我は、この気高き古城に住まう吸血鬼。
同時に、この辺り一帯の魔界を統べし者である。
…これまで、数多くの勇者共がこの古城に攻め込んできた。
我が所まで辿り着いた者も居る。
だが、彼らは全て優秀なしもべの伴侶と成ったか、我の召使いとしてやったわ。
そう、故に我が城は難攻不落!
我が前に現れるのならば、いつでも全力で相手になってやろうぞ――
「……ほう、お前がこの屋敷の主か」
…うむ?また一人、我が下へ辿り着いた者が現れたようだ。
見た感じ、刀を一振り持ったコートを着た男性…ふむ、なかなかどうして、美しい顔をしておる。
しかし…今宵は妙だ。
監視の者の報告を未だ受けておらぬのだ。
奴らめ…さては、伴侶を手に入れて夢中になっておるな!
後でたっぷりと、お仕置きをせねば成るまい…。
…まぁ、済んでしまったことは仕方がない。
さておき、そろそろ口上を述べねばならぬな。
「…控えよ、無礼者。我h」
「――行くぞ」
…ちゃきん。
…えっ、ええっ?!
負けた?!この我が、一瞬で?!
「……魔界を統べる吸血鬼が、この程度とはな――」
「く、くそっ…貴様、本当に人間か?!居合いをしながらこの部屋を飛び回ったり、瞬間的に我の後ろに回り込むなんて…」
――しかも奴め、勝手に勝負が付いたと思うて刀をしまっておる…!
なんということだ…この我が、このような人間に…しかも。
「その刀…魔界銀ではないか!貴様、我等を討伐しに来たのではないのか?!」
「…我等?この城でお前の他に――誰も見なかったが」
「………………は?」
ま…まさか奴ら…わ、わた…我を見切りおったのか?!
そういえば最近古城を見回ると、やけに我がしもべが少ないなー…と思っていたが…!
「…いや失礼、語弊があった。お前の所まで直接来てしまったからな…見えなかったのは当然だった」
「な、成る程………はっ」
な、何を心の奥底で安心しておるのだ私はっ!
今の会話、この者が更に人間らしからぬ者であるってだけのただの自慢じゃない…の…。
「――しかし、お前は美しいな…」
「………へっ?!」
………な、何を急に言い出すのだコイツは。
そんなことを急に言われて…う、嬉しくなんか…。
「…俺の…いや、我が一族の目的は、より強い子孫を残すための伴侶探しだ。
そのために厳しい訓練に耐え、より強い魔物を追い求めた。
だが――お前達魔物は、やはりか弱い」
……いやいやいや!貴様がただ強すぎるだけじゃないか!
だがこう、魔界銀で切られて動けないこのような状態で顔を近付けさせられると…うぅ…。
「……ふ、ふふ…ならばドラゴンなどでも良かろう…我なんかより」
「倒した。やはり彼女も…か弱い存在だった」
………で、ですよねー。
もしかしたらこの人、リリムなんかと互角に戦えるんじゃない…?
「…話を戻そう。そこで俺は考え方を変えた。
…魔物達のために、強い子孫を残そうと。その対象が…お前だ、ヴァンパイア」
「…わ、私?!何故、私…なの」
「美しい。好みだから。以上だ――他に質問はあるか?」
「そ、そんな単純な理由…でっ」
何故か………しかし、わ…我の身体は今までに無いほど強く疼いている。
特に、下腹のあたりが…。
この辺りにある内臓器官は、たしか…。
「………はぁっ…はぁっ…」
………………駄目…もう、抵抗できなさそう…。
淫らな妄想が、先程から頭の中で迸って止まらない…。
身体が、「ハヤクワタシヲオカシテ」と、激しく訴え続けるのだ。
「――あな、た…の」
「…どうした?何も無いのなら、始めるが…」
あ……あぁ…。
私の自尊心よりも、より大きな何かが、私の中で…渦巻いて…ぇ♪
「……ちょ…頂戴っ!貴方の…種子で…私の中に…強い子を芽吹かせてぇっ…!」
「……ふ、素直なことは、良いことだ――」
―――。
あぁ………大好き、大好き大好き大好き。
貴方の存在が、貴方の強さが、貴方のその逞しい身体が…私を悦ばせるその性器が…私の中に放たれる、真っ白な種子がぁ…っ。
私の安っぽい自尊心を、誇りを、概念を、全て貴方で、塗りつぶしてっ……!
「……まだ…まだよっ…私にもっと、もっとせーえきちょおだぁい…!」
「――それじゃあ…お父様、お母様、学校行ってくるね!」
「あぁ、行ってこい」
「気を付けて、行ってらっしゃい」
…早いもので私達はその後、一人の娘をもうけた。
私はお母さんになり、愛する彼はお父さんとなり…この古城で『我がしもべ』ならぬ、『御近所様達』と幸せに暮らしている。
この城に、新しい平穏がやってきたのだ。
「さて…
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