File.13 A bell telling the start of the end sounds

「そうだ、コレは奇跡なんかじゃねぇ! 確実にシャッドが齎した、当然の結果としての勝利だ! 俺の愛しいパートナー、シャッド・メル!!」
己はそう叫ぶと直ぐにシャッドの元に駆け寄る、無論背後の『蝗害』に注意しながらだ。
「タイヨウ……」
目に涙を浮かべるシャッドは死んでてもおかしくない程にボロボロ……骨折は当然として、刺し傷、切り傷、打撲その他諸々、死んでないのが不思議なくらいだ。
「……ただいま」
「んっ……」
己は懐かしさを感じながらシャッドの顎を手に取り、口付けを交わす。

「んっ、ちゅっ、れる、んんっ……」
舌を絡ませながら唾液を啜り、口内で交換され続ける唾液を媒介にシャッドへ魔力を移す。
「はぁっ!?」
魔力譲渡を兼ねたディープキスに『蝗害』は驚き、驚く『蝗害』に己はシャッドにキスを続けながらチラリと視線を送る。
どうだぁ? 羨ましいか、羨ましいだろ? お前みてぇな変態腐乱死体野郎に、こんな事してくれる奴ぁいねぇだろ? グエヘヘヘヘヘ(←主人公とは思えない笑い)。
「おい、何をやっている……」
「んっ、ぷはっ…………って、えぇぇ!?」
聞くからに不機嫌そうな声にキスを中断して声の聞こえた方に目を向けると、其処には額に青筋を浮かべ、見るからにボロボロな『通り魔』。

「ファ、『通り魔』!? 何時から其処にいた!? つぅか、何でお前が此処にいんだよ!?」
「何時からも何も、貴様が派手な登場する前からいるわ! 貴様が甦ったのは嬉しいが、甦ったら甦ったで何をしている! 人前でそんな事をするとは余裕だな、貴様は!」
「別にいいじゃねぇか、シャッドの唇を堪能したって! いや、それよか何でお前が此処にいんだよ! ソッチを説明しやがれ!」
「時と場合を考えろと言ってるんだ! 此処は戦場なんだ! 命を賭けた戦場で、そんな呑気な事をしてる場合か!」
「無視か、無視しやがったな、この野郎! 何で敵のお前がシャッドと一緒にいて、『蝗害』と戦ってんだ! キスに文句言う前に、さっさとソッチを」

「こ、こ、こん餓鬼ァァァ! 人様無視して勝手に盛り上がってんじゃねぇぇわよっ!」
戦闘中とは思えない会話に、蚊帳の外だった『蝗害』がキレた声を上げる……あ、ヤベ、アイツの事すっかり忘れてた。
「『見えざる星の蝗(スター・ホッパー)』、暴食せよ!」
キレた『蝗害』が叫んだ瞬間、己の背中にゾワリと悪寒が走り、己はシャッドを抱える。
得体の知れない危機感に己と『通り魔』が飛び退くと、飛び退いたのと同時に己達のいた場所で肉片が爆ぜる。

「ほ〜ほっほっほっほっ! 不可視は『通り魔』の専売特許じゃないわ! 迷彩生物爆弾『見えざる星の蝗』、見えない爆弾蝗を何時まで避けられるかしら!」
勝ち誇ったような笑い声を上げる『蝗害』だが、己は溜息を吐くしかない。
事実、羽音はすれども見えない蝗の群に己達は囲まれてる……ソレが『蝗害』に優越感を与えてんだろうが、憐れだねぇお前も。
シャッドを下ろした後、己は静かに精神を集中させ、疾走する思考が世界の法則を猛烈な勢いで演算を開始する。
導き出された式に理論を書き加え、己の世界を構築する。

(―――視えた)
人一人爆殺するには充分な威力を秘めた不可視の蝗、数は大体二〇匹ってところか。
世界に神経を張り巡らせ、思考を疾走させる己から見れば、ソレは欠伸が出る程に遅い。
「ふっ……!」
己がシャッドの竜角剣を振るい、光が奔るのと同時に周囲で立て続けに肉片が爆ぜる。
「そ、そんな、アタシの『見えざる星の蝗』が一振りで……!?」
「お前のは遅過ぎなんだよ。己に当てたきゃ、『通り魔』の刃くらいに速くしろよ」
自慢の爆弾が一振りで切り捨てられて後退る『蝗害』に、己は不敵な笑みを浮かべながら竜角剣の切っ先を突きつける。

「コレが邪悪を砕く者だ……さぁ、さっさと墓に帰りな、ゾンビ野郎!」
恐れるモノは無い……あるのは確かな自信と此奴を圧倒する力だけ、己は両手で竜角剣を構え直して一歩間合いを詰めると、気圧された『蝗害』が一歩後退る。
帰ってくる前の状況はサッパリで、多分シャッドと『通り魔』が不利だったんだろうが、今は形勢逆転、己達の方が優位だ。
「……ふふふ、ほ〜ほっほっほっ! アンタ達、大事な事を忘れてなぁい? コッチには人質がいんのよ!」
「へっ?」
勝利を意識した瞬間、『蝗害』が笑いながら告げた言葉に己は間抜けな声を漏らす。

「ちっ、そうだった……」
「タイヨウ、アッチ!」
シャッドが指した方に目を向けると、折れた街灯の根元に蝗がまとわりつくアンリがいた。
あぁ、成程、何となくだが状況が掴めたぞ……アンリが人質になってたから、シャッドと『通り魔』はボロボロになってたのか。
「ほらほらぁ! アンリちゃんを齧られたくなけりゃ、其処で大人しくしてな
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