〜大陸南東部・密林〜
「あぢゃぁぁ―――――――――ッ!!」
「あっつぅぅ――――――――いッ!!」
大陸南東部に位置する密林地帯……動物の鳴き声、風で揺れる枝の音が支配する彼の地で、素っ頓狂な叫びが上がった。
「あづ、あづあづあづっ! ちょ、ちょっと湯加減! 湯加減あづぁぁ――――ッ!」
「熱い、熱い熱い熱いっ! 熱いって、熱いってば! だから熱いぃぃ――――ッ!」
素っ頓狂な叫びを上げたのは、縄で縛られたエヴァンとダークマター。
二人は巨大な竃に掛けられた、大きめの風呂桶程はある巨大鍋に放り込まれており、その鍋はグツグツと音を立てている。
即ち、二人は現在進行形で『鍋の具』にされているのだ。
何故、二人が鍋の具にされているのか?
少々、時間を遡って経緯を語ろう。
×××
〜大陸中央部・交易都市セレファイス〜
『単なる、魔力供給衝動であるな』
『アレがかい!?』
俺、エヴァン・シャルズヴェニィは、幼馴染の医者の言葉に愕然した。
砂漠にあった奇妙な遺跡から、拠点にしている交易都市・セレファイスに戻ってきた俺は荷物とフェランを宿屋に預け、即行で幼馴染が経営している医療所へ駆け込んだ。
何でって? そりゃ、アレだ、フェランとの濃厚な交わりが何だったかを聞く為だ。
あ? フェランって誰だ、だって?
フェランってのは、俺が件の遺跡で見つけたダークマターの名前。
フェランは生まれたばかりだから当然名前は無い訳で、一緒に探検する事になった以上、名前が無いと不便だから、俺が名前を付けてやったんだ。
『貴様はフェランとかいうダークマターを守る為に、魔法を連発したのであろう? 而も、彼の禁断魔法を使ったのであるから、魔力供給衝動も半端無いのであ〜る』
上から目線で喋る医者が、俺の幼馴染であるゲイリー・カーティエッジ。
ゲイリーは俺の父さんが自宅の一部を使って開いてた教室の生徒の一人で、同い歳の俺とゲイリーは『悪い意味』で有名になった。
なにせ、ゲイリーはブッ飛んだ性格をしてて、どっかから連れてきた飼い犬を解剖するわ、変な薬を作って部屋を大爆発させるわで、兎に角行動が読めない。
挙句に『医学的方法による死者の蘇生』というトンデモナイ研究を一〇歳の時に始めて、エラい騒ぎになったもんだ。
結局、その研究は机上論―あと、父さんの拳骨―で終わったんだが、兎に角俺はゲイリーの奇行の火消しに走り回ってたんだ。
然し、ゲイリーは医者としては優秀で、種族や生息地域で肉体構造等が違ってくる魔物を、魔物の特徴等に合わせた的確な治療が出来るくらいには優秀。
親魔物派領であるセレファイスでは、『変人だが頼れる医者』として人間・魔物を問わずに親しまれてる奴だ。
『天才とキ○○○は紙一重』とか言うが、まさにゲイリーの為にある言葉だな。
『元々、貴様は高い魔力保有量を誇り、ソレがダークマターの黒球の吸収により爆発的に増大。その分、失った魔力を補充するには、それなりの交わりが必要なのであ〜る』
魔力供給衝動ってのは、身も蓋も無い言い方をすれば『発情』。
魔力回復の薬を飲んで落ち着かせる事も出来るんだが、魔物を奥さんに持つ奴は奥さんと交わる事で魔力を回復させるのが一般的だ。
魔力保有量が多ければ多い程、魔力供給衝動も大きく、必要な交わりも比例して多くなる。
俺の場合、ダークマターのフェランと一三回は交わらないと、回復しないって訳か。
『ま、そういう事である……おぉっ! 貴様への手紙を預かっておったのであ〜る』
『手紙? 誰からだ?』
『何時もの『足長おばさん』であ〜る』
あぁ……また、あの人からか。
『足長おばさん』ってのは俺の探検の支援者で、資金を援助してくれる代わりに、たまに何処かで新発見された遺跡や、探索の進んでいない辺境の調査を依頼してくるんだ。
手紙でしか交流を持ってないから、名前も顔も素性も知らないが、字や文面から判断して女性らしい事から、勝手に『足長おばさん』と呼ばせてもらってる。
『今度は、何処に行けって?』
『うむ……『獣の吼える森』なのであ〜る』
『獣の吼える森』かぁ……まぁた、面倒な場所だな。
『獣の吼える森』ってのは大陸南東部に位置する密林地帯で、大陸最大級と言われる程の広大な面積を誇る。
お陰で、何度も調査隊が派遣されてるが、未だに外周部しか調査されてないんだ。
因みに、何で『獣の吼える森』なんて呼ばれてるのか?
この密林地帯には調査済みの外周部だけで、ワーウルフにワーラビット、ワーキャット等、獣人型の魔物がウヨウヨ住んでたからだ。
『ま、足長おばさんも、貴様に期待しているという事なのであ〜るな』
『分かったよ……取り敢えず、準備を済ませたら出発するさ』
『うむ、頑張ってくるのであ〜る!』
……コイツに頑張れと激励されても、正直ヤル
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