「やってくれたであるな、あんの愚か者がぁ……」
鋼鉄の大百足、バルバロイ百足型。
血管の如く内部を繋ぐ通路を、愛用のエレキギターを担いだドクター・カーウィンは白衣を靡かせて大股で歩いている。
その額には青筋が幾つも浮かび、彼が怒り心頭である事を如実に表している。
ドクター・カーウィンが目指すは鋼鉄の大百足の脳髄、指令室。
第一波を終わらせた『災害の体現者達』が百足型へ帰還した事は、第二波担当として内部に残っていた団員達は既に知っている。
緊急通達がある事を告げられた第二波担当の団員達は、憤るドクター・カーウィンの横を早足で駆け抜けていく。
「集まったかね、諸君」
ドクター・カーウィンが指令室に到着した時、集会場も兼ねて広く作られていた指令室は残っていた団員達で埋め尽くされていた。
団員は全員魔術的紋様が描かれた覆面を被っている為に表情は分からないが、その覆面の下には疑惑と困惑の表情を浮かべているだろう。
指令室前方、大型モニターの前には『通り魔』を除いた『災害の体現者達』が揃っており、集まった団員達の前へとグロウスが一歩進む。
「今回集まってもらったのは他でもない、諸君に伝えるべき重要な事があるからだ。我々の隊長であったアレスタは、我々を謀っていたのだ」
グロウスの言葉に、団員達が一斉且つ静かに騒ぎ始める。
我々を騙していた? 何を隠していた? 隊長の姿が見えない事と関係在るのか?
団員達の疑問は当然だ……指令室に居る団員達は第二波として第一波には参加しておらず、その様子を知らされていないからだ。
尤も、バルバロイのカメラ越しに戦場を見ていたドクター・カーウィンは第一波の様子を知っているが。
「隊長は……いや、アレスタは我々の使命を蔑ろにしていた! 魔物を殲滅するという、その崇高な使命にアレスタは唾を吐いたのだ!」
その言葉にドクター・カーウィンを除いた全員が騒ぎ始め、騒ぐ団員達を尻目にグロウスは言葉を続ける。
「アレスタは言った! 我々にとって危険人物である本洲太陽とシャッド・メルと戦う事、ソレが我々の使命よりも重いと! 彼奴等の成長が、彼奴等との闘争こそが、アレスタの望みだったのだ! 諸君は許せるか! 敵と戯れる方が我々の崇高な使命より価値が在る、とアレスタは言ったのだ!」
熱の入ったグロウスの演説に、団員達は静かに耳を傾け続ける。
「許せるか? 許せないだろう! アレスタは我々を長年騙し、欺いてきたのだ! 故に、我々はアレスタを、我々の崇高な使命を唾棄した反逆者を断罪した!」
グロウスの『断罪』という言葉に、静かに耳を傾けていた団員達は再び騒ぎ始める。
「そう、諸君の想像通りだ。反逆者、アレスタ・リクローイは既にいない……我々が手を下し、殺したのだ!」
自分達が殺した、と宣言したグロウスは一度演説を区切り、ざわめく団員達を見渡す。
「今後は我々、『災害の体現者達』が君達の指揮を執る。反逆者が消えた以上、我々の崇高な使命を邪魔する者は彼の忌々しいウィルマース家だけだ」
ざわめく団員達を落ち着かせるようにグロウスが言葉を紡ぐが、その言葉は団員達に新たな疑問に、本洲太陽とシャッド・メルはどうなったのかに首を傾げる。
「安心したまえ、諸君……あの憎き本洲太陽とシャッド・メルも、アレスタと共に我々が」
―ズギュ――――ン!! ペレポロペレポロギョピョイ―――――――ンッ!!
「だぁぁ――――まらっしゃいなのであぁぁ―――――――る!!」
団員達に太陽達がどうなったのかをグロウスが告げようとした瞬間、爆音とも超音波とも言える不協和音とドクター・カーウィンの叫びが指令室に響き渡る。
その不協和音に団員達が振り返ると、其処にはエレキギター構えるドクター・カーウィン。
訝しげな団員達の視線を浴びつつドクター・カーウィンは団員達を掻き分けて前に進み、グロウスの前に出る。
「何の用だね、ドクター?」
演説を不協和音で遮り、敬意の欠片も見せず前へ出たドクター・カーウィンにグロウスは顔を顰め、彼はフン…と鼻を鳴らす。
「好き勝手言いたい放題であるなぁ、グロウスよ。セラエノ攻略隊は、何時から貴様等のモノになったであるか? アンポンタンでスカポンタンな貴様の演説、我輩のスーパーな耳がデロリと腐って溶けそうになったのである」
上司を上司と思わぬドクター・カーウィンの発言に団員達は息を呑み、グロウスは悪意に満ちた視線をドクター・カーウィンへぶつける。
その悪意は常人なら卒倒してもおかしくない代物であり、直接ぶつけられた訳でないのに数人の団員が卒倒する程だった。
そのような視線を直接ぶつけられても、ドクター・カーウィンの態度は変わらない。
「そのような考えを、我々は持っていないのだが。アレスタ亡き今、部隊をまとめるのは幹部である我々の役目では
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