過去−彼の寂しさ−

彼が小学生の頃だった、彼は元々明るい性格ではなかったが、それでも友達はいて、それなりに楽しめる生活を送っていた。
そこにたった一つの出来事が起こった。いじめ……どこにでもありふれていて、それでいて人の心を簡単に傷つけてしまうこと。
最初は彼はそのことに気付かなかった、ただ少し意地悪をされてるだけだと思っていた。彼がそれに気付いたのは彼の友人が自分の所為で他の人たちにいじめられている所を見た時だった。
彼は自分の所為で友人がいじめられているのを信じたくなかった、それと同時に自分自身を悔やんだ。もしも彼らが自分の友達で無ければこんな事にならなかったのに……彼は心の底からそう思った。
次の日から彼は友人を拒絶した。それにより、いじめられるのは彼だけとなった。それでも彼は耐えた、いや耐えるしかなかった。日々のいじめに耐えた、自分の所為で友達がいじめられていた事に自己嫌悪した、毎日あふれ出そうになる孤独感にも耐えた。
それらが毎日彼を悩ませ、彼に耐え難い苦痛を与えていった。それでも彼は耐え続けた、そしていじめから開放されもう一度友達を作ったときに彼は違和感を覚えた、友達と一緒に笑い合ってる筈なのに笑っている感覚が無い、一緒にいる筈なのに孤独に感じる、近くにいる筈なのに感じてしまう距離。すべてが彼の心に寂しさを植えつけた。
それが彼の寂しさの理由、彼の小さな頃に蒔かれた種は、今はずっと彼を苦しめて締め付けている大きな蔓となっていた。
10/10/28 22:27更新 / アンノウン
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