「あぁん? ……い、ぎっ!? あぎゃがうあえいうふぁぢうはおいはいふぃうあっ!?」
「え、何なの? 何が起こってるの?」
「コレは、一体……?」
「…………?」
強烈な怒気を孕んだ声に白一色の少年が反応した途端、突然言葉にならない苦悶の叫びを上げながら彼が悶え始める。
突如悶え始めた白一色の少年に、フェラン、コラム、キーンの三人は首を傾げるしかない。
「んしぴあふぃさふぃんんあけいあしおさいうりおふぃしふぃっ!? ふぁおいふぃあでぃあさふぃうしゃいそいじゃおいっ!?」
怪異は終わらない……不可解な叫びを上げながら、悶え苦しむ白一色の少年の身体からは紅い蒸気が噴き始め、地底湖の水も突然沸騰し始める。
先程の声に聞き覚えのあるフェランとコラムは、その声の主に視線を向ける。
二人の視線の先には……
「がぎいぎぎいいふぁがぢあいだぎぎっ!? がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
悶え苦しむ白一色の少年は体内の魔力を暴走させ、体内を蝕む『何か』を弾き飛ばす。
弾き飛ばしたはいいが、その代償は大きく、エヴァンの『風刃牢』で痛めつけられていた身体は更にボロボロになる。
「がはっ! がほぁっ! テ、テメェ……エヴァン、シャルズヴェニィ!」
×××
「ふざけん、なよ、糞ガキがぁ……人の奥さんを、旦那の前でさぁ、慰み者にするとか、言ってんじゃ、ねぇっ……」
ユラリと、幽鬼の如く立ち上がるエヴァン。
エヴァンが頭を振ると、先程の滅多打ちで蔓が壊れたらしい黒眼鏡が、カチャン…と音を立てて落ちる。
その黒眼鏡の奥、フェランとコラムですら見た事の無い、エヴァンの素顔。
「「「「…………!」」」」
その素顔を見た四人は、言葉を失った。
「は、ははっ、ははははっ……何だよ、何なんだよぉ、テメェ!」
絶句する四人。
逸早く我に帰った白一色の少年の声は、先程までの凶悪さが嘘のように消えた、震えた声。
虚無。
在るべきモノの欠けた、エヴァンの素顔。
エヴァンの素顔には、『目』が存在していなかった。
眼球が存在しなくてはならない部分には、真っ黒な闇を秘めた穴があるだけだった。
「あん? コレか? 驚いただろ?」
白一色の少年の震えた声に、エヴァンはおどけるように答え、其処には何も無い事を証明するかの如く、自分の指をがらんどうの眼孔に出し入れする。
「見ての通り、俺に目玉は無いのさ……なにせ、『自分』で抉り抜いたかんな」
「はぁっ!? バッカじゃねぇの!? テメェ、頭の螺子でも抜けてんのか!? 脳味噌、月までブッ飛んでんのか!? 自分で自分の目玉、刳り抜くなんてさぁっ!」
自分で眼球を抉り抜いたと言うエヴァン、白一色の少年は震えたままの声で彼を罵倒する。
その罵倒を切欠にエヴァンの怒気が膨れ上がり、先程以上の彼の怒気に白一色の少年は、思わず一歩後ずさる。
「あぁ? 頭の螺子が抜けてるのかって、テメェが言うか? 目玉を抉った原因のテメェ等が、『教団』が言うのかよっ!」
「はぁっ?」
目玉を抉り抜いた原因が『教団』だと言うエヴァンに、白一色の少年は間抜けな声を上げる。
エヴァンは独白する、自分で目玉を抉り抜いた原因を。
「一〇年前だっけなぁ……教団の教会で、俺は神様に聞いたんだよ」
一〇年前、エヴァンは教団の教会で神に問うた。
『何故、神は魔物を嫌うのだ』と、神に問うた。
神に問うた、その日の晩……エヴァンは、彼の心に深い傷を刻んだ極上の悪夢を見た。
何もかもを塗り潰す純白の闇、その純白の闇の中に輪郭の曖昧な人型の何かが現れ、人型の何かは荘厳な声でエヴァンに話し掛けてきた。
『魔物と魔物を統べる魔王は、神たる我の失敗作なり。
我が創りし箱庭に住まう事許されるは、我が愛する人間と同胞のみ。
失敗作たる魔物が我の箱庭に住まう事、神たる我は許さぬ、認めぬ。
故に、神たる我は魔物を滅ぼす、魔物は一匹たりとも存在を許さぬ』
「神様も、クソッタレだよなぁ……自分で創っときながらさぁ、失敗作だから魔物は死ねって? ふざけんなっ! 幾等神様でも、身勝手過ぎんだろうがっ!」
極上の悪夢から目覚めたエヴァンは、己の眼球を抉り抜いた。
二度と傲慢な神を見たくないが故に、己の眼球を抉り抜いた。
眼球を抉り抜いた激痛も、人間からも神からも虐げられる魔物達の事を思うと、不思議と痛くはなかった。
されど、エヴァンの心には傲慢な神の姿が焼きついた、エヴァンの耳には傲慢な神の声が残響の如く響いた。
「俺は忘れたくて……あのクソッタレな神様の事を忘れたくて、魔法を一生懸命勉強して、探検をずっと続けてきたんだ」
心に深く残る神を忘れたかったエヴァンは、振り切るように魔法の会得に専念した。
探検家として活動を始めた時からは、探検を繰り返す事で神を忘れようとした。
それでも、エヴァンの
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