「よっす、おはろー」
ボクはいつも通りの挨拶を彼に投げる。
「おう、おはょ……制服どうした?」
なんだか懐かしい返事か帰ってくる、ボクがアルプになった時もこんな感じだったっけ。
「いやー、ついにボクも女子制服デビューですよ。彼女が可愛くて嬉しいか?」
「今まで男子制服だったから慣れねぇな、お前のスカート姿」
「いや、褒めろよ。『世界一美しいぜベィビー』みたいにさ」
「俺がそんなこと言っても格好つかねえしな」
「まぁ、言われた言われたでボクも爆笑する自信はあるね」
「言われたら爆笑する自信があるセリフを彼氏に言わせようとすんなよ」
「10センチ位はトキメクかもしれないよ」
「全長どれくらいだよ?」
「約4万キロぐらいかなぁ」
「地球一周分じゃねえか!!ときめき限りなく0に近い数値叩き出してるからな!!」
うん、やっぱりこの距離感は心地良いな。彼だからボクを今までと変わりなく接してくれて、それでいて変わってしまった部分も受け止めてくれる。
さて、本題を切り出そうかな?
「ところで、今日は何の日か知ってる?」
「そりゃもう、彼女持ちの男ならワクワクのバレンタインだろ?」
「そういうわけでギブミーチョッコレート」
「なんでだよ!!そこはお前が本命チョコくれる流れじゃねぇのかよ」
「は?ジェンダーフリーのこの時代に何を言ってるんだいキミは?男の方からくれたっていいに決まってる、というかボクがチョコ食べたい」
「最後のはお前の願望!!いやネタ抜きにマジで期待してたんだけど」
わりかしマジにショックを受けて落胆する彼を見て流石に心が痛む。
「あー、それなんだけど学校終わったらボクの家来てくれる?」
「お?ド本命ありますか?」
さっきとは打って変わってご機嫌な表情を見せる彼。それを見ていると、からかってしまいたくなるのが親友のボクなのだ。
「いやー、昨日ゲームしてたら武器の強化に時間かかっちゃって」
「今から作るんかい!!いや貰えるのは嬉しいからいいんだけどさ」
別に作ってないとは言ってないし、本命のチョコは家の冷蔵庫で絶賛冷え冷え中なのだけど。
サプライズとして黙っておこう。
「なんで俺がバレンタインにチョコレートソースを買わなきゃならんのだ」
「えーいいじゃん、店員さんにも『彼女さんと一緒に作るんですか?』なんて聞かれてまんざらでもなかったでしょ?」
「まぁ、否定はしない」
「そこは『最愛のハニーが隣にいて最高にハッピーだぜ』って言ってくれなきゃ」
「それ言ったらどの位ときめくんだよ」
「約四万キロ引く9センチぐらい」
「めっちゃときめいてんな!!」
「朝のと合わせると地球一周分と1センチ!!その結果オーバーフローを起こして逆に引きます」
「ダメじゃん」
笑いあいながら二人で歩く帰り道。いつも通りなんだけど少し物足りなくなってくる。
「……あのさ」
「どうした?」
「手を繋いでもいいかな?」
「うい」
彼が買い物袋を持っていない左手を差し出してくれる、親友として接する時から恋人として接する時を切り替えると、ボクはどうしても初めての時みたいにドキドキしてしまうんだ。
「手、温かいね」
「そうだな、こうしてるとなんか恋人らしいって感じる」
「らしいじゃなくて恋人なんだけど」
「あーなんだ、今までと違ってお前の格好が完全に女学生してるから余計に感じるというか。可愛い彼女が隣にいるんだなって」
「そりゃもうボクは美少女ですからねぇ、もっと誇ってもいいんだぞ」
「おう、可愛い」
「……ストレートに言われるとちょっと照れる」
少し寒いくらいの気温に反して、顔が熱くなる。
「可愛い」
「恥ずかしいって」
いつもふざけあってるから、本心で言ってるのがわかる。だからそれが余計に鼓動を早くしてしまうんだ。
「可愛い」
「……かってに言ってろよ、もう」
ボクの家に着くまで彼の可愛い攻撃は続いたのであった。
「ただいま」
「お邪魔します……あれおじさん達居ないの?」
「昨日、キミを連れてくるって言ったらお母さんが『妹と弟どっちが欲しい?どっちでもいいか、日曜の夕方頃には帰ってくるわね』ってお父さんを拉致って行った」
「相変わらずフリーダムだなお前の両親」
「でもなきゃボクだってフリーダムになってないよ、ボクの部屋行ってて。ボクは準備しておくから」
「うーい、買ってきたやつは?」
「そのままボクの部屋で良いよ」
慣れた足取りで彼はボクの部屋に向かう。
さてと、ボクは冷蔵庫を開けて本命のチョコを確認する。ハート形にLOVEの文字、彼女から彼氏に送るチョコなら何にもおかしいところは無いよね?
後は渡すだけだ。
「はーい、おまたせ」
「早くね?」
まだコートを脱いでた途中の彼は予想外にボクが早かったことに驚い
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