第漆章 復讐者は梟の如く夜を舞う

復讐者
お前はどうして復讐する?
お前はどうして憎悪する?

復讐者
お前は悲しい存在だ
お前は虚しい存在だ

復讐者
お前の行為に意味は無い
復讐という行為に意味は無い

―復讐者は梟の如く夜を舞う―

「ちっ……コイツも外れかよ!」
足元に転がる元人間だった肉の塊を、俺は苛立ちを籠めて蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた肉の塊のコメカミには、ナイフの刃が根元までズップリ突き刺さってる。
クソッタレが……今度こそ当たりだと思ったら、まぁた外れかよ!
俺は外套のポケットから煙草を出して火を付け、紫煙を吐き出す。
何時になったら見つかるんだ、あのド腐れ野郎はよぉ!

×××

〜二日前〜
「御呼びでございますか、飛鳥(アスカ)様」
訓練をしていた私は急な呼び出しを受け、私の上司であるクノイチ・飛鳥様の元を訪れる。
片付けが苦手な飛鳥様の部屋は常に散らかっており、辛うじて入口から執務机までの道が出来ている程に汚い。
「お、やっと来たね、葉月(ハヅキ)! ま、適当に座ってくれよ」
適当に座れと仰られても、座る場所が見当たらないのですが。
座る場所に困った私は尻尾を伸ばし、先端を天井に突き刺してぶら下がり、蝙蝠のような体勢になる。
「……アンタねぇ、幾等アタシの部屋が汚いからって、ソレはないんじゃない?」
天井に蝙蝠の如くぶら下がる私を見て、飛鳥様は大仰な溜息を吐く。
ソレが嫌なら、一刻も早く部屋の片付けをした方がよろしいかと。

「ま、いいけど……アンタを呼んだのは、頼みたい事があってね」
そう仰りながら、飛鳥様は私に向けて一枚の手配書を手裏剣のように投げる。
手裏剣のように投げられた手配書を私は受け取り、手配書を見る。
その手配書の似顔絵に描かれているのは、黒眼鏡を掛け、黒い外套に身を包んだ男だった。

「今回、アンタに頼みたいのは手配書の男の捕縛だ」
「捕縛、ですか……」
「いやぁ、奉行所勤めの知り合いから頼まれてね。コイツ、かなり厄介みたいでさ」
飛鳥様曰く、手配書の男は『蟲眼』と呼ばれている罪人で、医師を兼業し、多少なりとも妖術を使える学者を狙って殺しているらしい。
動機は不明、『蟲眼』と呼ばれている理由も不明。
分かっているのは、月のない晩でも投擲用の短剣で正確に頭を貫く程の凄腕である事。

「んで、奉行所がお手上げ状態になった以上、アタシ達クノイチの出番って訳だ」
ケラケラと笑う飛鳥様だが、笑い事ではないかと。
幾等身体能力に優れた私達でも、コレ程の凄腕を相手にするのは難しいと思います。
「アンタが、ウチの里の現役で一番強いんだ。期待してるよ」
期待されても困りますが、任務を請け負った以上、全力を尽くすのみです。
私は尻尾を外して床に下り、飛鳥様の部屋を後にした。

×××

「かぁぁぁっ! しつこいんだよ、テメェ! テメェは金魚の糞かよ!」
全く、災難だぜ!
裏街道の酒場で自棄酒呷ってたら、いきなり棒手裏剣が飛んできやがった!
流れ弾、じゃなくて、流れ棒手裏剣に吃驚した酒場の騒ぎに紛れて逃げたないいがよぉ、棒手裏剣投げてきた奴はしつこく俺を追い掛けてきやがる。
俺は投げナイフを召喚、追い掛けてくる奴に投げるんだが、走りながらだから狙いは適当、綺麗に外れちまった。

「お覚悟を……」
夜闇に紛れながら俺を追い掛けてくんのは、声からして女か!?
畜生! 俺は女に追い掛けられるような事は……してたなぁ、そりゃタップリと。
遊郭で料金踏み倒したり、手八丁口八丁で金を騙し取ったり、暗い裏道に引き摺りこんで恐喝したり、色々やったが、いきなり棒手裏剣投げられるような事はしてねぇ!

「クソッタレがぁ。兎に角広い場所、広い場所……って、うおぉっ!?」
ゴミ箱の中に隠れ―生ゴミなのが最悪だが、この際文句は言わねぇ―、この辺で見渡しの良い場所がどの辺りかを思い出そうとしてると、ゴミ箱の蓋に棒手裏剣が刺さる。
畜生! ちったぁ、考える暇を寄越しやがれ!
ゴミ箱から転げ出た俺は、頭に糞生意気にも乗ってやがったねぶりの果実の皮を投げ捨て、勢い良く走り出す。

「ひゃん!?」
背後で何だか知らねぇが驚いた声がして、走りながら振り返ってみりゃ、転んだ女と女の足元に転がる、踏んづけられたねぶりの果実の皮。
皮、踏んづけて転ぶって何処のお笑い小説だよ! 腹を抱えて笑いてぇが、今はトンズラかますのが先だ。
女が転んだ隙に逃げさせてもらうが、何でだろうなぁ? 
何で、俺はクノイチに追い掛けられてんだ?

「えぇと、クノイチってな、確か……」
何とかクノイチを撒いた俺はゴミ箱の中に隠れて、クノイチが何なのかを思い出す。
然し、まぁた生ゴミのゴミ箱かよ、生ゴミに縁でもあんのか、畜生が。
クノイチってな、確か……魔王の代替わりの時に、魔物化した一部の女忍者達が始祖になっ
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