駕籠の鳥
狭い世界で、何も知らずに囀る鳥
閉じた世界で、何も知らずに生きる鳥
駕籠の鳥
外を知ったら、お前はどうする?
外を知ったら、お前は何をしたい?
駕籠の鳥
何時かその時、お前は羽撃(ハバタ)く
羽撃くその時まで、駕籠の中で囀れ
―剣奴隷は飛龍の如く自由へ羽撃く―
―オォォオォオォ――――――ッ!
「凄い……」
己(オレ)は圧倒されていた、この雄叫びに、この血生臭さに。
「どうだ、雪緒(ユキオ)? 此処の雰囲気は?」
隣でとぐろを巻く、己の仕える主……龍の翠鱗(スイリン)様は、此処の雰囲気はどうだと問う。
正直に言えば、此処は己の居るべき場所ではないと思う程、異常な熱気に包まれていた。
己の名は雪緒、代々翠鱗様に仕える白蛇だ。
白蛇とは何だ、だと? 結論から言えば、半人半蛇の妖怪だ。
名に『白』を冠しているだけあって、己の肌や髪、蛇体を覆う鱗も穢れ無き純白。
白蛇は妖怪の中でも強い力を持ち、妖怪の中でも一際強大な力を持つ龍に巫女として仕え、同時に龍と共に人間達の信仰対象になる事もあるのだ。
今、己と翠鱗様が居るのは、ジパングから若干離れた沖に浮かぶ小島。
その小島には闘技場なる施設があり、己と翠鱗様は其処に居る。
翠鱗様が言うには、ジパングの富裕層が在り余る金に物を言わせ、大陸にある同じ施設を真似して造り上げたらしい。
此処に入れるのは富裕層か翠鱗様のような力を持つモノ、闘士として育てる為に買われた孤児に、闘士として雇われた剛の者だけだそうだ。
「正直、己は好きになれません。此処は、血生臭過ぎる」
「ふふっ……物言いは男勝りな癖に、根はやはり白蛇よのぉ」
クックッと笑う翠鱗様に、己は反論出来ない……己を含めた白蛇は生来穏和な性質であり、このような血生臭い場所はどうにも好かないのだ。
何故、血生臭いのを好まぬ己が此処にいるのか? ソレは本来の姿へと変化した翠鱗様の背中に乗せられ、社会勉強の一環という名目で半ば強制的に連行されたのだ。
本来、仕える主の背中に乗るのは無礼を通り越して討首獄門にされても文句は言えないが、翠鱗様はこういう所には極めて大雑把だ。
「何時来ても、熱気に溢れておるのぉ……お? どうやら、試合が終わったようじゃな」
己と翠鱗様は貴賓席で試合を観戦しており、試合場とソレを囲む観客席が一望出来る。
翠鱗様が終わったと言うので己は試合場を見ると、巨漢が勝利の雄叫びを上げていた。
然し、三つ編みにしたモミアゲ以外はツルッパゲ、桃色の褌一丁、気色悪い程の筋肉達磨、という暑苦しい要素を兼ね備えた容姿は少々……いや、かなり濃い。
あんなのと出会ったら、己は全力で逃げるな。
『次は今日一番の目玉! 当闘技場最強の王者と、挑戦者の特別試合だぁ―――っ!』
司会と思しき男の声が響くと同時に、男の声がかき消える程の雄叫びが観客席から上がる。
耳をやられかねない大音声に思わず耳を塞ぎながらも、己は試合場を見る。
試合場に居るのは、先刻の筋肉達磨には劣るものの相当の筋肉が付いた巨漢と、この場に不相応な小柄な子供。
「ほほぅ……この闘技場の王者に挑むとは、中々のウツケよのぉ」
翠鱗様が意地悪そうに笑うが、ソレは己も同感だ。
アレだけの体格差があれば、どう見ても子供の方が圧倒的に不利だ。
『それでは、試合開始だぁぁ――――――っ!』
司会の叫びと共に開始を告げる銅鑼の音が鳴り響き、試合という名の私刑が始まった。
「どうした、雪緒? 開いた口が塞がらぬようだなぁ?」
意地悪そうな笑みを浮かべる翠鱗様だが、己はただ口を開けて呆然としていた。
確かに試合という名の私刑が行われたのだが、己の予想を裏切ったのは、私刑される側が子供ではなく巨漢の方だったからだ。
子供の動きは餓狼が獲物に喰らいつくかの如く、巨漢を殴り飛ばし、一撃で倒れた巨漢に馬乗りし、胸板や顔面に小さな拳を一方的に叩き込む。
圧倒的過ぎる、まさに私刑と呼ぶに相応しい試合は子供の圧勝という形で終結した。
「むぅ……」
己が今居るのは、件の子供の控室の前……あの子供がこの闘技場の王者だと知った己は、翠鱗様に無理を承知で彼に会ってみたいと頼んだ。
すると、翠鱗様は構わないと一言残してから去ると、大体二、三時間程経った頃に運営者の許可をもらって戻ってきたのだ。
翠鱗様の身体から新鮮な精の匂いがしたのは、敢えて問うまい。
兎に角、折角翠鱗様が許可をもらってきてくれたのだ、尻込みして無碍にするのも嫌だが、己は人間の男には触れるどころか、喋りかけた事すら無い。
「むぅ……えぇい、ままよ!」
己は意を決して控室の扉を叩き、中にいるであろう子供の返事を待つ。
『鍵は空いてるから、入ってきてもいいよ〜』
呑気な声で返事が返ってきたので、己は扉を開ける。
「話はオッサンから聞い
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