色気が出ないなら出ないなりにやり方は有る

春になった田舎のキャベツ畑。
今日も今日とてキャベツ農家の伽別 太郎は
キャベツの手入れに勤しんでいた。

「ぱーたぱーた」

空を芋虫娘だった蝶娘が飛んでいる。
彼女は繭から出ると綺麗な蝶々になったのだった。

「ぱーたぱーた」
「鬱陶しいな・・・何だよ」
「(´・ω・`)ショボーン」

がっくりと項垂れる蝶々娘。

「???」
「おーい、 太郎ー」
「あ、 じさまー」

長老がやって来た。

「冬の間見なかったが大丈夫か?」
「こいつが羽化するまで一緒に繭に閉じ込められてたので・・・」
「おじーちゃん、 どーにかしてー」
「んー?」

泣きつく蝶々娘。

「太郎、 この娘いじめたのか?」
「いやいや、 そんな事は無いぞ? 毎日三食食わせてる」
「そうじゃなくて進展が無いのー」
「進展ねぇ・・・」
「むぎゅーって抱っこしたりしても全然駄目なのー」
「ふむ・・・つまりエロ関係と言う事か」
「エロ・・・? 蝶々にエロ・・・?」

太郎は蝶々に欲情しない人間なのだ。
魔物娘を見ても『美人だけど○○じゃん』で済む。 鉄壁!!

「ふむ・・・まぁワシの所で茶でも飲んで行くか?」
「うにゅー・・・」

とぼとぼと歩く蝶々娘。
見送る太郎。





長老の家に着くと蝶々娘は仏壇に手を合わせた。
他人の家に着いたら仏壇に手を合わせる。
太郎から教わった常識である。

「うむ、 まずはだな、 お前は寿命は如何なんだ?」
「じゅみょー? さぁ・・・?」
「そんなに直ぐ死ぬ生き物でも無いだろう」
「( ・´ー・`)」
「どんな顔だ、 兎も角男女関係って言うのは焦る物ではない
もっとじっくり時間をかけて進めるべきだ」
「時間をかけて?」
「そうだな・・・塩キャベツでは無く
ザワークラウトの様な感じだ」
「???」

食べ物ならば分かり易いと言ってみたが
逆に意味が通じていない様だ。

「そうだな・・・塩キャベツは美味しいけど
漬物も美味しいよね、 って事だ
ゆっくりでも良いじゃないか」
「でも不安だなぁ・・・他の虫が寄って来ないか心配・・・」
「そうか・・・じゃあ畑仕事とか色々教えてやるよぉ」
「働きたくないよぉ」
「そんなお前にはこれだ」

長老が取り出したのは銀色の奴である。

「ビールじゃい!!」
「お酒ー?」
「働いた後のビールは旨い!!」
「ほんとぉ?(無邪気)」
「ほんとほんと、 長老嘘吐かない」
「ふーん・・・・・」




その後
季節はすっかり移り替わり収穫の季節になりました。

「食べきれない分は保存食にしようね」

麦わら帽子を被りながらキャベツの収穫を手伝う蝶々娘。

「おう、 そうだな」

畑仕事を長老から教わり彼女と共に畑を育てた太郎。
「何時結婚するの?」そう聞かれる事も少なくない。

「そう言えばお前って魔物なのか?」

最近魔物が認知され始めて来たので
魔物じゃないかと気が付いた太郎。

「そうだよー」
「そうか・・・じゃあお前の住民票を出しに行かないとな」
「じゅーみんひょー?」
「そう、 お前がここに住んでますよって言う証明だな」
「めんどくさいよー」
「面倒でもやらなくちゃ駄目だ
あとそれからお前の名前とかも聞かなくちゃ」
「なまえー? 蝶々娘で良くない?」
「駄目だ、 ちゃんと名前を決めないと」
「うーん・・・そうだなぁ・・・」

ちらりとキャベツの箱を見る蝶々娘。

「じゃあ甘乙女で」
「キャベツの品種か・・・天子とかで良いんじゃないか?」
「うん、 じゃあそうするねー」

パタパタとキャベツの箱を持って行く蝶々娘改め天子。

「そろそろ言うべきかな・・・」

こっそり測っておいた指輪を手に呟く太郎だった。

今日も村は平和です。
20/10/24 22:43更新 / Mr.後困る
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