『……………………』
百足型で『地震』が葬られる様子を見せられた『災害の体現者達』は、朝日に照らされる『通り魔』とシャッドの姿に驚きを隠せなかった。
「まさか、『通り魔』がウィルマース家に協力するとは……」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、グロウスは忌々しそうに呟く。
シャッドの復活だけでも認め難い現実なのに、『通り魔』がシャッドと協力している。
離反したとは言え『通り魔』は正導真理会の一員であり、彼は正導真理会の中でも多くの魔物を殺して―魔物と同じくらいに人間も殺していたが―きた団員だ。
仮に『通り魔』が何処かに亡命しても、そんな彼の亡命を受け入れる勢力はいない。
寧ろ、即刻処刑されるだろう、とグロウスは予想していたが見事にソレは覆された。
シャッドと協力している以上、『通り魔』はウィルマース家と協力関係にあるのだろう。
「『通り魔』がシャッド・メルと協力しているとなれば、共に我々から離反したドクターもウィルマース家に居るのだろうなぁ。全く、全く面倒な事態になった」
眉間に皺を寄せ、『津波』は目頭を押さえて首を振る。
魔術師たる『災害の体現者達』は己の技こそ最大の武器、体調管理をしっかりしていれば問題無いが、只人の団員達や機械のバルバロイはそうはいかない。
カーウィンは技術者と医師を兼任しており、バルバロイや団員達の使う武器の整備や発注、団員達の健康管理は彼の仕事だった。
バルバロイと武器の整備にはマニュアルが、団員達の健康管理には他の医務要員がいる為、カーウィンがいなくとも何とかなるが、バルバロイの発注だけはどうしようもない。
生産工場へのアクセス権限を与えられるのは各部隊につき一人……権限を与えられた者が死亡しない限り、別の者にアクセス権限が与えられる事は無い。
即ち、カーウィンが死なない限り、手持ちだけでセラエノを陥落させる必要がある。
カーウィンのウィルマース家への亡命が事実なら、バルバロイは自分達の敵となった。
生産工場が生きている限り無限に生産され続けるバルバロイは、ウィルマース家にとってカーウィンが生きている限り無限に増える貴重な戦力。
仮に自分達がウィルマース家の者だったら、この劣勢を覆す為にバルバロイを用いるのは想像に難くなく、時間が経つにつれて此方が劣勢に陥るのは目に見えている。
『災害の体現者達』最強である『通り魔』、無限に増え続けるバルバロイ、この二つが敵に回った事に『津波』は頭が痛くなる。
「手負いとは言え獅子は獅子、侮ったお主等が阿呆なだけよ」
「……っ」
司令室の入口から聞こえた侮蔑混じりの声に、苦渋の表情を浮かべたグロウが目を向ける。
其処には何時の間にか戻ってきていた『雪崩』がおり、彼の口元は嘲笑で歪んでいる。
「ほぉ……なら、貴様は無様を晒さないとでも?」
「『大嵐』、拙者に行けと申すか」
グロウスの挑発に『雪崩』は不敵な笑みを浮かべて応え、両者は向かい合って睨み合う。
「……ふっ、望む所だ。いい加減、拙者も退屈していたのでな」
『雪崩』は衣服を正し、腰に差した二本の刀を確かめる。
既に戦う準備は整っていたらしく、全身から放たれる闘気は鋭利な刃物そのものであり、軽く触れただけで切れてしまう程に高まっている。
戦意に満ちた『雪崩』が背を向け、司令室から立ち去ろうとした時だ。
「待ちやがれ、丁髷野郎!」
それまで沈黙していた『噴火』が突然吠え、充血で赤くなった目で『雪崩』の背中を睨む。
「奴は僕の獲物だ!」
吠える『噴火』の頭の炎は轟々と白く燃え盛り、その小柄な身体からは殺意に満ちた気配が放たれ、彼が怒り心頭なのは明白だ。
どうやら、感情の抑制が効かずに只管憎悪が暴走し続けているらしく、ソレは少年の姿を醜く歪めて復讐鬼へ変えていく。
「奴が……奴等が『地震』を殺したんだ! 許さねぇ、絶対に許さねぇ! 全員残らず、僕がブッ殺してやる! 畜生! 殺す殺す殺す、絶対ブッ殺す! 畜生、畜生! 糞が、糞がぁぁっ!!」
×××
「さて……二人共、何か言いたい事はありますか?」
「「………………」」
『噴火』が怒り猛っていた頃、セラエノ防衛班本部の医務室では『通り魔』とカーウィンは正座で座らされ、半目のアンリに睨まれていた。
正座で座らされた二人の足はピリピリと痺れ始め、シャッドは二人の近くに蜷局を巻き、成り行きを見守っている。
帰還したシャッドと『通り魔』を出迎えたのは、腕を組んで不機嫌そうな表情を浮かべたアンリと、頭に瘤を作り、何故か亀甲縛りで縛り上げられたカーウィン。
アンリの不機嫌さは百戦錬磨の大量殺人鬼(シリアルキラー)である『通り魔』ですら怯む程であり、無言でカーウィンを引き摺る彼女に二人は大人しく彼女の後を追い、現在に至る。
「ドクター、確かに私達は貴方に協力を求めまし
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