〜大陸南西部・無名遺跡〜
「此処に来るのも、懐かしいなぁ……」
上半分が吹き飛び、砂に埋もれつつある遺跡を眺めながら、フェランは感慨深く呟いた。
フェランが戦地に選んだのは嘗て彼女が生まれ、エヴァンと出会った無名の遺跡。
そして、フェランと『人類の護符』の因縁が生じた地でもある。
生まれ故郷たる遺跡から視線を外し、フェランは背後に居る『魔物娘捕食者』を見据える。
「あの時の……生まれたばかりのアタシとは全然違うんだからね、包帯」
そう、フェランがセレファイスで対峙したのは『GE‐08』、フェランの生まれ故郷たる無名遺跡に蔓延っていた包帯である。
「でも、この依代は……誰なの?」
元々、死体を依代とする『GE‐08』、初めて遭遇した時と依代と違う事は想定済みだ。
だが、フェランが対峙する『GE‐08』の依代は、彼女の知る存在とは全く異なる存在だったのは想定外だった。
「熊天使かぁ……蜂蜜か鮭が好物だったりして」
『GE‐08』の依代となっているモノは、言葉で表現すれば『天使の翼を持つ白熊』。
目算でも二メートルはある巨躯、腕には無骨ながらも荘厳な意匠であしらわれた腕輪。
黒い爪は長く、鋭く、鋼鉄すらバターの如く容易く切断出来そうな代物であり、生身で受ければ精神衛生上良くない事になりそうである。
「ま、関係無いよね……アンタはアタシがブッ飛ばすんだから!」
そう叫んだフェランは『重塊』を熊天使目掛けて放ち、戦いの開幕を告げた。
「ソレソレ、ソレェェ――――――ッ!」
フェランは交互に腕を前に突き出しながら『重塊』を連続で放ち、熊天使は足がとられ易い砂漠とは思えない程に機敏な動きで無数に放たれる『重塊』を避ける。
『重塊』の弾幕を避けつつ熊天使は徐々にフェランとの距離を詰め、魔法が主体であるフェランは後方へ跳躍しつつ熊天使から距離を取る。
「『重塊』じゃ駄目かぁ……それなら!」
軌道が直線的な『重塊』では避けられる……故にフェランは両掌から複数の『重榴塊』を放ち、『重塊』に紛れて放たれた『重榴塊』は熊天使の近くで破裂する。
『…………!』
破裂した『重榴塊』は小型の『重塊』を撒き散らし、撒き散らされた魔力の飛礫に熊天使は否応無く足止めされる。
「其処、だぁぁっ! 『重断剣(グラティナ)』!」
撒き散らされる『重塊』に足を止めた熊天使、フェランは『自身が編み出した』魔法を詠唱する。
振り上げられるフェランの右腕には漆黒の大剣……いや、フェランの右腕にあるのは大『鉈』、『ただ単純に重量で引き千切る』だけの無骨で兇悪な魔力の塊だ。
「ブッ、千切れろぉぉ―――――っ!」
愛らしい顔に似合わぬ兇悪な台詞と共に、フェランは漆黒の大鉈を振り下ろす!
迫る漆黒の大鉈を熊天使は腕を交差させて防ごうとが、その防御も無意味である……なにせ、フェラン振り下ろす大鉈は三〇センチという分厚過ぎる刀身を持っているのだから。
『…………!』
厚さ三〇センチの大鉈に抗う術は無し、熊天使は縦真っ二つに両断され、叩き下ろされた大鉈は轟音と共に盛大に砂埃を巻き上げる。
フェランは刀身一〇メートルはある大鉈を一般的な刀剣類と同サイズにまで縮小させ、真っ二つに引き千切った熊天使を見据える。
「やっぱり、『引き千切った』程度じゃ駄目かぁ。ボイドかホーヴァスなら、あっという間にコイツを蹴散らせるんだろうけどなぁ……」
溜息混じりに呟くフェランの目前では、熊天使に巻かれた包帯が真っ二つにされた身体を繋ぎ合わせている。
身体を繋ぎ合わせ、準備運動するように身体を動かす熊天使に、フェランは再び溜息を吐く。
闇属性魔法を武器に例えるなら鉄鎚や棍棒等の打撃武器……外部から強烈な衝撃を与え、敵を内部から破壊する魔法である。
死体を依代にする『GE‐08』には打撃は勿論、切断も通用しない。
絶対零度で全てを氷結粉砕させるホーヴァス、灼熱の吐息で万物を燃やし尽くすボイドならば、『GE‐08』を文字通り瞬殺する事が出来るだろう。
だが、この場に居ない二人に頼っても無意味である。
「だけど、アタシは負けないよ! だって、大好きなエヴァンとずっと一緒に居たいから!」
仮初の生命と言えど『GE‐08』も生物……生物である以上再生には魔力が必要であり、魔力は無尽蔵のモノでは無い。
何度も再生するならば、再生出来なくなるまで引き千切り、叩き潰すまで。
「だから、問答無用で」
『ブッ千切る、ってかぁ? そりゃ、無理ってもんだ』
そう意気込んだ瞬間、熊天使がフェランの意気込みを嘲笑うような声で言葉を発し、フェランは聞き覚えのある声に身体を強張らせた。
その声をフェランは忘れない、忘れられる筈は無い。
何故なら、その声は世界の怨敵、オリバー・ウェイトリィの声だったのだから。
×××
『久し振り
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