなたにされるんじゃなきゃ、誰があんなこと」
声を震わせる少女に、男は顔を近づけて笑う。
「だが、実際お前のほうが楽しんでいるんだろう? ん?」
少女はそれには答えず、意を決して男をまっすぐ見上げる。
「……私の身体をオモチャみたいに扱って、あまつさえ売り物にしているくせに」
男の瞳の奥に鈍い光が揺らめく、その目が合った瞬間、少女の細い体が震えだす。
男は、そんな少女の肩を力強く掴んだ。
「そうだな。今日もたっぷり楽しませてもらおうか」
男の身体から漂う強い煙草の匂いに、少女は眉を寄せた。
男は大きな布を広げると、荷物の中からさらに幾つかの道具を取り出し、布の上に手際よく並べていく。
「今日はそんなに珍しい道具は無いぞ。まぁ、お前から希望があれば何だって用意するがな。くくく」
「へ、変なこと言わないでよ。私を何だと思っているの」
「そうか? 同業者から聞いたが、お前のお友達は、みんな色んな道具を使って楽しんでいるらしいぜ」
好色そうな笑みを浮かべ、男は少女のつま先から頭の先まで舐めるように眺める。
少女は居心地の悪さを感じつつも、何も隠そうとはしなかった。これまで何度となく辱められてきていた。今更隠そうという気にもなれなかった。
男は手早く少女の脚を地面から開放すると、用意していた背
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