File12 A triumphal song of the victory that who sings‐2

イヴィルバスターを保管していた封鎖区画。
今、其処には秘蔵の決戦兵器ではなく、その使い手……本洲太陽の骸が、蒼く輝く魔法陣の中央に置かれている。
何重にも隔壁が降ろされた封鎖区画には外の喧騒は伝わらず、静寂が此処を支配している。
嘗てイヴィルバスターが隠されていた封鎖区画に、太陽の骸を置いたのはアンリの指示だ。

スケルトン、という屍人型魔物が居る。
死者の骨に魔力が宿る事で生まれるスケルトンは、その生い立ちからゴーレムの一種だ、ゴーストの一種だと未だに学者達の間では意見が割れている。
何故なら、スケルトンは女性の骨だけでなく、男性の骨から生まれる事もあるからだ。
スケルトンは『死者の肉体に魔力が宿る』のではなく、『骨に宿った魔力が肉体を作る』為、男性―尤も、生者ではなく死者だが―が魔物化する事もある稀有な存在である。
故に、アンリは太陽がスケルトンとなって甦る事を期待している……太陽の思考、技術を受け継いで生まれたスケルトンなら、今の状況を少しずつ挽回出来ると信じている。

アンリの期待を背負い、安らかな死に顔で永久の眠りに就く太陽の骸の近くに光が集う。
骸の近くに集まる光は徐々に輝きを強めながら、容を成す。
辛うじて人間に見える程度、輪郭が非常に曖昧な人型に容を成した光は質量を持たぬにも関わらず、コツ、コツ…と靴音を立てて太陽の骸へと歩み寄る。
人型の光は太陽の骸の直ぐ横にまで歩み寄ると、安らかな顔で眠る骸を無言で見下ろす。

『………………』
見下ろす人型の光は骸の胸に手を翳し、翳した手に魔術文字が浮かび上がる。
浮かび上がった魔術文字は雫の如く骸に滴り落ち、滴り落ちた魔術文字は骸に染み渡り、染み渡る度に胸から少しずつ骸は光を放ち始める。
骸が光を放つのと呼応するように、人型の光は少しずつ輝きが失せていく。
輝きが失せていく人型の光は容が保てなくなったのか、足元から徐々に消えていく。
徐々に光る骸、徐々に消える人型の光。
そして、骸の全身が光に包まれた時、人型の光はもう存在していなかった。

『貴公は此処で死の眠りに就く者ではない……貴公は余の糧となれ、余の求道の礎となれ』
響く声は誰も聞かない、此処には死した骸しか存在せぬが故。
声の想いは誰も知らない、此処には想いを知る者が存在せぬが故。
誰も聞かぬ、誰も知らぬ声が響いた後、封鎖区画は再び静寂に包まれた。

×××

「成程、『噴火』を殴れたのはクトゥルフの魔力で身体を覆っていたからか」
「然り……海神たる我の魔力は火を制する、イグニスが数十人居ようと我の魔力の保護を貫くのは難しいぞ?」
一方、吹き飛んだ『噴火』を追うシャッド達……何故シャッドが『噴火』を殴れたのかを疑問に思っていた『通り魔』は、何時の間にか彼の頭に座るクトゥルフの言葉で納得する。

『噴火』と交戦する間際、廊下の惨状を見たクトゥルフが気を利かせ、シャッドを自身の魔力で包んだ。
深海を統べる海神たるクトゥルフは蒼属性……水を司る神格であり、その魔力は並大抵の炎や熱を受け付けない。
『噴火』の放つ熱で高温に熱せられた空気はクトゥルフの魔力で即座に冷やされ、彼女の魔力で包まれた拳は溶岩に触れる事も―流石に長時間は無理だが―可能。
故に、シャッドは『噴火』を殴っても無事だった訳だ。
尚、不可視の刃を遠隔操作する『通り魔』にクトゥルフの魔力保護は掛かっていない。

「然し……何処まで吹っ飛んだんだ、アイツは?」
壁に二人が並んで通れる大きさの穴を作りながら奥へと吹き飛んだ『噴火』だが、一向にその姿と穴の突き当たりが見えてこない。
進めば進む程に熱気が肌を焼き、汗が滝の如く滴るが、見えぬ姿と奥に少しばかり苛立ちを含んだ『通り魔』の声が通路に響く。
進めど進めど見えぬ姿と穴の奥……ドラパンチの衝撃でバラバラになったか、と『通り魔』が思い始めた時、橙色に光る何かが漸く見えた。

「ぐ、が……が、お、あぁ……」
光る何かは『噴火』、ドラパンチの衝撃と激痛に微動だにせず、苦悶の声を上げている。
激痛で維持が難しいのか、その四肢の先端はスライム種の如く半ばドロドロになっており、頭の上半分を包む炎も弱々しく揺らめいている。
「漸く、か……」
見るからに弱った姿に『通り魔』は口端を釣り上げ、走る足を止めずに不可視の刃を五枚用意する。
激痛で動けない今が絶好の好機……『肉体変質』でも変えられない心臓諸共細かく微塵に切り刻めば、復讐の終わりに一歩近づく事になる。

「さぁ、俺の復讐の贄となれ! 『地震』が地獄で席を用意して待ってるぞ!」
『通り魔』の死刑宣告と共に刃は投擲され、五枚の刃が弱りきった『噴火』へと迫る。
「……っ、ざけんじゃ、ねぇぇぇ―――――っ!!」
五枚の刃の切っ先が触れようとした瞬間、『噴火』がカッと目を見開く
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