セラエノは混乱していた……滅多に姿を見せない『災害の体現者達』、たった一人でも恐慌を齎すに充分な脅威たる存在が、二人同時に現れたからだ。
太陽が『噴火』と『地震』と戦った地点は戦闘の余波で瓦礫の荒野と化したが、学生達は学業に励む時間帯だった為に人的被害は奇跡的に軽微だった。
然し、『災害の体現者達』二人が現れたという現実は、セラエノの住民達に動揺と暗い影を齎すには充分だった。
この事態に学園長たるアンリ・N・ウィルマースは戒厳令を発令、防衛班に属する学生を除いた全住民を地下シェルターへと避難させた。
また、住民達の避難と同時に、本格的な戦闘行為に不慣れである防衛班の戦力補強の為、首都・アーカムに魔王軍の派遣を要請。
防衛班の主力にして切り札である太陽とシャッドも無事に完治し、二人はいざという時に疲労で倒れてしまわない程度に自己研鑽に励んでいる。
何時来るか分からない攻撃に備え、セラエノは着々と迎撃準備を進めていた。
×××
「…………………………」
アンリに与えられた家で俺はベッドに腰掛けて悩んでる、どうすべきかで悩んでる。
正導真理会と戦う事に悩んでる訳じゃなく、今の俺の悩みは別の悩みだ。
シャッド……俺の愛しい大事な彼女であり、初恋の魔物。
今の俺にシャッドを守れるか、ソレが俺の今の悩みだ。
ベッドには掛布団に包まり、安らかな寝息を立てて眠るシャッド。
何時来るか分からない正導真理会の攻撃、シャッドも流石にソレが分かってるのか。
『噴火』と『地震』との戦いで負った怪我が完治してから、一週間……シャッドは日常の一部である交わりを求めず、どうしても精が必要な時以外は我慢してる。
「シャッド……」
眠るシャッドを起こさないように、俺はシャッドの髪を優しく梳く。
正直、シャッドを守れるか不安だ……制御不能だったクトゥルフとハストゥールの力は、錬金した二丁拳銃のお陰で制御出来るようになった。
然し、ソレでも不安は拭えない。
今までの戦いじゃ、ドクター・カーウィンは兎も角、『災害の体現者達』を相手にした場合、俺達は撤退させるのが精一杯だった。
ソレもアレスタの介入だし、『噴火』と『地震』は不測の事態―クトゥルフとハストゥール、二人の器の錬金―で撤退しただけで、実力で撤退させた訳じゃない。
「俺達は、勝てるのか……?」
勝てる勝てないではなく、勝つ。
んな事は痛い程に分かってるが、それでも疑問形にならざるを得ない。
ソレ以前に、俺はシャッドを守れるのか?
失いたくないと切に想い、願う程に大事なシャッドを俺は守れるのか?
無事だったから良かったが、あの時の俺は何も出来なかった。
そんな体たらくの俺に、大事なシャッドを守れるのか?
「…………………………」
勝てなくてもいい、無様でもいい、何が何でもシャッドを守りたい。
そう思った俺は、一つの決断を下した。
失うぐらいなら、大事なシャッドを死なせてしまうぐらいなら。
もう二度と、二度とシャッドを戦わせたくない。
死と隣り合わせで戦うのは、俺だけでいい。
「言霊に因る行動制限。我が愛しきシャッド・メル、失いたくないと切に願い、想う者よ。『全てが終わるまで安らかに眠れ』」
「ん……んぅ……」
シャッドの耳元で俺は囁く。
コレでシャッドは俺が死ぬか、正導真理会との戦いが終結するまで眠り続ける。
コレで良い、コレで
―ズドォォ―――――ンッ!!
「っ!?」
言霊に因る行動制限を施した直後、突然の爆発音に俺は窓に近付く。
見れば遥か遠く、セラエノの外周部に築かれた防壁が燃え、夜空を紅く染めていた。
「来たかっ!」
今の爆音はセラエノ攻略隊の攻撃だろう。
とうとう攻撃が始まった事を悟った俺は即座に術衣形態へ移行、窓を開けて夜空を翔け
「っと、忘れてた」
る前に、シャッドが眠るベッドに何重にも『障壁』を張る。
コレだけ重ねとけば、そうそう壊れる事も無い。
「…………行ってくる」
そう呟いた後、己は戦場に向かって羽撃(ハバタ)いた。
×××
「何じゃ、こりゃ?」
全速力で防壁に向かった俺は、眼下の光景に呆然と呟くしかなかった。
眼下に広がるは撤退戦……防衛班が後方に下がりつつ攻撃し、正導真理会の団員と鬼人型『らしい』バルバロイが突き進む。
あ? 何で『らしい』かだって?
何故なら、眼下で突き進む鬼人型は己の知る鬼人型とは違ってたからだ。
あくまで『人間っぽい』のが以前の鬼人型だが、眼下の鬼人型は例えるなら『首の取れた鋼鉄のデュラハン』、首無し騎士がぞろぞろ歩いてるのは何気にホラーだ。
「まぁ、ブッ壊して、ブッ殺す事には変わらねぇけどな! クトゥルフ、ハストゥール!」
見た限り、防衛班が不利っぽいな……己は防衛班と正導真理会の間に向かって急降下し、急降下と同時に神の器を召喚する。
「
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