File.02 The omen

「……報告は以上なのである」
セラエノから数十キロメートル離れた地点に座するは鋼鉄の大百足。
正導真理会の移動前線基地であるバルバロイ百足型の内部、鋼鉄の大百足の頭脳でもある指令室でカーウィンは任務失敗を報告していた。
「…………」
報告を聞くのは二人……正導真理会セラエノ攻略隊を束ねる隊長であるアレスタと、彼の腹心であり副隊長を務める褐色肌の男。
アレスタは玉座にも見える椅子に座り、ただ退屈そうに前髪を弄っており、カーウィンの報告は彼の耳に届いていないように見える。

「つまり、ワームの討伐に失敗した挙げ句、おめおめと逃げ帰ってきた訳だな?」
退屈そうなアレスタの隣に立つ褐色肌の男は、不満感を露にして吐き捨てる。
褐色肌の男は気品を感じさせる仕立ての良い白いスーツを身に纏うが、目鼻立ちの整った精悍な顔立ちにはあからさまな冷笑を張り付けている。
冷笑の張り付いた顔と侮蔑で見下す酷く冷たい目、その前では品の良いスーツも色褪せて見える。
この男の名はグロウス・ガラ……セラエノ攻略隊幹部・『災害の体現者達』の一人、『大嵐(テンペスト)』を冠する魔術師である。

「全く、情けない……大天才を自称しながら一蹴されるとは、大天才も撤回すべきだな」
「ぐっ……アレは不意を突かれただけであり、我輩は負けを認めた訳ではないのである!」
鋭く冷ややかな視線をぶつけるグロウスに、カーウィンは顔を歪めながら反論する。
不意を突かれたのは事実であり、万全な状態なら勝利の報告を携えて戻ってきた。
少なくともカーウィンはそう考えており、敗北を認めるのは彼のプライドが許さなかった。
「ほぅ? 自慢の最高傑作は、素姓の知れない人間に歯が立たなかったと?」
だが、グロウスはカーウィンの自尊心を踏み躙るように皮肉な笑みと共に容赦無い嫌味を浴びせる。

「き、貴様ぁっ! 言わせておけばぬけぬけとぉ!」
「事実を述べただけだ」
容赦無き嫌味を浴びせられ、顔を真っ赤に染めたカーウィンは心の中で彼の胸倉を掴んで顔面を殴っていた。
行動に移さないのはグロウスに勝つどころか彼の胸倉を掴む見込みすら付かない事を理解しているからであり、その程度の計算が出来る冷静さをカーウィンは残していた。
侮蔑で見下すグロウスと屈辱に燃えるカーウィンの間に、一触即発の危うい空気が流れ
「――二人共止せ、気が滅入る」
一触即発の空気はアレスタの一言で霧散する。
その静かな呟きに熱せられた鋼の如く燃えていた身体は一気に冷め、カーウィンの気勢は削がれる。

「余に貴公を咎めるつもりは無い……彼の人間が何者か分からぬ上に不意を突かれたなら、遅れを取るのも無理からぬ事だ」
「お、お言葉ですが、隊長……我輩のバルバロイが遅れを取る事など」
おずおずと進言するカーウィンだが、アレスタの視線に彼は直ぐに口を噤むしかなかった。
傲岸不遜且つ怖いモノ知らずのカーウィンでも、目前のアレスタは別だ……得体の知れぬ威圧感は、そんなカーウィンにも底知れぬ恐怖を与えるには充分過ぎる。
得体の知れぬ威圧感の伴う視線でカーウィンを見据えていたアレスタは、不意に玉座から緩慢な仕草で立ち上がり、立ち上がる彼にカーウィンとグロウスは首を傾げた。

「グロウス、留守を頼む」
「……は?」
突然立ち上がり、唐突に留守を頼まれたグロウスは惚けた表情でアレスタを見つめ、その視線にアレスタは薄い笑みを浮かべて答える。
「彼の人間が何者か、興味が湧いた……それに、余とて遊びに興じたくなる時もある」
言い終わると同時にアレスタの姿は闇に溶けるように消え、指令室には惚けるグロウスとカーウィンだけが残された。

×××

「さて、本洲さん? 何か言いたい事はありますか?」
「………………」
俺、本洲太陽は人生最大級の危機に陥っていた。
超大型バルバロイをブッ飛ばした後、俺はいきなりの『念話(テレパス)』―思念で会話する通信用の魔術だ―に驚きつつ、『念話』の指示に従いながらセラエノ大図書館付属学園を訪れた。
んで、訪れたのはセラエノ防衛班の本部……其処には、にこやかな笑みで青筋を浮かべるアンリさんが待ち構えていた。
「あ、あのぉ……めっちゃ、怖いんですが」
「あらあら? 私の何処が怖いのですか? うふふふふふふふふふふ」
めっちゃ、怖ぇぇぇぇぇぇぇっ!!
不動明王様の口元だけ恵比寿様―ドッチもジパングで信仰される土着の現神だ―の口元に挿げ替えたような笑みを浮かべるのは止めてぇぇぇぇぇぇっ!!

「まぁまぁ、お嬢、落ち着け……んな怖い笑顔浮かべられたら、チ○コ縮んで話せる話も話せなくなるって」
「全く、貴方は……それで、本洲さん? 事情の説明をお願いします」
エドワードさんがアンリさんを宥めるが、さり気無く下ネタ混ぜるのも止めれ。
下ネタの混じったエドワー
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