「此処、は……?」
目を覚ました俺は、真っ先にそんな疑問を抱いた。
此処は……毎度お世話になってる防衛班本部の医務室、か?
何で、俺は此処に居るんだ?
確か、えぇと、シャッドと一緒に特訓に行こうとしたら、クティラを抱えた『通り魔』と出会っただろ?
その後、『通り魔』とクティラを追ってきた『噴火』と『地震』に遭遇した。
んで、二人と戦って、シャッドが来て、ドラパンチくらった『噴火』がキレて、シャッドが『噴火』にペチッと叩き潰されて……その後が思い出せない。
何か、こう、プッツ――――ン!! したのは何となく覚えてるが、ソレ以外サッパリだ。
「あら、漸く起きたのね」
「おはよう、と言いたい所だが……今は昼故にこんにちは、かのぉ」
妙に重たく、潤滑油の切れた機械のように軋む身体。
上半身を起こすと、紋章が疼くのと同時に小さめのクトゥルフとハストゥールが現れる。
「なぁ、何で俺は此処に居るんだ?」
「お主、覚えておらんのか?」
いや、全然覚えてない……ハァ、と呆れた溜息を吐いた二人は、シャッドが叩き潰された後の事を話す。
シャッドが叩き潰された事にキレた俺はクトゥルフとハストゥールを嘗ての姿で召喚し、『武装生成』で二人の力を制御する為の器を創った事。
その器は自動式拳銃と回転式拳銃……指向性を与える事で二人の力の制御が可能、というハストゥールの助言を元に俺が創ったそうな。
んで、ソレを使って『地震』と『噴火』を撃退、過剰放熱寸前だった俺はハストゥールの制止を無視して、逃げようとする二人を仕留めようとした事。
ハストゥールの介入で魔力欠乏に陥った俺は意識を失い、意識を失った俺と重傷を負ったシャッドは防衛班の方々に此処まで運ばれたそうだ。
因みに、この戦いから既に一週間は経ってて、俺は一週間も眠り続けてたそうな。
「……………………」
改めて聞くと、無理・無茶・無謀の三拍子揃った馬鹿をやらかしたんだな、俺。
現神の中でも実力者たる二人を召喚し、神の器を錬金する……普通に考えたら、『偉大なる八人』でも失敗しても文句は言えない事を、俺は『無意識的』に行った。
俺の位階でよく出来たな、ソレ。
「……そう言えば、『通り魔』は?」
己の無謀さ加減に呆れた溜息を吐いた後、俺はクトゥルフとハストゥールに『通り魔』の事を聞く。
俺の記憶が確かなら、シャッドの案内で此処に連れてこられた筈なんだが。
「『通り魔』……あぁ、貴方を殺すとか言っていた彼ね。彼なら、三日前に貴方への伝言を残して去っていったわ」
「伝言?」
首を傾げる俺に、ハストゥールは『通り魔』の残した伝言を……『通り魔』が後で話すと言った、クティラを連れてきた事情を俺に告げる。
曰く、クティラはクトゥルフを従わせる人質であり、『通り魔』の部屋で軟禁されてた。
神を従わせる人質を手に入れた事に、アレスタの副官たる『大嵐』……『災害の体現者達』の最後の一人は、クトゥルフと一緒に俺を引き入れようと画策してたそうだ。
セラエノ攻略隊にとって、俺は最大級の危険人物であるのと同時に、団員にすれば破格の戦力となる存在だ。
まぁ、現神二人と契約したんだから当然か。
どうやってかは知らんが、ソレを知った『通り魔』は俺への復讐が邪魔されると予測した。
『俺が殺したいのは『本洲太陽』だ……正導真理会に洗脳されれば、『本洲太陽』は『本洲太陽』ではなくなる。俺の憎悪、己の罪業を知らぬ『本洲太陽』を殺しても、俺の復讐は果たされない』
との事で、何がどう違うのかがよく分からんが、兎に角『通り魔』はクトゥルフと一緒に俺がセラエノ攻略隊の一員になる事を嫌がった。
故に、クトゥルフを従わせる為の人質を、クティラを俺達セラエノ防衛班に引き渡そうと思い、彼女と共に脱走したそうだ。
「そうそう、最後にこう言っていたわ……『借りが出来た、この借りを返してから貴様を殺す。俺は恩を仇で返す程、落魄れてはいない』、って」
「あ、そう……」
クティラはクトゥルフを従わせる人質で、オマケに連れ出したのは『地震』曰く『災害の体現者達』最強である『通り魔』。
幹部の中で最強となれば、『通り魔』はアレスタの次に強い……だから、『災害の体現者達』二人を動員するのも当然、事情と理由は理解出来たが最後の言葉は余計だっつの。
まぁ、借りを返す―借りをどうやって返すかは分からんし、そもそも『通り魔』に借りを作った覚えは無いんだが―まで、『通り魔』は俺を殺すつもりは無いようだ。
「おぉっ! 漸く目が覚めたか!」
ハストゥールから『通り魔』の事を聞き終わった直後、扉を開けて見舞いの品らしい果物籠を持ったエドワードさんが医務室の中に入ってくる。
見舞いの品は嬉しいが、精力剤や媚薬を一緒に持ってきた前科あるし、その内容には期待しないでおこう……って、そうだ。
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