第捌章 提灯は烈火の如く燃え盛る

森羅万象
あらゆる物には魂魄が宿る

善き者が使いし物には、善き魂魄が
悪しき者が使いし物には、悪しき魂魄が

物は存在するだけでは、善悪を持たない
物の善悪を決めるは、使い手次第

願わくば
善き者と出会い、善き魂魄を宿す事を

―提灯は烈火の如く燃え盛る―

「はぁ、はぁ……おい、大丈夫か?」
夜の帳に包まれた街道を走るのは、忍装束を纏う三人の男達。
男達は一人一人が脇に箱を抱えており、箱を後生大事そうに抱えている。
先頭を走る男が立ち止まって呟き、残る二人も息を荒げて立ち止まる。
「兄貴ぃ、周りに人も妖怪もいませんぜ」
「うし……少し、休むか」
そう言いながら三人の男達は裏路地へと歩いていく、が……

「……ん?」
先頭を歩く男は、前方に奇妙なモノを見た。
仄かに輝く灯り……ユラユラと揺れながら、灯りは男達の方へと近付いてくる。
灯りが近付いてくる程に、その灯りの正体が露になる。
灯りの正体は「提灯おばけ」、古い提灯が妖力を得た事で妖怪に変化した存在だ。
前方の提灯おばけを見た三人の男達は、一斉に顔を青褪めさせる。

「げげぇっ!? あの提灯おばけは!」
最後尾にいた男は、前方の提灯おばけを見て叫ぶ。
本来、提灯おばけの袖には大抵三つ巴の紋所が描かれているのだが、目前の提灯おばけの袖には、字は汚いものの勇ましい筆で「御用」と書かれている。
ソレが意味するのは……

「イィィィィッヤッフゥゥゥゥゥゥッ!」
目前の提灯おばけに身構える男達の背後から、妙に調子が良さげな声が聞こえ、その声に釣られて背後を振り返り
「会ぁぁぁぁいたかったぜぇぇぇぇっ! 盗賊、大岳三兄弟! 毎日欠かさず、サイクル一〇回! マスかいて、待った甲斐があったぜぇぇぇぇぇぇっ!」
「「「へ、変態だぁっ!?」」」
背後にいた変態を目撃し、三人揃って大声を上げた。

変態と呼ばれた男は、薄い水色の髪をしている事から十中八九大陸人、骨と皮しか無いと形容出来そうな程に身体は細く、七尺(二一〇センチ)はあろう身長もあって、まるでナナフシだ。
威圧感を伴う鋭過ぎる目付きとニヤついた笑顔は、コレで甘言を弄されれば悪魔だと誤解されてもおかしくはない。
ナナフシじみた男を「変態」と呼ばせたのは、その男の服……背後で揺れる提灯おばけを模したと思しき服の所為だ。
上着と分かれた袖、提灯の柄を模した帽子が無い事以外は酷似しているのだが、あくまでソレは提灯おばけが着てこその服であり、男が着るべき服ではない。

「さぁさぁ、覚悟はいいかい? 吾輩の十手で、ロストアナルされろや!」
ロストアナルの意味を理解出来なかった男達だが、変態の南瓜ズボンの股間はモッコリと自己主張している事に、本能的に意味を悟った男達は余る片手で自分の尻を押さえる。
「レッツ、ショータァァァイムッ!」
変態は両手を男達へ突き出し、掌に妖術陣が浮かび上がると、妖術陣の中心から三本ずつ、六本の鎖分銅が男達に向かって伸びる。

「うおっ!?」
鎖分銅は獲物を狙う蛇の如き動きで男達に巻き付いて動きを封じ、動きを封じられた男達は鎖分銅を解こうと身悶える。
然し、男達は忘れていた。
「せやぁぁぁっ!」
自分達の背後に、提灯おばけが居る事を。
提灯おばけは回し蹴りの要領で右足を振るい、足先から三つの火球が放たれる。
この火球、質量はあれど熱は提灯おばけが調整している為、火球が人間にぶつかっても、人間が燃える事は無い。
放たれた火球は男達の後頭部に命中し、後頭部からの衝撃で男達は呆気無く気絶した。

「やったね、マスター!」
「ナイスコンビネーションだったな、仄花(ホノカ)!」
気絶した男達を鎖分銅で縛り上げた後、「マスター」と呼ばれし変態と「仄花」と呼ばれた提灯おばけは仕事の成功を祝してハイタッチする。
「盗賊・大岳三兄弟の捕縛、上手くいったね!」
「謹慎くらってた間、地道にシコシコ調べてた甲斐があったなぁ!」
気絶している男達の周りをグルグル回りながら、変態と提灯おばけはスキップしていたが、鼻を突く焦げ臭さに顔を見合わせる。
そして、焦げ臭さが何処から漂ってくるのかを探すと
「うわわわわっ!? 燃えてる、燃えてるっ!」
「オーマイガッ!? 早く水、水っ!」
後頭部に当たって跳ね返った火球が空き家の扉を燃やしており、二人は慌てて消火活動に勤しむ事になった。

×××

「ばっかも―――――――――ん!」
「「…………」」
翌朝、ボクとマスターは上司である稲荷の玉藻(タマモ)さんに呼び出されて、正座で座らされて、お説教を受けた。
玉藻さんの机の上には書類が一杯で、六本の尻尾に筆を持たせて書類を片付けながらも、ボク達にお説教してる。

「全く大岳三兄弟を捕縛した功績は認めるが何時もお前達は先走って行動しては始末書を書いて謹慎処分を
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