「間に合ってくれよ……!」
『雪崩』をエドワードさんに任せた己はシャッドを抱え、全速力でアンリの部屋目指して飛んでた。
空から見たウィルマース邸は『H』型……三階建てのウィルマース邸の二階中央に東西を繋ぐ渡り廊下が、各館の端っこに上の階と繋がる階段がある。
己達が居た客間は東館一階、『雪崩』と遭遇したのは東館側の渡り廊下手前、アンリの部屋は西館三階の端っこ、と地味に遠い。
『雪崩』の連れは西館から侵入したらしく、西館は血の臭いで満たされ、あまりの濃さに吐き気も失せる程だ。
「うげぇ……」
「あ゛ぅ……」
三階に上った途端、血の臭いに混じって酷い汚物の臭いが混じり、不快指数MAXの悪臭に己達は顔を顰める。
オマケに三階廊下は血の海……絨毯は赤黒く染まり、吸収しきれなかった血が水溜まりのように廊下に点在してる。
壁と天井もペンキを塗りたくったように真っ赤に彩られ、彼方此方には巨大なミキサーで粉砕されたようなミンチ状の肉片が飛び散ってる。
(それにしても、この魔力……まさか、『アイツ』か?)
顰めっ面で廊下を飛ぶ己は悪臭に混じって漂う魔力に嫌な予感を抱き、速度を上げた瞬間だった。
「嫌ぁぁ――――――――――――っ!!」
「っ!!」
「アンリのコエだ!」
言われなくても分かってる……悲鳴の出所は漸く見えてきた突き当たり、扉が開けっ放しの部屋が絶対アンリの部屋だ!
己は全速力で惨劇の跡残る廊下を飛び、開けっ放しだった扉を潜り抜ける。
「嫌ぁ、離してぇ!」
「離してと言われて、離すお馬鹿はいないわよん☆」
其処には袖だけ残して寝間着をひん剥かれた殆ど全裸状態のアンリと、アンリを組み敷くピンクと黒の横縞模様の全身タイツに身を包んだ変態。
「『歪曲粉砕脚』! ホォアチャァ―――――ッ!!」
「はぁ? ぷげらっ!?」
部屋へと飛び込んだ瞬間、飛び込んだ勢いそのままに己は某アクション映画の主役っぽい奇声と共に『歪曲粉砕脚』を変態に叩き込む!
『歪曲粉砕脚』をくらった変態は見事に反対側の壁へ激突、激突した壁にめり込む。
「ギリギリセーフ、って所か……アンリ、大丈夫か?」
シャッドを下ろした後、己は涙で顔がクシャクシャのアンリを引き起こし、片膝をついて目線を合わせてから茫然自失のアンリの頬をペチペチと軽く叩く。
因みに、シャッドは壁にめり込んだ変態を用心深く見据えてる。
「あ……」
何度か叩くと目に生気が戻り、生気が戻った事を確認した己はアンリの頭を優しく撫でる。
「コレからアイツをブッ潰す……だから、アンリは己の後ろに下がってな」
アンリに後ろへ下がるよう命じてから己が立ち上がるのと、変態が壁にめり込んだ身体を引き剥がしたのは、ほぼ同時。
やっぱりと言うか何と言うか、あのくらいじゃ『アイツ』も平気だろうなぁ。
「あ〜ら、誰かと思ったら太陽ちゃんじゃない? お久し振りねぇ♪」
「へ?」
「え?」
めり込んだ身体を引き剥がして立ち上がった変態の言葉に、シャッドとアンリは己に疑問の視線を向ける。
「久し振りだなぁ、『蝗害』……彼是、一年振りか?」
「そうね、確かに一年振りかしら?」
『蝗害』は五体の機能を確かめるように腕や首をグルグル回して、屈伸運動を始める。
緊張感の欠片もねぇ動きだが、此奴に油断は禁物だってのは『骨の髄まで染みてる』己は油断無く身構える。
「敵を取り逃すなんて駄目ねぇ、隊長にチクっちゃおうかしら? ま、取り敢えず改めて自己紹介……アタシは『災害の体現者達』の一人、『蝗害』よん。ヨロシクね☆」
腰に手を当ててプンプンと怒った後で『蝗害』は親しげに挨拶するが、その挨拶に親愛の情は欠片も無く、在るのは悪意と狂気に満ちた強烈な殺意だけだ。
「実はねぇ、アタシ、物凄ぉ〜く怒ってるのよ? 折角アンリちゃんとウッフンアッハンハッスルしようとしてたのを、アンタに邪魔されたんだからねぇ……」
『喜』を表す『蝗害』の緑色の仮面が『怒』を表す真っ赤な仮面に変わると同時に、『蝗害』の両手から巨大な鉤爪が現れる。
ソレが触れたらどうなるか、想像するのは難しくない……くらったら最後、己達も廊下のミンチの仲間入りだ。
「さぁ、お前の初陣だぜ……『シャッドの竜角剣』!」
鉤爪構える『蝗害』に対抗すべく、己は尻尾を巻き付けてた鉈の柄を掴む……って、あ、名前決まった。
巻き付けてた尻尾を外し、シャッドの竜角剣の感触を確かめるように己は数回振るうと、ブォン、ブォン…と鈍い風切音が響く。
鈍い風切音は片手剣としては破格の重量の証、コレなら何でも引き千切れそうだ。
「殺(しゃ)殺殺殺殺殺殺ァァ――――ッ!!」
鉤爪を見せつけた後、『蝗害』は身体を独楽のように回転させて己に突っ込んでくる。
不規則な軌道ながら確実に己との距離を詰める動きは捉え所が無く、己の目を幻
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