ExtraReport.02 俺と教団と過去の怨念

〜交易都市・セレファイス〜
「……………………」
「あ、エヴァン居たのさ。エヴァン、ダーリンが呼んでるのさ……って、聞いてる?」
「……………………」
「エヴァン、エヴァーン、エ〜ヴァ〜ンッ! ……むぅ、全然聞こえてないみたいなのさ」
「……………………」
「う〜ん……せりゃぁっ! なのさ」
―ガインッ!
「いってぇぇぇぇ―――――っ!?」
俺、エヴァン・シャルズヴェニィは、ゲイリーの医療所の裏庭の一角にてジパング伝来の精神集中方法・『ザゼン』をしてたら、思いっきり頭をぶん殴られた。
畜生っ! 誰だ、ザゼンの邪魔した奴は!
ぶん殴られた部分を擦りながら俺が背後に振り返ると、其処には古ぼけたスコップを肩に預け、清潔さに溢れる桃色の看護服を着たジャイアントアントが一人。

「エルザじゃねぇか……何だよ、何か用でもあんのか?」
「用ならあるのさ。ダーリンが、エヴァンを呼んでたのさ」
俺をぶん殴ったジャイアントアントの名はエルザ、一ヶ月前から此処に居候して……いや、居候じゃなかったな、ゲイリーの『押し掛け女房』だ。
一ヶ月と一週間前、俺達はボイドの友人であるジャイアントアント達の救出に向かった。
救出は見事成功……出不精のゲイリーを強引に引っ張ってきて、一週間程ブリチェスター復興に従事したんだ。

その時、ゲイリーの何処に惹かれたのか、ゲイリーにエルザが一目惚れして、帰る前日の夜に夜這いで既成事実を作ったエルザはそのまま付いてきたのだ。
あの時は本気で勘弁してほしかったな……何が悲しゅうて、「おふぅ」とか「あひぃ」とか、男の喘ぎ声を聞かにゃならんのだ。
因みに、その時同室に居た俺はゲイリーとエルザの喘ぎ声でバッチリ眠れず、寝たふりで何とか切り抜けた。
兎に角、既成事実を作られた以上、無碍にする事も出来ず、看護婦として手伝う事を条件にエルザを迎え入れたという訳だ。

「若しかして、頼んでたアレか?」
ゲイリーが呼んでたって事は、ブリチェスターに行く前に頼んでた事絡みか?
「頼んでたアレが何かは知らないけど、全然違うのさ。エヴァンにお客さんが来てるのさ」
「俺に客? その客って、エキドナだったか?」
「うぅん、エキドナも居たけど男の人も居たなのさ」
うぅん……エキドナの客ならローラさんだろうけど、男の方が見当付かん。
まぁ、此処でウンウン唸っても仕方ないし、さっさと会いに行くとすっか。

「「「「「…………」」」」」
「失礼しましたぁぁっ!」
ゲイリーの医療所の待合室に着いた俺は、即座に回れ右して逃げようとした。
だって、待合室の空気がめっさ冷たいんだもん! 俺、裏庭で大人しくザゼンしてる!
「やぁ、君がエヴァン・シャルズヴェニィ君だね」
逃げようとした俺を引き留めたのは、力強さと優しさに溢れた低い声。
その声に引き留められた俺は声の主が誰なのかと振り返ると、其処には純白の甲冑に身を包んだ壮年の男が居た。
「初めまして、になるかな? 私はスティーリィ・ゴールディ……『教団』の騎士だ」

×××

「…………」
あぁ、待合室の空気がかなり冷たいのも理解出来たぜ。
俺達、親魔物派と魔物にとって最悪な敵が、一人でノコノコと来たんだからな。
因みに俺を除いて待合室に居るのは、フェラン、コラム、ローラさん、キーン、ボイド、ゲイリー、それとスティーリィと名乗った教団の騎士。
フランシス様は所用で出かけてるから、今は医療所にいない。
「そんなに、睨まないでくれたまえ。私は君達と争いにきた訳じゃないんだ」
信用出来るか、んな言葉……俺はスティーリィを睨みつつ、魔力探知で周囲を探る。
「言っておくが、本当に私一人だよ。あと、私はゲイリーの友人だ」
げ、ゲイリーの友人だって!?
スティーリィの言葉に俺達は一斉にゲイリーへ視線を向ける……ゲイリー、お前、教団の関係者だったのかよ!?
「ふむ、円滑に物事を進める為にもウォー……ゲフンッ、スティーリィと我輩の関係から話さねばならんのであ〜るな」
冷たい視線も何のその、ゲイリーは何時もの調子でスティーリィとの関係を話し出した。

「我輩とスティーリィが知り合った切欠は、五年前に我輩が発表した論文なのである」
曰く、『医学的方法による死者の蘇生』の研究が父さんの鉄拳制裁で中断されたゲイリーは、今度はコレからの社会についての考察を始めた。
あぁ、そう言えば、何となく憶えてるぞ……父さんの書斎から何冊も本を引っ張り出したり、当時一一歳とは思えねぇ行動力で何処かに遠出してたりしてたっけ。
その考察を纏めた論文の題名は『魔物と人間の関係の変化に伴う社会の変容』で、内容はコレから魔物が増え続けた場合この世界はどうなるのか、だっけ。
内容を簡潔にまとめると、近い将来―早くて約二〇〇年後―、女性が全て魔物に変化して人間が絶滅する代わ
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