「・・・・・」
訓練所の医務室のベットで起き上がる長髪の男性
彼は三林 米、皇国に仕える兵隊で有るが体力は無い
虚弱とまでは言わない物の一般的な兵と比べると劣る
日々の訓練にも参加しているが3日に1度は倒れる
但し彼自体どれだけ過酷でも休息を拒否し無理矢理訓練に参加している
悪い奴では無いし志も立派だがこの訓練所の問題児なのは確かだ
「起きたか」
医務官が声をかける
「どの位、自分は寝ていましたか?」
「大体半日位だな、なぁお前さん、言っちゃ悪いが軍を抜けたら如何だ?」
「何を言いますか!!今は国の非常時ですよ!!戦争に敗北すればこの国がどうなるか!!」
「分かった、分かった・・・だが君、除隊させられるかもしれないぞ」
「え?」
「所長がお呼びだ、所長室に行ってきたまえ」
「・・・・・」
米はベットから起き上がり医務室を出て所長室へ向かい、ドアをノックする
「三林二等兵、出頭しました」
「入り給え」
米は所長室に入った
そこには無骨な訓練所の所長と見た事が無い男が立っていた
「君が三林君かね?」
「貴方は?」
「神祇院の瑠璃川です、実は人手が欲しくてね
所長さんに話を聞くと君が適材だと教えてくれた」
「神祇院?」
「神社などを取り仕切る内務省の部署だよ」
「ちょっと待って下さい、自分は兵隊です、この国の為に戦う事は出来ますが
神社を取り仕切る、と言われても」
「などね、神社、など、今私が管轄している問題は国の役に立つ事だ」
「その通り、軍部も神祇院に協力しているのだ、三林、行って来なさい」
所長が米の後を推す
「所長・・・」
「貴様は色々と問題だらけの奴だが皇国に対する忠義は本物だ
その御前にならやり遂げられる任務だと思う」
「しょ、所長・・・そこまで自分を高く買って頂けていたとは・・・感激です!!」
「う、うむ・・・で、では瑠璃川さん、後は宜しくお願いします」
「えぇ、分かりました、では三林君、君の新しい職場に移動しますよ」
「はい!!」
米は訓練所から出て汽車を乗り継ぎ、車を使って山奥の建物にやって来た
建物は洋館と言った佇まいでそれなり広く、優雅な作りだった
「わぁ・・・瑠璃川さん、これが新しい職場ですか?」
「元々は華族の屋敷だったそうです」
「これは凄いですね・・・」
だがしかし顔にマスクを付けた研究員や軍人が屯し、様々な用具が所狭しと置かれ
何かの研究所の様な様相を示していた
「これは一体・・・」
「あぁそうだ、三林君、一つ重要な事を聞き忘れていた」
「何でしょうか?」
「君は童貞かね?」
「・・・・・は?」
「いや、だから女性経験は有るのかね?」
「・・・いえ、故郷の村ではそういう風習が有った様ですが今は非常時、女に現を抜かせる状況では無いでしょう」
「ふむ、良い覚悟だ、さてでは三林君、君の任務について話そう」
「はっ!!如何なる任務も覚悟の上です」
「ふむ、では付いて来たまえ」
瑠璃川はどんどん屋敷の奥に進み、地下に潜った
「ここだ」
そこはマスクをした数人の軍人が守る、大きな鉄な扉だった
「ここは?」
「この扉の中に入り、中の鱗粉を集めて来て貰いたい」
「・・・鱗粉?ってあの蛾が出すアレですか?」
「そうだ、この中に居る蛾の鱗粉は特別な鱗粉でな吸うと重篤な作用が有る、死にはしないが戦争に利用出来る代物だ
なるべく多く集めて来て欲しい」
「な、なるほど・・・所で自分にはマスクは?」
「外なら兎も角中は鱗粉で充満していると考えられる、今の人類の科学で作れるマスクでは役に立たない」
「そ、そうなのですか・・・」
「やってくれるな、この国に必要な事なのだ」
「・・・分かりました、やりましょう」
「良くぞ言ってくれた!!では三林君に装備を」
そう言って箒と塵取りとバケツを渡される米
「では、行ってまいります」
「武運を祈る!!」
鉄の重厚な扉が開かれ中に入る米
扉の入口は階段状になっており下って行く
暫く進むと部屋の中は思ったよりは暗く無かった
如何やら地下でも光が取り込まれる様に作られている様だった
「・・・・・鱗粉とやらは何処だ?」
困惑する米、話によると充満している筈では無かったのか?いや考えられるだから違うのか?
「そもそも蛾が居るのではないのか?」
何処にも蛾は見当たらない
ばさりと音がした
「・・・音がした?」
鳥か?いやここは地下だ、在り得ない
ならば蛾か?いや羽ばたきが聞こえる蛾とはどれだけの大きさか
「・・・・・まさか」
自分が蛾に喰われるのでは無いかと言う恐怖に襲われる米
「・・・・・」
恐る恐る後ろを振り返るとそこには
「おとこーおとこー」
「・・・は?」
蛾の様な恰好をした少女がこちらに向かって飛んで来ていた
「ふぎゃ」
降り
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