「さて……」
レスカティエ西側に到着後、琴乃はアルルカンと別れて元貧民街を走る。
乱雑に並んだ、小屋のような家の間を走りながら琴乃は己の内側に目を凝らす。
(『予備の骨肉』は重量換算で『七〇〇キロ』、充分だな)
己の内側に蓄えられた『力』に琴乃は満足そうに口端を釣り上げるが、彼が胸中で呟いた言葉には疑問符が付く。
予備の骨肉、重量換算で七〇〇キロ……若し心を読む事が出来る者がこの言葉を聞いたら、一体何を意味しているのだろうかと首を傾げるに違いない。
「ん? 早速のお出ましか」
走る琴乃の前に現れる人影、数は大凡一〇人前後。
人影の群は白い鎧を纏っており、ソレだけで彼等は教団の人間だと分かる。
「来たな、堕落したケダモノが!」
「全員、戦闘態勢を取れ!」
向こうも走る琴乃を見つけたらしく、全員が腰に提げられた鞘から剣を抜いて走り出す。
「まとめて吹き飛ばす!」
抜刀して迫る教団兵達を前に琴乃は立ち止まって右手を彼等に突き出すと、彼の手首から筒状の何かが盛り上がるように現れる。
突然筒状の何かが現れた事に教団兵達は驚くが、彼等が驚いたのはソレだけではない。
手首から現れた筒状の何か、その先端が苦悶に歪んだ人間の顔に見えたからだ。
「な、何だ、アレは!?」
「ひ、怯むな! 相手は一人だ!」
見るからに気色悪い代物に一瞬怯むものの、直ぐに平静を取り戻して教団兵達はそのまま突撃するが、
「グギッ、ゴ、ガァァ……」
突然激痛を堪えるような苦痛の声を上げる琴乃に、教団兵達は思わず足を止めてしまう。
「白城七肉巧(ナナツノニクジコミ)が一つ、『肉鐡炮・紅蓮杖(シシテッホウ・グレンジョウ)』……DAAARAAAAAHHHHHHHH!!」
結論から言えば、教団兵達は足を止めるべきではなかった……教団兵達が足を止めた瞬間、苦痛に満ちた琴乃の咆吼と共に人間の顔にも見える筒から『何か』が撃ち出される。
撃ち出された『何か』は真っ直ぐ教団兵達に向かって飛び、
―ズドォォンッ!!
爆発と同時に周囲へ鋭利な鏃を撒き散らす。
「ぎゃあぁぁ!?」
「ぶぎゃらっ!?」
撒き散らされる鏃は露出している部分は勿論、鎧を突き破ってその下の身体にも刺さり、爆風が教団兵達を吹き飛ばす。
爆風は周囲の建物をも吹き飛ばし、爆心地を中心にちょっとしたクレーターが完成する。
「はぁ、はぁ……ふっ、この痛みには飽いたが、やはり慣れんな」
目前の光景に琴乃は息を荒げながら自嘲の笑みを浮かべ、直ぐに次の敵を求めて走り出す。
「ぬ?」
すると、少し走った所で別の教団兵達と琴乃は遭遇する……どうやら先の爆音を聞きつけ、爆音の聞こえた方に向かう途中だったらしい。
「やっちまえぇ!」
琴乃の姿を見るや否や教団兵達は抜刀して迫り、琴乃は無策に突撃する彼等に侮蔑の笑みを浮かべる。
「『割腹・悪食腸管(カップク・アクジキチョウカン)』! ギ、ゴバッ、AAAHHHHRIIIIYYYYYYYY!!」
背を丸めたかと思うと、苦痛の声と共に仰け反る琴乃。
琴乃の腹部が何かが暴れているような不気味な蠢きを見せた直後、肉を突き破る生々しい音と共に彼の腹部から何かが飛び出す。
「うげぇっ!?」
「ひ、ひぃ!?」
腹部から飛び出したのは、大きく口を開けた人間の顔を先端に持った七本の腸管。
不揃いながらも鋭利な牙を何本も覗かせて迫る人面腸管に教団兵達は悲鳴を上げ、悲鳴を上げる彼等の喉に腸管が噛みつく。
「ふっ……」
酷薄な笑みを浮かべる琴乃の視線の先には人面腸管に喰われる教団兵達。
どうやら好き嫌いは無いようで、鎧も骨も御構い無しに人面腸管は教団兵達を食べ続け、ゲップをする頃には血溜まりしか其処に残っていなかった。
「ご苦労だったな。まぁ、直ぐに出番は来るが」
食事を終えて腹部に戻る人面腸管に労いの言葉を掛けた後、琴乃は背後に振り返る。
「ば、化け物がぁ……」
「くそっ、こんな奴がいるなんて聞いてねぇぞ……」
其処には先の食事風景を見てしまったのか、恐怖でブルブルと震えながら剣や槍を構える教団兵達、その数は数十人程。
「ふむ、『腹ごなし』には丁度いい」
「あらあら、こんなに沢山居るなんて」
一方、琴乃と別行動を取っているアルルカン……彼女の前には武装した教団兵達が並び、その中には身体の至る所に鋼鉄の輝きを見せるアンドロイドが幾人も混ざっている。
彼等の眼には魔物に対する嫌悪と憎悪が爛々と輝いており、何処からどう見ても話し合いの余地は無い。
嫌悪と憎悪の視線に晒されながらアルルカンは上品な笑みを浮かべ、余裕にも見える彼女の笑みは教団兵達の神経を逆撫でさせる。
「では、参りますね」
今にもキレそうな教団兵達を前に、アルルカンは笑みを隠すように右手で口元を隠す。
「夢見る人形は何を見る、硝子の瞳で何を見る、ヒト
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