ゆさゆさと体が揺すられる、最近寒さが強くなってきた今の時期としては布団から出るのは苦行に近い、だから俺はより布団の中に潜り込もうとする。
「起きろよ!」
声の主である俺の幼馴染の愛音(あいね)に無情にも剥ぎ取られてしまう布団、さらば俺の朝の快楽。
出張ばかりの俺の親に頼まれて彼女は俺とこの家の管理を任されているため彼女にはこの家を自由に出入りできる。
「寒い、眠い」
「そうか、じゃあボクが温めてやろうか」
愛音はそう言うと俺の服の中に器用に尻尾を入れてくる。無論さっきまで布団の中でぬくぬくしていた俺よりも、一度外へ出て俺の家に来た彼女の方が体温は低いわけで。
「のわっ」
変な声が出てしまった、目は覚めたが気分は最悪に近い。
「起きたか?」
「起きたよ、でもお前にだって朝の惰眠をむさぼる心地よさはわかるだろ? それなのにあんな起こし方はないだろ」
「わかるけど、ボクは悪魔だからね。それに折角ボクが朝ごはんを作ってあげたんだから冷める前に食べて欲しいんだよ」
確かに愛音の作った飯は美味いから冷める前に食べたいんだが、なんだか納得できない。そしてそのまま彼女を見つめる
「どうしたの?」
「いや、着替えるから出てけよ」
俺と愛音の付き合いの長さからアイコンタクトで理解してくれるかと思ったが無理だったみたいだ。
「いいじゃない、別に着替えるとこを見られても恥ずかしがるような間柄じゃないんだしさ」
「俺は恥ずかしいからな、お前は見られてもいいのかよ」
「ボクは別にキミなら見られても恥ずかしくは無いよ」
アレだな一緒に居すぎて異性として認識されなくなったか俺は。
「まぁいいや、ボクは待っててあげるからさっさと着替えてね」
そのまま俺の部屋を出て行く愛音、なんだか幼馴染とはいえ恥ずかしがられないってのも寂しいものを感じるな。
俺が着替えて食卓に着くと味噌汁に焼き鮭、目玉焼きそして白いご飯と日本人の朝の定番メニューが並んでいた。
「けっこう自信作だからね」
そう言って胸を張る愛音、こいつは普通に料理が上手いから自信作ってことは味は相当期待できるってことだ。
「うん、美味い」
俺は味とかに詳しくないからうまく言い表せないけどたぶんお袋の味とか温かみのある味だ。
「そっかぁ、良かった。でもさ、二人でご飯を囲んでるとさ……夫婦、みたいじゃない?」
「それは分からんが、お前はいつでも嫁に行けるよな家事全般は出来るし、それに可愛いからな」
「可愛い!……えへへぇー」
何だ愛音のやつ、融けたような笑み浮かべて。
「まぁね、ボクみたいな子をお嫁さんにもらえる人はとんでもなく幸せだろうね」
それでまじまじと俺を見つめてくる、なんなんだ一体。
「やっぱり寒いな」
朝食を食べ終わって家を出た、学校まで徒歩十分ってのは近くていい。それでもすぐに手の先とかは冷えてくる。
「そうだね」
愛音も同じ学校に通っている、でもって制服としてスカートを履いているのだが。
「スカートって寒くないの」
「寒いに決まってるじゃん」
そうか、やっぱり寒いのかならば。
「ひゃう、何するのさ」
「いや、温めてやろうと思ってな。朝の仕返しだ」
俺の冷えた手で愛音の太ももに触ったそれだけなのだが……登校中にすることではなかった、周りからはカップルがいちゃついてるようにしか見えないようで視線が痛い。
「バーカ」
満更でもなさそうな顔をして愛音が呟く。クソっ仕返しの筈なのに俺のほうがダメージを受けるってどういうことだよ。
いや、確かに愛音みたいに可愛くて家事が得意な子が彼女だったら俺も羨ましいけどさ。
考えてみると俺と愛音はどんな関係なんだ、友達としては近すぎるし恋人ではないだろうから、曖昧な関係なんだよなぁ。
学校も終わって部活に入っていない俺と愛音は大抵は一緒に帰る、今日もそうだった。
「なぁ愛音」
「どうしたのさ、そんな難しい顔しちゃって」
基本的に愛音は自分がさせた以外では俺が悩んでたりすると心配してくる、根はとてもいい子なんだ。
「今日さ、他の男と話しててどんな女の子が好みかって話になったんだよ」
「それで?」
「俺が高望みだとは思うけど、自分のことを理解してくれて可愛くて家事全般が出来る子がいいよなって言ったら『惚気かよ』とか『もげろ』って言われてさ」
「そりゃ、ボクのことをキミの彼女だと思ってたんじゃないの?」
そりゃそうだろう、朝飯はおろか手作りの弁当まで作ってもらっている上に登校中にカップルにしか見えないようなことまでしてるんだから。
「それは分かってるんだけどさ、俺の好みの女性ってそのまんま愛音なんだよな」
「何が言いたいのさ」
「あの、愛音は俺のことど
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