俺は幼馴染の佐原 銀と自転車に乗って学校に向かう……っと言ってもペダルを漕ぐのは俺だから、俺が銀のことを送って行っているだけの様な気もするが、まあいいとしよう。でも、高校に入学してから当たり前になっていた事が、後四ヶ月で終わるなんて実感がわかないな。
改めて考えてみれば寂しいとか悲しいとか思ったり…………ないな、そりゃ最初の頃は銀のお世辞にも大きいとは言えない控えめな胸の微かな感触に喜んださ、だけどな一年もしないうちに慣れて、それが普通になるんだよ。俺と銀の関係が一歩でも前進したら違うだろうけど、現実は悲しく俺と銀の関係は三年間変わる事は無かった。
三年間で好きな人と友達以上恋人未満の関係にすらなれ無かったんだ、もう銀とは友達のままの方がいいのかもしれないなんて考えも出てくる。あくまで考えるだけで、俺が銀のことを諦めるつもりなんて絶対に無いんだがな。諦めはしないけど、気持ちを言い出せないのも事実なんだよな……。
ハァ……自転車を漕ぎながら吐いた溜め息が白く染まる、もうそんな気温だったのか。いくら同じ大学に進むって言っても、好きな相手に気持ちを伝えられないまま卒業するなんて悔しいな……あー、なんか三年前に中学を卒業するときにもそんな事を考えていた気がするぞ。ったく、進歩してないな俺。
あの時は銀に断られるのが怖くて、結局できなかった。いや、あの時だけじゃないか、今も同じだ。怖いからやらない、ずるいな……このまま変われないのかな?いや、変われる、違う、変わらなくちゃいけない。想いを伝えることは難しいけれど、伝えられなきゃ変わることの無い距離だ。少しでも近づきたい……神様、臆病な俺に勇気を下さい、ふられても笑って誤魔化せる位の大きな勇気を下さい。
俺の想いを伝えたい、全てとは言わない大事な部分だけでいい、キミに想いを伝える事ができれば……断られてもいい、今の俺なら今まで以上に君を好きでいられそうだから。伝えよう、タイムリミットは『始まりの鐘(一時限目のチャイム)鳴るまで』
――……子供の頃から一緒だった……――
――……最初は釼なんて名前を変だと思った……――
――……何かとボクのことを気にかけてくれた……――
――……いじめられてたのを守ってくれたこともあった……――
――……彼の釼という名前とボクの銀という名前に同じ部分があるのが嬉しくなった……――
――……いつもボクのそばにいてくれた……――
――……いつの間にか彼に惹かれていった……――
――……高校も大学も彼が行く所だから志望した……――
――……彼と一緒に自転車で登校できる時はいつもドキドキした……――
――……今も彼の後ろでボクはドキドキしている……――
教室には誰もいない、チャンスだ。運命も俺に味方している。俺は銀を伝えたいことがあるといって彼女を呼んだ。
「……?」
彼女の瞳は真っ直ぐ俺を見ている。こうして改めて並ぶと子供の頃は同じ位だった背も今じゃ俺の方が大きいと実感できる。……違うだろ、俺は背くらべのために銀を呼んだわけじゃないだろ。
「……あのさ、銀。」
次の言葉が出ない。たった一言、好きだの一言が出てこない。
「「…………」」
俺も銀も一言も喋らない、一秒が何十秒にも感じられる、そんな時間だけが俺達の間を流れるだけだった。
俺はその間にも声を出そうとした、でも出せない。口を開けばたちまち渇きが俺を襲う、声を出せなくなる位の喉の渇きと、あと一歩でも近付いてしまえば自分を抑えられなくなる程の銀を求める心の渇き。
この空間に耐えられなくなったのか彼女が……銀が俺に近付いた、俺は何も考えられずに銀を抱きしめた、銀の耳元で一言囁いた。真っ白になり何も考えられなくなった頭で、初めて一番言いたい事が伝えられた。
俺は銀のことが好きだと。
――……彼に呼ばれた……――
――……彼に落ち着きが無かった……――
――……ボクは彼が何を伝えたいのか分かった……――
――……考えている事はボクも同じだったから……――
――……ボク達の間が静寂になった……――
――……不安になった、時が止まってしまったかと思った……――
――……だからボクは釼に抱き着こうとした……――
――……ボクに出来る愛情表現だったから……――
――……抱き着こうと釼に近寄った時……――
――……釼に抱きしめられた……――
――……耳元でボクのことが好きだと囁かれた……――
――……嬉しくて……――
――……恥ずかしくて……――
――……心臓が破裂しそうだ……――
……おれはしょうきにもどった……何故、普段の無表情からは想像もつかない程に顔を真っ赤に染めた銀がいるんでしょうか?でも何だか銀の顔を見つめてると、心の奥底から銀を求めようとする渇きにも似た感覚が俺を襲
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