Report.04 俺と竜と肉団子 後編

「先手必勝ぉっ! 『重塊』!」
角から飛び出したフェランは両掌に自身の魔力を球状に凝縮し、二つの魔力球を肉団子の群の両端目掛けて放つ。
純粋な力の集合体である魔力球は狙い通りに群の両端に着弾し、着弾地点にいた肉団子の十数体が爆発する。
同胞の爆発で漸くフェラン達の存在に気付いた肉団子の群は、扉を破る事を放棄して己の目的であり本能―体内に侵入して自爆し、内側から破壊する―に従って突貫する。

『フェラン……アンタは精霊の一種だから、闇属性魔法しか使えない。アンタの場合は、ソレを徹底的に伸ばしてくよ』
ダークマターは肉体が純粋な魔力のみで構築されている事、魔力の還元に因る豊穣能力を持つ事から精霊の一種だと言われている。
精霊は自身の司る属性―シルフなら『風』、イグニスなら『炎』といった具合だ―の魔法が先天的に特化されており、他の属性魔法の体得・行使は不可能だ。
その分、自身の属性魔法に関しては天賦の才を誇り、闇の精霊と言われているダークマターであるフェランの場合、闇属性魔法に特化されている。

闇属性魔法とは純粋に魔力を利用する魔法で、悪く言えば『力押し』の魔法である。
炎なら火傷、氷なら凍傷、風なら裂傷といった、属性に対応した自然現象に因る副次効果を闇属性魔法は得られない。
だが、その分、純粋な破壊力は他の属性魔法と比較すれば頭一つ……いや、二つ、三つは軽く抜きんでている。
副次効果を得られぬ分、破壊力に特化された魔法……ソレが闇属性魔法で、その系統でも初歩である『重塊』は、威力で言えばエヴァンの『旋風刃』に匹敵するのだ。

「コラムッ!」
「お任せくださいっ! 『障壁』!」
先制の一撃を加えたフェランは即座に下がり、入れ替わるようにコラムが前へ出る。
前に出たコラムは両手を突き出して『障壁』を詠唱、通路を塞ぐように透明な壁が彼女達の前に展開される。
進路を塞がれた肉団子の群は『障壁』にぶつかり、先刻のように続々とコラムの展開した『障壁』に体当たりを敢行する。
「いっくぞぉぉぉぉっ!」
可愛らしくも気合充分な声を上げてフェランは『重塊』を両手から次々と放ち、放たれた『重塊』が直撃した肉団子の群は爆発を繰り返す。
幾度も繰り返される爆発で生き埋めに遭う可能性があるにも関わらず、フェランは『重塊』を途切れなく放ち続ける。
フェランは信頼している、コラムの『障壁』を。
『障壁』展開の際、コラムは爆発から通路を守る為に自身の周囲……半径五メートル以内の通路に薄く、それでいて爆発を防げる強度を持たせた『障壁』を展開していたのだ。

『コラム……アンタの資質を活かすんなら、攻撃よりも防御や治癒を重視した方が良いね』
『偉大なる八人』が一人、バフォメットのフランシスは指導を始める際、コラムにそう告げた。
ユニコーンとバイコーンは治癒魔法に天賦の才を持ち、指導が無くとも強力な治癒魔法の行使が可能だが、その一方で穏やかな気性である為、攻撃魔法は不得手である。
故に、コラムは攻撃よりも、防御・治癒を重視した指導を受けていたのだ。
その指導の甲斐あって、コラムは防御・治癒に関する魔法の技量は、実力的に見れば既に達人級に匹敵している。
防御系魔法の中でも初歩中の初歩である『障壁』ならば、現在コラムが行っている芸当も容易いのである。

「コラムッ! 『障壁』はどのくらい持ちそう!?」
「まだまだ大丈夫です! フェランは駆逐をお願いします!」
「了解っ!」
繰り返される爆発に最前線で晒されるコラムに、フェランは『重塊』を放つ手を休めずに『障壁』の限界を問う。
ソレを問われたコラムは穏やかな笑みを浮かべながら大丈夫である事を告げ、その答えを聞いたフェランは外観の愛らしさに似合わぬ兇悪な笑みを浮かべる。
「どっかぁぁ――――――んっ!!」
兇悪な笑みを浮かべたフェランは最早弾幕に等しい『重塊』を放ち、次々と肉団子を駆逐する。

「うぅぅおりゃぁぁぁぁぁっ!!」
爆発音を聞き付けたらしく、戦場と化した狭い通路に小さな肉団子が続々と集まり始め、フェランは裂帛の気合と共に『重塊』を放ち続ける。
「うぅぅぅっ! キリが無いよぉっ!」
「キーンッ! 貴方も手伝ってくださいっ!」
轟く爆音、舞い上がる土埃、無数に集う肉団子。
無限とも思える増援にフェランは焦り始め、『障壁』を展開しているコラムは先程から何もしていないキーンに苛立った声をぶつける。
苛立ちをぶつけるも、キーンはこの状況下では何も出来ない事をコラムは理解している。
キーンは銛を使った近接戦闘が主体であり、そうなると必然的に爆発に巻き込まれる。
故に、苛立ちをぶつけてしまう事が間違いである事も理解しているが、それでもコラムはキーンに少しは手伝ってほしいと叫んだ。

「…………ん」
コラムの苛立ち混じりの叫びに答
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