〜ングラネク山脈・地底湖〜
「…………!」
水飛沫を上げて、キーンは故郷であるングラネク山脈の地底湖に着水した。
この地底湖は、キーンにとって懐かしい場所だ……先祖代々暮らしてきた故郷であり、愛するエヴァンとの馴れ初めの地であり、海に住まう友人達と平和を享受していた地。
だが、今のキーンは感慨に浸る暇は無い。
何故なら、この地底湖に訪れたのは彼女だけではないのだ。
(…………)
セレファイスでキーンが接敵したのは、彼女と因縁の在る『GE‐05』。
されど、決戦に備えて新たに生み出された改良型なのか、一年前に遭遇した『GE‐05』と目前の『GE‐05』は細部が異なる。
一年前に遭遇した個体と比べるとズングリムックリとした体躯は二回り程大きく、ソレに比例して触角も長く、先端は一〇本に枝分かれしている。
目つきの悪い小さな目はキーンを睨み、キーンも油断する事無く睨み返す。
(…………?)
キーンが銛を構えた瞬間、『GE‐05』も動いた……鋭い牙が不揃いに生えた大口を限界まで開けると、キーン程はあるオタマジャクシが何体も飛び出してきた。
飛び出してきたオタマジャクシは光に包まれ、光は膨らみながら形を変え、身を包む光が消えた時にはオタマジャクシではなかった。
(…………!)
キーンの目前に居るは、複数の『GE‐05』と『GE‐05』に酷似した蟇蛙。
『GE‐05』と酷似した蟇蛙、外観的に触角以外の差異は無い……複数に枝分かれした触角ではなく、先端に裸体の美丈夫が吊るされている触角が生えている。
以前スティーリィから渡された報告書に因れば、『GE‐05』には触角以外は全く同質の『魔物娘捕食者』が存在している。
『GE‐06』、識別名・ハイドラ……『GE‐05』識別名・ダゴン同様、量産を前提に生み出された怪物であり、質ではなく量に因って魔物を害する存在である。
(…………!)
複数の『GE‐05』と『GE‐06』―面倒なので、以降はダゴン・ハイドラと識別名で呼称する事にする―は大口を開け、一斉にキーンへと迫る。
後脚を懸命に動かし、ズングリムックリとした体躯とは思えない意外な速度でダゴン達は迫り、一際大きいダゴンは何故か動かない。
キーンは追われる形で泳ぎ出し、尾鰭と水掻きを駆使して瞬く間にダゴン達から離れる。
水中の狩人・サハギンにとって水中は本領を発揮出来るホームグラウンド、元が蟇蛙のダゴン達も水中戦は得意な部類だと思われるが、それでもキーンには劣るだろう。
(…………ふっ!)
速度はそのままにキーンは方向転換、迫るダゴン達に魚雷の如く突進する。
狙うは脳髄……一年前の戦いと変わっていないなら、如何に高い自己治癒力を持とうとも脳髄を破壊すれば再生出来ないだろう。
そう判断したキーンは先頭のダゴンとすれ違い際に上へ回り込み、巨体に見合わぬ小さな脳髄収まる頭部へ銛を深々と突き刺す。
脳髄を正確に貫かれたダゴンは地上ならば断末魔の咆吼を上げていただろう、水中である故に声にならぬ声を上げ、ダゴンは痙攣しながら死に絶える。
(…………!)
脳髄を貫いたキーンに大口を開けて迫るハイドラは、同胞の屍を齧ると共に彼女を飲み込む。
ハイドラとダゴンの口腔内には拷問器具・鋼鉄の処女(アイアン・メイデン)の如く無数の小さな牙が生え、咀嚼するだけで鋼鉄の処女に収められた魔女の如くキーンは穴だらけになる。
キーンを口腔内に収めたハイドラは口腔内に違和感を抱くが、小さな脳髄はその違和感を無視して咀嚼しようとする。
苦痛はあれど本能でもある目的―魔物の殲滅―の遂行を優先し、ハイドラは飲み込んだキーンを吐き出そうとは思わなかった。
(…………ばっちぃ)
故に、ハイドラは口腔を貫かれ、脳髄をキーンに抉り出される事になった。
脳髄と肉片が漂う水中をキーンは縦横無尽に泳ぎ回り、的確にダゴンとハイドラの脳髄を銛で貫き、確実に数を減らしていく。
一方、離れた位置に居る一際大きいダゴンは、蟲を吐く巨人『GE‐02』のように口を開けてはオタマジャクシを吐き出し、倒された分だけのダゴンとハイドラを呼び出す。
(…………キリが無い)
銛で脳髄を貫き、時には同士討ちを誘い、ダゴンとハイドラを減らすキーンは胸中で呟く。
今の状況は一年前に遭遇した『GE‐02』と酷似した状況であり、何れ疲労で動きが鈍った所を狙われてクッキーを齧る程度の気安さで噛み砕かれるだろう。
故に、キーンは手早く一掃する事にした。
(ニーケの勝利の印において我に力を与えよ、力を与えよ、力を与えよ。霊験灼たかなる魔銛よ、我が眼前の怨敵を殲滅せよ)
キーンは『武装錬金』を詠唱……後々を踏まえて銛の複製を一〇本に留め、『必中』と『追跡』を一〇本の銛に付与してから、キーンは次々と銛を投擲する。
キーンは、『武装錬
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